2022.11.21
不動産投資

障がい者グループホーム投資|種類とメリット、注意点を解説

障がい者グループホーム投資は、入居者の退去が少ないために安定した収益を見込めるだけでなく、家賃未納などといった賃貸経営にありがちなリスクが低い投資として注目されています。この記事では、障がい者グループホーム投資を始めるにあたり、知っておきたいメリットや注意点について詳しく解説します。

【著者】矢口 美加子

 

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グループホーム投資とは?

高齢化社会が進む日本において、安定した収益を見込める投資方法として注目されているのが「グループホーム投資」です。本章ではグループホームの特徴について詳しく解説をします。

グループホームとは?

グループホームとは、認知症の高齢者や知的障がい者、精神障がい者などが、専門職員の支援を受けながら集団で暮らす施設を指しています。

グループホームには、認知症の高齢者向けのタイプと、障がい者向けのタイプの2つがあります。認知症の高齢者向けのグループホームは、要介護者が共同生活する施設で、家庭的な環境の中で暮らしながら地域住民とも交流します。入浴や排せつ、食事等の介護や日常生活を送る上での世話は介護職員が担当し、機能訓練を行いながらできるだけ自立した生活ができるように支援します。

認知症の高齢者向けのグループホームに入居するには、以下の3つの要件に該当していることが必要です。

1.65歳以上(65歳未満の若年性認知症を含む)
2.医師から認知症と判断されている
3.要支援2以上、もしくは要介護1以上

また、近年では障がいのある人を対象にしたグループホームも珍しくありません。障がい者向けのグループホームは、障がいを持つ人に対し、食事や入浴などの日常生活や生活に関する相談などの支援を提供しています。このようなグループホームは、障がい者総合支援法における障がい福祉サービスのひとつで、「共同生活援助」といわれています。

障がい者グループホームに入居できる要件は、以下のいずれかに該当する人が対象となります。

1.知的障がい者
2.精神障がい者
3.身体障がい者
4.難病患者

「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」のいずれかの障害者手帳を持っており、障害支援区分の1~6に認定されていることが原則です。

投資対象に向いているのは障がい者向けのグループホーム

投資という点においては、障がい者向けのグループホームのほうがおすすめといえます。

認知症高齢者向けのグループホームの場合は、有資格者を設置するため人件費がかかり、病院並みの設備を保有する施設を設置しなければなりません。そのため、初期投資に高額な費用がかかります。

その点、障がい者向けの施設は、高齢者向けの施設ほど初期投資費用がかからないのがメリットです。設置基準がそこまで厳しくないために高額な設備を整える必要がなく、世話人に資格要件もないため人件費が高額になることもありません。

以上のことから、投資対象としては障がい者向けグループホームのほうが一般的であるため、ここから本記事では「グループホーム投資=障がい者向けの施設」として解説をします。

障がい者グループホームの種類

障がい者向けのグループホームは、以下の3種類に分かれます。

1.介護サービス包括型
2.外部サービス利用型
3.日中サービス支援型

厚生労働省の資料(「障害者の居住支援について(P24)」※令和3年4月の国保連データより)によると、3つのグループホームの中で事業者数と利用者数が最多であるのは介護サービス包括型(事業者数8,670、利用者数124,291人)で、次に外部サービス利用型(事業者数1,301、利用者数15,571人)、もっとも少ないのは日中サービス支援型(事業者数348、利用者数4,708人)となっています。

いずれの種類も、利用対象者は障害支援の区分を問いません。そのうえ、サービスの内容は共通しており、主に夜間における食事や入浴などの介護、日常生活の相談などといったサポートを行います。次章でそれぞれの詳しい解説をします。

介護サービス包括型

介護サービス包括型の対象は、以下の要件を持つ人です。

1.自立した日常生活を営む上で、相談、入浴、排泄、または食事の介護、その他日常生活上の援助を必要とする障がい者
2.身体障がい者の場合は、65歳未満の者、または65歳に達する日の前日までに障がい福祉サービスなどを利用したことがある人

施設管理に必要な人員配置は、サービス管理責任者は利用者30人に対し1人以上、世話人は6人に対し1人以上です。利用者の定員は、新築建物だと10名以下、既存建物だと20名以下です。

