2021.02.12
税金

不動産投資が相続税対策になる仕組み

不動産投資は相続税対策になるとよくいわれますが、具体的にどの程度の効果があるのでしょうか。また、相続税対策は、必要な人と必要ではない人がいます。不動産投資が相続税対策になる理由や、相続税対策の正しい考え方についてわかりやすく解説します。

相続税の仕組みと納税義務がある人とは

まず、相続税の計算方法や、相続税の納税義務がある人について解説していきます。

相続税の基礎控除とは

相続財産が一定の金額に満たなければ、相続税を支払う必要はありません。相続税には「基礎控除」という税金のかからない範囲があります。相続税対策を始める前に、まずは基礎控除を計算しましょう。

基礎控除の計算式は、下記の通りです。

3,000万円+600万円×法定相続人の人数

現預金や不動産など、すべての相続財産を合算した金額が基礎控除の範囲内であれば、現預金や不動産を相続しても相続税は発生しません。生前に財産を整理して一覧を作り、基礎控除に到底満たないのであれば、特に相続税について心配する必要はないといえます。

ただし、財産総額が基礎控除を明らかに超えている場合や、今後財産が変動すれば超えそうだという場合は、相続税対策が必要です。財産を整理して一覧を作る時は、漏れがないよう注意しましょう。相続財産には、現預金や不動産、株式はもちろん、美術品や骨とう品、貴金属など資産的な価値があるものが含まれます。

基礎控除に満たないと思って相続税を支払わずにいたら、後に税務署から問い合わせがあり、過去に作った口座が発見されて納税が必要になったというケースもあります。相続税の納税が遅くなると延滞税など、本来は発生しない税金まで負担しなければなりません。

相続税支払の有無は、専門家のアドバイスを受けながら慎重に判断する必要があります。

生命保険の非課税限度額

基礎控除の他に、相続税には「生命保険の非課税限度額」もあります。生命保険の非課税限度額の範囲内であれば、被相続人の死亡によって相続人が保険金を受け取っても、相続税は課税されません。

生命保険の非課税限度額の計算式は下記の通りです。

500万円×法定相続人の人数

逆にいえば、生命保険の非課税限度額の範囲を超えた保険金は、「みなし相続財産」とされ、相続税の課税対象になります。よく「保険金には相続税はかからないだろう」と考えている人がいるので、勘違いしないよう注意しましょう。

基礎控除や生命保険の非課税限度額の計算例

続いて、実際の計算例を紹介します。
たとえば、法定相続人が妻と子2人の合計3人の場合を考えてみましょう。

基礎控除の計算式は、下記の通りです。3,000万円+600万円×3人=4,800万円

つまり、相続した財産が4,800万円以内であれば、相続税の納税は必要ありません。

続いて、生命保険の非課税限度額の計算式は、下記の通りです。

500万円×3人=1,500万円

つまり、被相続人の死亡によって受け取る生命保険金が1,500万円以内であれば、相続税の課税対象にはなりません。

注意したいのが、ここでいう法定相続人とは民法で定められた相続人で、実際に財産を相続する人とは異なるということです。

法定相続人の順位は、第1順位が子、第2順位が父母・祖父母などの直系尊属、第3順位が兄弟姉妹と定められています。また、配偶者はどの場合も必ず法定相続人になります。

例をもとにすれば、被相続人が亡くなって、妻と子2人、父母の5人で遺産分割をした場合、相続人は5人、法定相続人は3人です。財産を誰が相続しようと、基礎控除や生命保険の非課税限度額の計算の基礎となる法定相続人は変わりません。

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相続税の計算における不動産の評価方法

相続財産の評価方法は、財産の種類によって異なります。現預金であれば、残高がそのまま評価額となります。株式や宝石は時価評価します。この評価方法の違いこそが、不動産投資が相続税対策になる理由です。

続いては、土地と建物の相続税評価額を計算する方法について解説します。また、相続税対策として活用できる優遇税制を2つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

相続における不動産(土地)の評価方法

土地の相続税評価額は、国税庁が発表している路線価をもとに計算します。路線価はホームページ上で確認することができ、毎年改定されます。土地の相続税評価額は、路線価に地積を乗じて計算します。

たとえば、路線価15万円の土地を100平方メートル所有している場合、相続税評価額は約1,500万円となりますが、土地の形状や道路との接し方によって、微調整する必要があります。

一般的に、路線価をもとに評価すると、土地は時価の約8割程度の評価額になるといわれています。

仮に現預金を1,000万円所有していれば、相続税評価額は1,000万円です。しかし、時価1,000万円の土地を購入し、相続税評価額が約800万円になれば、相続財産を約200万円圧縮できます。

