戸建てやアパート、マンションといった集合住宅に関わらず、不動産を取得した場合は原則として不動産取得税が課税されます。不動産取得税は土地と建物で別々に定められているほか、住宅と非住宅、新築と中古など、物件の条件によって税率や適用される軽減措置が異なります。特に不動産の取得を検討中の人は、不動産取得税の計算方法や税率、軽減措置の条件などを把握しておくことが大切です。本記事で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
不動産取得税とは、不動産の取得に対して、所在地の都道府県が課税する税金です。不動産の取得には、自分が住むために住宅を購入する場合、不動産投資を目的に土地や建物を購入する場合など、さまざまなケースが考えられます。以下に、課税対象となる不動産の条件と、不動産取得税が非課税になる「免税点」の解説をします。
不動産取得税は、新築や増改築、売買、交換、贈与によって取得した土地・建物などの不動産を取得した人に課される税金です。物件を購入した場合だけでなく、無償で受け取った場合も対象になるほか、不動産登記が行われていない物件を取得したケースでも課税の対象となります。
ただし、相続・法人の合併、分割により取得した場合は例外的に非課税となります。そのほかにも、公共の用に供する道路の取得、土地区画整理事業等での換地の取得など、非課税となるケースはいくつかありますが、管轄する都道府県によって条件が異なることがあるため、判断が難しい場合は区役所や税務署へ確認することをおすすめします。
なお、不動産取得税の課税は所有権を取得した段階であるため、地上権、賃借権、永小作権、抵当権などの取得では課税の対象にはならないことを覚えておきましょう。
免税点とは、標準課税額がその額に満たない場合は、課税対象とならない値のことです。不動産取得税は一定の価値がある不動産を対象としているため、課税標準となるべき額が免税点を下回る場合では非課税となります。具体的には以下の3パターンが含まれます。
「課税標準となるべき額」とは、対象となる不動産の価格に軽減措置などを適用させた後の、税率を乗ずる額をいいます。
なお、不動産の価格は、基本的には固定資産税評価額が適用されます。固定資産税評価額とは固定資産税の基準となる評価額のことで、各市区町村(東京都23区の場合は都)が算定し、3年に1回見直しがなされます。固定資産税評価額は、もしも地価に大幅な変動が起こっても納税負担が大きくなりすぎないよう、公示価格の7割程度になるように調整されています。
不動産取得税は、基本的には課税標準額に一定の税率を乗じて計算されます。ただし、土地と建物によって税率が異なります。また、それぞれに軽減措置の適用があるため、事前に理解しておくことが大切です。
土地の不動産取得税の税率は、原則として4%です。ただし、対象となる不動産の取得日が2008年(平成20年)4月1日~2024年(令和6年)3月31日までの場合、不動産取得税の税率は以下の通りになることが定められています。
したがって、令和6年3月31日までは土地の税率は3%となります。また、土地を取得した後、一定期間内に特例適用住宅を取得した場合は、「45,000円」または「土地1㎡あたりの価格×1/2×住宅床面積×2×3%」のうち金額の大きいほうを減額できます。特例適用住宅とは、後述する「住宅を取得した場合の課税標準の特例」に該当し、床面積が50㎡以上240㎡以下の住宅のことです。
土地と同様、建物の不動産取得税の税率も原則として4%ですが、上で説明した通り、住宅用家屋も2024年(令和6年)3月31日までは3%となります。建物の場合は住宅用か非住宅用かにより税率が1%異なります。
住宅を取得する場合、要件を満たせば軽減措置を受けられます。以下の通り、新築と中古によって要件が異なるため、よく理解しておきましょう。
新築の場合は、1戸あたり、固定資産税評価額等から1,200万円を控除したものが課税標準となります。要件としては「床面積50㎡(貸家共同住宅40㎡)以上240㎡以下の建物であること」です。また、建物が長期優良住宅に該当する場合は100万円が上乗せされ、1,300万円の控除を受けることができます。
中古の場合、控除額は建築時期により100万円~1,200万円まで幅があります(建築時期別の控除額の詳細は次章のシミュレーション内で紹介)。要件としては「床面積50㎡以上240㎡以下、築年数20年(耐火構造25年)以内または新耐震基準に適合している中古住宅等」です。
取得する物件の金額にもよりますが、新築物件の「1,200万円控除」は大きな節税効果を発揮するといえます。一方、中古物件の控除額は建築時期などによって異なるものの、基本的には築年数が新しいほど控除額は大きくなります。そのため、事前に取得する物件の築年数や控除の条件を把握しておくことが重要です。
参考:東京都主税局 – 不動産取得税
ここまで不動産取得税の計算方法や税率などを説明してきました。住宅と非住宅、新築と中古によって条件が異なる点について理解できたのではないでしょうか。本章では計算を具体的にイメージできるよう、新築・中古それぞれの場合の計算をシミュレーションしてみます。
初めに、新築住宅を購入した場合の不動産所得税がいくらになるかシミュレーションします。建物と土地は以下の条件とします。
【土地】
・敷地面積:100㎡
・購入価格:1,500万円
・固定資産税評価額:1,200万円(土地1㎡あたりの単価は12万円)
※土地を取得した後、一定期間内に新築住宅(特例適用住宅)を取得したこととする
この場合、建物部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。
新築住宅であるため、1,200万円の控除が適用されます。したがって、固定資産税評価額から1,200万円を差し引いた金額に対し、3%を乗じた金額である9万円が建物部分の不動産所得税です。
一方、土地部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。
以上の計算により15万円が不動産所得税となりますが、特例適用住宅の軽減が使用できる物件ですので、土地1㎡あたりの単価は12万円を用いて軽減金額を導き出します。