上記で紹介した厚生労働省の資料によると、介護サービス包括型の利用者の状況としては、知的障がい者がもっとも多く、67.7%の割合を占めています。

外部サービス利用型

外部サービス包括型の対象は、以下の要件を持つ人です。

1.自立した日常生活を営む上で、相談等の日常生活上の援助を必要とする障がい者
2.身体障がい者の場合は、65歳未満の者、または65歳に達する日の前日までに障がい福祉サービスなどを利用したことがある人

施設管理に必要な人員配置は、サービス管理責任者は利用者30人に対し1人以上、世話人は6人に対し1人以上です。利用者の定員は、新築建物だと10名以下、既存建物だと20名以下です。

前述の資料によると、外部サービス利用型の利用者の状況としては、障がい種別だと精神障がいが58.8%ともっとも多く、障がい支援区分では「区分なし」の人が67.4%ともっとも多い割合を占めています。

日中サービス支援型

日中サービス支援型は、昼夜を通じて介護サービスや日常生活のサポートを行います。以下の要件を持つ人が、日中サービス支援型の対象です。

1.自立した日常生活を営む上で、相談、入浴、排泄または食事の介護、その他日常生活上の援助を必要とする障がい者
2.身体障がい者の場合は、65歳未満の者、または65歳に達する日の前日までに障がい福祉サービスなどを利用したことがある人

施設管理に必要な人員配置は、サービス管理責任者は利用者30人に対し1人以上、世話人は5人に対し1人以上です。利用者の定員は、20名以下+短期入所1~5名です。

前述の資料によると、日中サービス支援型の利用者の状況としては、もっとも多いのが知的障がい者で、57.9%を占めています。身体障がい者の割合は、介護サービス包括型、外部サービス利用型よりも高く、全体の17.8%を占めています。また、障がい支援区分では「区分4以上」の人が77.4%と高い割合となっています。

障がい者グループホーム投資のメリット

障がい者グループホームに投資する主なメリットは以下の3つです。

1.社会貢献性が高い
2.退去リスクが低い
3.職員を確保しやすい

それぞれ分かりやすく解説します。

社会貢献性が高い

高齢化社会が進む日本では、令和元年(2019年)においての65歳以上の人口は3,589万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は28.4%に上っています(内閣府のホームページより)。これは、全人口のおよそ3割が高齢者という現状です。

また、現代の家庭では共働きが一般的になり、一昔前のように主婦が高齢者の世話をするという家庭は減ってきています。このような時代の流れから、これからもますます高齢者の受け皿が必要になり、グループホームの需要は伸びると予想されています。グループホームは高齢者の生活を守るのが目的であるため、社会貢献度が高い事業である点は大きなメリットです。

退去リスクが低い

障がい者向けのグループホームは、安定した収益が期待できる事業です。アパートやマンションなどの賃貸物件のように、入居者が短期間で入れ替わることが少ないため、退去リスクは低い傾向があります。

また、障がい者グループホームは運営収入が安定しているのもメリットです。医療保険と同じように9割近くを国保連が「給付金」という形で事業所に支払うため、利用者の負担は重くありません。一般の賃貸物件のように賃料滞納リスクなどが起こる確率が低いため、安定した経営を行いやすいです。

職員を確保しやすい

前述した通り、高齢者向けの施設よりも、障がい者向けのグループホームのほうが職員を確保しやすいという点もあります。高齢者グループホームでは有資格者の設置が必要なため、人件費は高額になる傾向があります。しかし、障がい者向けのほうは資格の要件が厳しくないため、それほど高額な人件費にはならないと考えられます。サービス管理責任者以外は有資格者でなくても働くことができるため、そのぶんスタッフも集めやすいでしょう。

障がい者グループホーム投資の注意点

障がい者グループホームは社会貢献度が高く、安定した収益が見込めるのがメリットです。しかし、投資をするにあたっていくつかの注意点があります。ここでは、障がい者グループホーム投資の注意点について解説をします。

開設にあたり行政確認や近隣対応が必要

グループホームを開設するには、株式会社、医療法人、一般社団法人、NPO法人などの「法人格」を取得していることが要件です。そのうえ、人員配置基準、設備基準、運営基準のすべてを満たしていなければなりません。

グループホームの事業所指定を受けるには、行政への申請が必要であり、事業所を設置する市町村に指定申請手続きを行います。

また、近隣住民への対応も重要です。地域によっては障がい者の受け入れが難しく、近隣反対が起こる可能性があるからです。着工前に、近隣住民に対しグループホーム設置に関する理解を深めてもらうと、反対意見が高まるリスクを回避しやすくなります。