相続における不動産(建物)の評価方法

建物の相続税評価額は、毎年5月ごろに市区町村役所から送られてくる固定資産税評価明細をもとに計算します。固定資産税評価明細に記載されている評価額がそのまま建物の相続税評価額となるため、土地の場合のように複雑な計算は必要ありません。

手元に資料が見当たらない場合や、記載されている金額のどれが評価額に相当するのかわからない場合は、市区町村役所に問い合わせれば教えてくれます。

一般的に、固定資産税評価明細をもとに評価すると、建物は時価の約7割程度の評価額になるといわれています。

土地の場合と同様、現預金を1,000万円で時価1,000万円の建物を購入すれば、相続税評価額は約700万円になり、相続財産を約300万円圧縮できます。

小規模宅地等の特例とは

小規模宅地の特例とは、要件を満たすと、土地の評価額が大幅に減額される制度です。小規模宅地の特例にはいくつかの種類がありますが、不動産投資で賃貸業をしている場合、「貸付事業用の宅地等」に該当する可能性が高くなります。

小規模宅地の特例を適用できれば、200㎡を限度として、土地の評価額50%も減額されます。

小規模宅地の特例は、上手に活用すれば相続税を大きく節税できる制度です。一方で、さまざまな要件があるため、活用できるかどうか必ず専門家のアドバイスを受けましょう。

貸家建付地の評価減とは

現預金で不動産を所有するだけで、評価額の違いによって一定の相続税効果は得られます。これを第三者に貸すことで、さらに「貸家建付地の評価減」を活用しましょう。

第三者に賃貸しているということは、更地の場合と比べて、自由に土地活用ができません。そのため、評価を減額してくれる制度が「貸家建付地の評価減」です。

どのぐらい評価が減額されるかは、借地権割合や借家権割合によって変わります。借地権割合や借家権割合も、国税庁のホームページに公開されています。

相続税対策で不動産投資を行う際の注意点

不動産投資による相続税対策は、賢く活用すれば大きな成果をあげられる一方で、注意点もあります。続いては、相続税対策として不動産投資をする際の注意点を解説します。

不動産投資のリスクを知る

不動産投資には、当然リスクがあることを理解しておかなければなりません。代表的なリスクは、入居者が見つからない空室リスク、想定する家賃を下回る家賃下落リスク、災害リスクなどです。

しかし、これらのリスクは、信頼できる不動産会社を選ぶことで大きく軽減できます。

専門家のアドバイスに従い都心の物件や駅近の優良物件に投資すれば、空室リスクは下げられます。また、定期的なメンテナンスを行えば家賃が急に下落することはありません。災害リスクについては、物件購入前にハザードマップを確認すれば、ある程度見極めがつきます。

不動産管理をオーナー自身が行う必要はないので、安心して管理を任せられる不動産会社を探しましょう。

資産バランスに注意する

評価額が下がるからといって、不動産投資をし過ぎると、相続税の納税資金を確保できなくなる可能性があります。

きちんと財産一覧表を作成し、相続財産全体の現預金・不動産のバランスに注意しながら、不動産投資をしましょう。

遺産分割トラブルに備える

不動産は、現預金と比べて分割するのが難しい財産です。そのため、遺族間でトラブルが発生することも少なくありません。

万一トラブルになると、優遇税制などを適用できなくなるケースもあります。家族で十分コミュニケーションをとっておくことに加え、遺言書を作成するなど、生前に争族対策をしておくことが大切です。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめると、下記の通りです。

<相続税の計算の仕組み>
・基礎控除の範囲内なら、相続税の申告は必要ない。
・生命保険控除の範囲内であれば相続で受け取った保険金に相続税はかからない。
・法定相続人は民法で定められており、実際に財産を受け取った人とは異なることに注意する。

<不動産投資で相続税対策をする方法>
・土地建物は時価の7~8割の評価額になるため、相続財産を圧縮できる。
・土地建物を第三者に賃貸すれば、小規模宅地の特例や貸家建付地の評価減を活用できる。
・不動産投資のリスクを知って相続税対策をすることが大切。

相続税対策として不動産投資を行う資産家はたくさんいます。一方で、リスクを知らずに「相続税対策になる」という理由だけで不動産投資に飛びつくと、後悔してしまうことになりかねません。

相続税の計算方法や不動産投資で節税できる理由をよく理解し、不動産投資のリスクを踏まえて、正しい投資判断をしましょう。

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