2021.02.12
税金

不動産を相続しよう【相続するために必要な手順をプロが解説】

不動産を相続する際の手続きは大変複雑です。

相続財産の総額によって相続税の支払いが必要になり、固定資産税、不動産取得税など、様々な支払い義務や維持管理のためのコストが発生します。
この記事を読んで、まず、何をやるべきか、どんな税金や諸費用がかかるのかを知り、スムーズに不動産の相続ができるよう準備しましょう。

1.名義変更を行おう

不動産の相続が発生したら、相続登記を行います。
相続登記とは不動産の所有者が亡くなった場合に登記名義を相続人に変更することです。
相続登記は不動産が所在する法務局で行います。
不動産の名義は、共有名義で登記することも可能ですが、売却時にすべての名義人の同意を得るのが難しい、手続きに時間がかかるなどの理由から共有名義にすることはあまりおすすめできません。

①相続登記は早めにする

相続登記を行うことは義務ではなく、いつまでにやらなくてはいけないという期限もありません。
そのため、被相続人が亡くなられてから10年以上経って登記してもまったく問題はありません。

しかし、相続登記は遺産分割協議がまとまったら、できるだけ早めに済ませておきましょう。
なぜなら次の理由があるからです。

・不動産を売却する、または担保にしてお金を借りたいときに困ってしまう
相続登記をしていないと、第三者に対して、その不動産が「自分のもの」であることを証明することができないために、売却ができません。
また、その不動産を担保にお金を借りることも不可能です。

・他の相続人に勝手に不動産を売却されてしまうリスクがある
遺産分割協議がまとまるまで、その不動産は相続人全員が共有している状態となります。
この状態のままだとで1人の相続人の持ち分は第三者に売却できてしまいます。
不動産の所有者に相続人でない第三者が加わってしまうと元の状態に戻すのは手続きがより複雑になります。

・相続人が亡くなってしまうとさらに不動産を相続する人が増える
相続登記をしない間にその相続人のうちの一人が亡くなると、相続人が2人、3人と増えるケースがあります。
祖父が亡くなり、子どもの間で相続の話がまとまっていても、相続登記をしていないと子どもの1人が亡くなった場合、その孫も話し合いに加わることになります。
時間が経つと、相続人が増え、手続きがより煩雑になるのです。

②不動産の名義変更(相続登記)の必要書類

相続が発生したら、法務局や市役所などで次の書類を取得しましょう。
※遺言書がある場合とない場合で必要書類が変わりますので詳しくは司法書士などに相談しましょう。

・対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票の除票(本籍の記載があるもの)
・被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本
・相続人全員の現在の戸籍謄本
・対象不動産を取得する相続人の住民票
・対象不動産の固定資産評価証明書
・遺言書(被相続人が残した場合)
・相続人全員の印鑑証明書(遺言書がありその遺言通りに相続登記を行う場合には不要)
・遺産分割協議書(遺言書がありその遺言通りに相続登記を行う場合には不要)
印鑑証明書以外については司法書士に代行してもらうことが可能です。

③相続登記にかかる費用

相続登記にかかる費用は次の通りです。

・登録免許税(相続登記する物件の固定資産税評価額の0.4%)
・住民票や証明書など提出書類の取得費用実費(数千円から3万円程度)
・相続登記の代行費用(司法書士へ依頼した場合の依頼料。10万円以内)

①相続税を支払う必要があるか調べよう

不動産を相続したら相続税がかかる可能性があります。
相続税は、「被相続人の相続財産のすべての合計額」が「基礎控除額」を超える場合にかかります。
相続財産は、不動産だけでなく、金融資産や、他の相続人がすでに相続したものをすべて含めたものとなります。

「相続税の基礎控除額」は以下の算式で簡単に求めることができます。
相続税の基礎控除額 = 3,000万円+600万円×相続人の人数

相続人が3人であれば、3,000万円+600万円×3=4,800万円です。
相続財産の総額が4,800万円以下であれば相続税がかからず、それ以上であれば相続税がかかります。

②不動産相続税の計算方法は?

不動産の場合は、路線価格に面積を乗じて、さらに各種の補正率を加味することで土地の相続税評価を求めます。
簡易的に固定資産税評価額を1.14倍すれば、土地の相続税評価額を推計できますので、概算であればこの方法がおすすめです。
不動産の相続税評価は非常に複雑なため、正確に出したい場合はプロに任せるべきです。

3.知っていると得をする不動産相続の知識

 

そのほかにも、不動産を相続する場合は「相続対策」や「税金」「不動産から生じる管理責任」についても知っておかなければなりません。

①不動産経営は相続対策になる

不動産で相続すると、預金で相続するよりも節税が可能になります。
1億円の現預金の相続税評価は1億円ですが、1億円の不動産を購入した場合、物件の種類にもよりますが相続税評価は7割程度となります。
「不動産投資は節税対策に使える」と言われるのはこのためです。

②不動産を相続するとかかる税金は?

先に説明した登録免許税、相続税のほかにも、不動産を相続した場合かかる税金があります。

不動産取得税
不動産を取得した場合にかかる税金で、固定資産税評価額の3%の税率です。
相続により取得した場合には、不動産取得税は原則かかりませんが、遺言書によって相続人以外が不動産を取得した場合には不動産取得税がかかります。

固定資産税
不動産を所有していると固定資産税と言われる税金がかかります。
毎年、1月1日時点の所有者に対してその年1年分の固定資産税が課税されますので、相続により取得した翌年から固定資産税を支払う義務が発生します。

譲渡による所得税
相続した不動産を売却し、譲渡益が出た場合、譲渡益に対して所得税や住民税がかかります。
この場合、税務署から税金の支払い通知書が送付されてくるのではなく、自ら確定申告を行い、売却した年の翌年3月15日までに納税します。

その土地を所有していた期間(5年以下か5年越か)により税率は異なります。
5年越という所有期間の計算が独特なので注意が必要です。
たとえば、取得した年の1月1日から5年越所有していた不動産であれば所得税15%、復興特別所得税0.315%、及び住民税5%の合計20.315%の税金を支払う必要があります。
また売却した年には確定申告を行う必要があります。
相続した不動産を売却した場合は、特例が多くあるので、良く調べましょう。

不動産所得に対する所得税
相続不動産が収益不動産なら、毎年不動産所得が発生するので確定申告を行う必要があります。

③不動産から生じる管理責任

不動産を相続するということは、所有者になることを意味し、その不動産を管理する義務が発生します。
不動産が空き家であっても、近隣に迷惑がかからないように庭の手入れをする、塀や屋根を補強するなど、日常的なメンテナンスも必要となってきます。
もし、台風で屋根が飛んで、ほかの家を傷つけてしまった場合賠償責任が生じ、その不動産を相続した人の責任となります。

とくに遠方にある不動産の所有者になったときは、いざという時にとっさの対応が難しいので定期的に訪問して建物や設備の点検を行い、トラブルの発生を未然に防止するか、管理を地元の不動産会社に依頼するなどして対策を取るべきです。

4.まとめ

相続手続きは自分でもできますが、たいへん複雑です。
不安な場合は、税理士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
また、相続発生前であれば、ファイナンシャルプランナーに相談し、アドバイスをもらうことも有効です。

まずは、不動産を相続した場合に何をしなければいけないのか、今後どういった費用がかかってくるのかを理解し、自分でやるのか、または専門家に相談するのかを決めましょう。

お困りの際は迷わず専門家に必ずご相談することをお勧めします。

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