建物の転用が難しい

万が一グループホームの経営が立ち行かなくなり、閉鎖に追い込まれた場合、建物の転用は難しいという点もあります。そのままの状態で別のグループホーム事業者に売却するとしても、上手くいくとはかぎりません。

アパートやマンションなど、違う用途の建物に変更するにしても、もともと建物の設備や設計をグループホーム向けにしているため、リフォームするには高額な費用がかかります。

障がい者グループホームを開設する流れ

障がい者グループホームを開設する流れについて紹介していきます。

1.資金を用意する、または融資を申し込む
2.法人を設立する
3.設置基準を満たす物件を確保する
4.人員を確保する
5.指定申請の準備をする

それぞれのステップについて解説をします。

ステップ1:資金を用意する、または融資を申し込む

障がい者グループホームを開設するためには、資金を調達する必要があります。

施設を賃貸する場合でも、運転資金を含め、ある程度余裕のある資金を用意しておくことが必要です。資金が少ない場合は開設の認可が下りないうえ、キャッシュフローに余裕がないと経営状態が逼迫する恐れがあるからです。

ゼロから障がい者グループホームを開設する場合は、賃貸の場合でも800万円~1,100万円程度は見積もっておく必要があります。同じく賃貸の場合で、すでに行っている就労支援事業と併せてグループホームの開設を始める場合でも、500万円~800万円程度のキャッシュは必要です。

開業資金を自己資金で全額用意するのが難しい場合は、金融機関に融資を申し込むのもひとつの方法です。給付金や補助金も上手に活用しましょう。

なお、東京都の場合、事前相談および事業所指定を受けるには、説明会へ参加することが前提です。開業予定のグループホームについての事業計画書を作成したうえで、開設する予定の物件がある場所の所轄の市区町村障がい(者)福祉課に相談をします。

ステップ2:法人を設立する

障がい福祉サービスの事業は個人ではできませんので、会社か法人を設立することが必要です。株式会社や合同会社、NPO法人、医療法人、一般社団法人などの「法人格」を取得します。

ステップ3:設置基準を満たす物件を確保する

障がい者グループホームを開設する物件は、次の設備基準を満たしていなければなりません。共同生活住居ごとに1以上のユニットが必要です。ユニットとは、グループホームの定員を表す単位で、ユニットの入居定員は1人以上10人以下とされています。

グループホームは、障がいのある人が地域において家庭的な雰囲気の施設で共同生活を行うことが目的です。そのため、ひとつの施設の利用者数の平均は5名程度となっています。

項目 設備基準
立地場所 住宅地
入居定員 原則10名以下(既存建物を利用する場合は、最大20名もしくは30名以下)
居室の定員 原則1人
居室面積 7.43㎡(収納設備を除く)

出典:厚生労働省 – グループホームの概要(P1)

ステップ4:人員を確保する

サービス管理責任者、世話人、生活支援員、夜間支援員などの人員を確保します。

サービス管理責任者は、障がい者グループホーム全体の責任を負う立場の人です。施設に入居する人に対して支援計画を個別に作成し、その人にとって最適なサポートやケアを行います。

世話人は、利用者と接しながら、身の回りのお手伝いをする人です。掃除・洗濯・食事といった家事のサポートや、金銭管理、健康管理、服薬管理、生活相談など、日常生活のサポートもします。

生活支援員は、主に身体に障がいを持つ人の入浴や排せつ、食事の介護など、生活全般のサポートを行います。また、夜間支援員は、夜中の22時から朝8時頃までの時間帯で、利用者のお世話や館内での見守りをします。主な仕事は食事の準備、服薬管理、相談支援のほか、着替えやトイレ介助、見守り、起床時の身の回りの世話などです。

サービス管理責任者以外の職種は、特に資格や要件は必要ありません。

ステップ5:指定申請の準備をする

設備、人員の基準を満たしたら、書類を提出して事業者指定の申請を行います。提出書類は、申請書、法人の定款、登記簿謄本、事業所の平面図など多数あるため、各自治体に確認して揃えるようにします。

グループホーム投資はメリットだけでなく注意点も確認しよう

障がい者グループホーム投資は、社会貢献度が高く安定した収益が見込めることから、堅実な投資方法のひとつとして注目されています。しかし、開設にあたっては行政確認や近隣対応が必要であり、経営が上手くいかなかった場合に建物の転用が難しいというリスクも考えられます。障がい者グループホーム投資を実行するときには、メリット・注意点の双方を十分に比較検討してから始めるようにしましょう。

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