※軽減金額を求める計算式は、前述した通り「土地㎡あたりの価格×1/2×住宅床面積×2×3%」です。
15万円から36万円を引くとマイナスになるため、土地の不動産取得税はゼロとなります。よって、この場合の不動産取得税は建物部分のみとなり、9万円と算出できます。
次に、中古住宅を購入した場合の不動産所得税がいくらになるかシミュレーションします。建物と土地は以下の条件で、新築時期は2008年(平成20年)1月とします。
【土地】
・敷地面積:100㎡
・購入価格:1,000万円
・固定資産税評価額:600万円(土地1㎡あたりの単価は6万円)
この場合、建物部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。
中古住宅の場合、軽減される金額は築年数によって異なります。具体的には以下の表をご覧ください。
新築された日 | 控除額 |
---|---|
1997年(平成9年)4月1日以降~ | 1,200万円 |
1989年(平成元年)4月1日~1997年(平成9年)3月31日 | 1,000万円 |
1985年(昭和60年)7月1日~1989年(平成元年)3月31日 | 450万円 |
昭和56年7月1日~1985年(昭和60年)6月30日 | 420万円 |
1976年(昭和51年)1月1日~1981年(昭和56年)6月30日 | 350万円 |
1973年(昭和48年)1月1日~1975年(昭和50年)12月31日 | 230万円 |
1964年(昭和39年)1月1日~1972年(昭和47年)12月31日 | 150万円 |
1954年(昭和29年)7月1日~1963年(昭和38年)12月31日 | 100万円 |
参考:東京主税局 – 不動産取得税
本事例の場合、建物は2008年(平成20年)以降に建築されているため、1,200万円の控除が可能です。すると、控除額が物件の評価額を上回るため、不動産取得税はゼロになることがわかります。
一方、土地部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。
中古物件の場合、利用できる控除はないため、土地部分の不動産取得税は18万円になります。建物部分の不動産取得税がゼロであることから、この事例の場合の不動産所得税は18万円と算出できます。
上記2つの事例を比較すると、土地と建物を合計した固定資産税評価額は、新築が2,700万円、中古が1,600万円であり、新築のほうが1,100万円も高くなっています。ところが、不動産所得税は新築が9万円、中古が18万円であり、中古のほうが高額になっていることから、新築に適用される控除が大きな節税効果を発揮していることが分かります。もちろん、節税のメリットだけを考え新築物件を購入するのは望ましくありませんが、購入後に支払う税金の目安を考えたうえで検討することは大切です。
最後に、築年数40年と古い中古住宅を購入した場合の不動産所得税がいくらになるかシミュレーションします。建物と土地は以下の条件で、新築時期は1982年(昭和57年)1月とします。
【土地】
・敷地面積:100㎡
・購入価格:1,000万円
・固定資産税評価額:600万円(土地1㎡あたりの単価は6万円)
この場合、建物部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。
新築された日が1982年(昭和57年)の場合、上で紹介した表のうち昭和56年7月1日~昭和60年6月30日の項目に該当することから、控除額は420万円だと分かります。したがって、建物部分の不動産所得税は2.4万円です。
一方、土地部分の不動産所得税の計算は以下の通りです。
土地と建物部分の不動産取得税を合計します。
以上より、本事例のケースの場合、不動産所得税は20.4万円だと算出できます。
1つ上の中古物件の事例と築年数以外の条件はあまり変わりませんが、築年数が古いと建物の控除額が少なくなることから、不動産取得税の合計は高くなることが分かります。
不動産所得税には土地・建物それぞれに軽減税率があることを紹介しましたが、軽減措置を受けるためには税務署などへの「申告」が必要になります。たとえ条件を満たしていたとしても、申告していなかった場合は軽減措置が反映されない可能性があるので注意が必要です。
軽減税率の申告は、不動産を取得した日から一定期間内に行わなければなりません。申告の期限は都道府県によって個別に定められており、もし期限を過ぎてしまうと軽減措置が受けられない可能性があるため、必ず事前に確認するようにしましょう。申告する方法は、「不動産取得申告(報告)書」を記入して、税務署などへ提出するのが基本です。
不動産取得税の支払いは、不動産を取得してから数カ月後に管轄の税務署から送付される納税通知書によって行います。通知書に支払い期日が記載されているため、期限内に税務署の窓口、金融機関、コンビニエンスストアなどで納付を行うのが一般的な方法です。これは自動車税や個人事業税などの納付方法と同様の方式となります。なお、近年ではインターネットを利用したクレジットカード払いを適用しているケースもあるので、カードによる支払いをしたい人は事前に管轄の税務署へ確認するようにしてください。
支払い期限内に申告をしなかった場合、罰則が課されることはありませんが、延滞金が発生する場合があります。また、長期間納税をしないと督促状が届き、さらに期間が経つと財産の差し押さえなど厳しい措置を取られる可能性があるため、早めに支払うことをおすすめします。
不動産取得税の金額は決して小さくありません。取得した物件価格にもよりますが、数十万円の支払いになるケースも考えられます。取得から数カ月後に支払う必要があることから、物件購入時の初期費用として見込んでおく必要があります。納税通知書の金額と実際に考えていた金額に乖離があると予想外の出費になってしまう可能性があるため、物件の購入前にどのくらいの金額になるか自身でシミュレーションし、目安を掴んでおくことが大切です。
また、土地と建物、新築と中古によって税率や適用可能な軽減措置が異なる点を理解しておく必要があります。特に、新築と中古物件の軽減措置の違いはしっかりと頭に入れておきましょう。今後、不動産の取得を検討している人は、ぜひ不動産取得税の目安を事前に把握して計画的な資金計画を立てるようにしてみてください。