2021.02.10
不動産投資

不動産投資を成功させるために必要な「収支シミュレーション」とは

マンションの賃貸経営を行う際に欠かせないのが、「収支シミュレーション」です。想定キャッシュフローがマイナスの物件を購入してしまうと「投資」として成功するのは難しいため、きちんとキャッシュフローをシミュレーションしてから物件を購入することが大切です。

ここで言う想定キャッシュフローとは、「確定申告による還付金」を含んだ金額です。不動産投資を成功させるためには、細かい点まで考えてシミュレーションする必要があります。

そこで今回は、マンション投資において重要な、収支シミュレーションについて解説します。

 

<目次>

1.収支シミュレーションに必要な費用

始めに、収支シミュレーションをするために必要な諸費用について確認します。

1-1.購入時の諸費用

不動産の購入時は物件購入費の他に、以下のような諸費用がかかります。

・税金
固定資産税(日割り)、都市計画税(日割り)、登録免許税、不動産取得税、印紙代など
・手数料など
不動産仲介手数料、司法書士への登記手数料、火災保険料など

以上が主な諸費用ですが、目安としては購入費用の7~10%程度を見込んでおけば安心でしょう。

1-2.大規模修繕費用

新築で購入した物件も10年以上経てば、修繕が必要になる箇所が出てきます。場合によっては、建物全体をリフォームするような大規模な修繕が必要になることもあるでしょう。そのため、管理費とは別に毎月修繕積立金を負担することになります。

区分マンションの場合は管理組合に修繕積立金を毎月納めるので心配ないですが、ワンオーナーの一棟物件には管理組合は存在しないため、自分で積み立てなければなりません。家賃収入の一部をプールしておくことになりますが、目安としては家賃収入の5%程度です。

【修繕積立金プールの一例】一棟10室、家賃10万円で5%積み立ての場合

10万円×5%×10室×12ヵ月×10年=600万円

外壁塗装などの大規模修繕費は、物件の規模によって100~500万円くらいかかるので、上記の例の積立額は十分と言えるでしょう。

1-3.運営時の諸費用

運営する上でかかる大きな費用としては、管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、水道光熱費、広告費、管理会社への委託費用(一棟マンションの場合)などがあります。目安は想定家賃収入の10~15%で、これにローン返済が加わるため、最低でも20%以上は見ておかなくてはなりません。

区分所有マンションであれば、共用部分にある電球などの消耗品費や修繕費は管理費で賄われます。賃貸している部屋にかかる費用は、入居者の過失ではない不具合が生じた場合に修繕費が発生することがあります。

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2.収支シミュレーションに必要な不動産の基礎知識

収支シミュレーションをするには、基本的な不動産の知識が必要です。ここでは、4つの項目について解説します。

2-1.利回り

不動産の利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があります。これらの違いを理解することは、収支の目標を立てる上で重要です。

(1)    表面利回りとは

物件購入価格に対し、1年間でどの程度の収入を得られるかを表す指標です。単純に、年間家賃収入を購入価格で割った数値に100を掛けて算出します。おおまかな目安を知るときの参考にはなりますが、シミュレーションに使うには不向きです。計算式は、以下のとおりです。

想定年間家賃収入÷購入価格×100=表面利回り

(2)    実質利回りとは

こちらは諸経費を加味した利回りで、購入価格だけでなく固定資産税などの税金や管理費、修繕積立金などの諸経費を支出に加えて算出します。正確な利回りを知ることができるので、シミュレーションの際はこちらを使います。計算式は、以下のとおりです。

(想定年間家賃収入-諸経費)÷購入価格×100=実質利回り

【表面利回りと実質利回りの計算例】家賃収入300万円、諸経費50万円、購入価格4,000万円の場合

・表面利回り
300万円÷4,000万円=7.5%
・実質利回り
(300万円-50万円)÷4,000万円=6.25%
表面利回りと実質利回りで大きく差が出ていることがわかります。

2-2.構造と法定耐用年数

建物は、構造によって法定耐用年数が定められています。住宅用建物の耐用年数は、下表のとおりです。

建物の構造 建物の用途 耐用年数
木造・合成樹脂造のもの 店舗用・住宅用のもの 22
木造モルタル造のもの 店舗用・住宅用のもの 20
鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリートのもの 住宅用のもの 47
れんが造・石造・ブロック造のもの 店舗用・住宅用・飲食店用のもの 38

法定耐用年数は、減価償却費を計算する際に用いられます。たとえば、5,000万円のマンション購入費用を47年で償却する場合は、年間の計上額は約106万円になります(定額法)。

2-3.土地価格+建物価格=積算価格

積算価格とは、土地と建物をそれぞれ現在の価値で評価し、合計した評価額のことです。計算式は、以下のとおりです。

土地価格+建物価格=積算価格

(1)土地価格

土地価格は、主に国税庁の「相続税評価額路線価」、市町村の「固定資産税路線価」、国土交通省の「公示価格」、都道府県の「基準地価」などを基に、土地の形状や接道状況などを補正しながら評価します。

(2)建物価格

建物価格の評価は、以下の計算式で算出されます。

再調達価格×延べ床面積×(残耐用年数÷耐用年数)=建物の積算価格

再調達価格とは、建物を再新築した場合の費用のことです。

それでは、区分マンションを例に積算価格を計算してみましょう。

【区分マンションの積算価格計算例】

A 土地の積算価格(土地路線価25万円、敷地面積1,800㎡、土地持ち分40万分の5,000)

25万円×1,800㎡×(5,000÷40万)=562万5,000円

B 建物の積算価格(延べ床面積75㎡、築年数12年、1㎡単価22万円、耐用年数47年)

22万円×(47-12)÷47×75=1,228万7,000円

C 合計積算価格(A+B)

562万5,000円+1,228万7,000円=1,791万2,000円

2-4.年間家賃収入

家賃収入には、以下の2つの考え方があります。
ポータルサイトなどで物件を探す時の一次評価では「想定年間家賃収入」で検討します。一次評価で検討に値する物件は資料を取り寄せ、「実質年間家賃収入」でシミュレーションしてみましょう。

(1)想定年間家賃収入

想定年間家賃収入とは、購入した物件が満室の場合を想定して計算する家賃収入のことです。中古マンションの広告に掲載されている利回りは、「満室想定家賃収入」であることがほとんどです。

(2)実質年間家賃収入

実質年間家賃収入とは、空室期間を除いて実際に得られる家賃収入のことです。中古マンションで10室の物件中2室空室があれば、8室分の賃料で計算します。これを「現況家賃収入」と言います。

3.購入にかかわる項目と借入条件

不動産を購入する際は、ほとんどの人がローンを利用するでしょう。そこで、購入にかかわる項目と借入条件について、計画を立ててみましょう。

3-1.自己資金はいくら、いつ準備すべきか

自己資金は、いくら用意すればよいのでしょうか。参考までに自己所有を前提にした住宅購入でのケースを見てみましょう。
全国銀行協会のホームページによれば、自己資金(頭金)の目安は「物件価格の2割」です。平成27年度の「フラット35」利用者の平均自己資金は物件価格の21.3%なので、銀行協会が示した目安は現実的な数字と言えます。

ただし、購入費用のほかに諸経費もかかるので、自己所有であれば引っ越し代、家具購入費なども含め、新築で3~7%、中古で6~10%の上積みが必要です。いつ準備するかは必要額から逆算することになりますが、全国銀行協会では、「積立定期預金」や「財形住宅貯蓄」を利用して準備することをすすめています。

3-2.借入先をどうするか

借入先をどこにするかによって、金利負担が変わります。主な借入先は、以下のとおりです。

(1)銀行

銀行には大きく分けて、メガバンク、地方銀行、ネット銀行があります。メガバンクは資金力があるため、一棟マンションなど比較的多額の融資を受ける際に向いています。金利も低めですが、審査が厳しいことで知られています。地方銀行は審査は緩めですが、金利はメガバンクよりも高いことが多いです。ネット銀行は金利は低いものの、店舗がないので相談しにくいのがデメリットです。

(2)ノンバンク

ノンバンクは銀行に比べて審査が緩いため、銀行の審査に落ちた人でも審査に通ることがあります。個人事業主でも融資を受けられますが、事業を始めて間もない場合は審査に通らないこともあるようです。デメリットは、銀行に比べてはるかに金利が高いことです。

(3)財形住宅融資

職場で、住宅購入のために財形貯蓄を行っている人が受けられる融資です。財形貯蓄残高50万円以上が対象で、残高の10倍が借入限度額です。5年固定の金利が低めに設定されているため、リフォームを目的としたローンに向いています。

3-3.金利について

金利には、「固定金利」と「変動金利」があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。

(1)固定金利

固定金利とは、借り入れた時点で定められた期間の金利を固定されるものです。「固定金利期間選択型」と「全期間固定金利型」があり、契約期間中は長期金利が上がっても、返済額が変わることはありません。安心感はありますが、変動金利よりも金利が高く設定されています。

(2)変動金利

変動金利とは、長期金利の動向によって定期的に見直される金利のことで、固定金利に比べて金利水準は低いです。半年ごとに見直されますが、返済額の変更は5年ごとのため、すぐに返済額が変わるわけではありません。

また、「25%ルール」によって金利がどんなに上がっても25%以上は返済額が増えないようになっています。たとえば当初の返済額が10万円であれば、12万5,000円以上になることはないので安心です。

3-4.ローン期間について

ローン期間については、ローン契約者の年齢によって取り決めがあり、住宅ローンでは完済時の年齢が70歳未満に制限されています。不動産投資ローンでは、条件によっては完済時年齢が70歳以上でも借り入れができます。住宅ローンの返済原資は給与であり、定年の問題があるのに対し、不動産投資ローンは家賃を原資に返済することができるからです。

ローンは長期で組むほどキャッシュフローを確保しやすくなりますが、その分、元金の減りが遅くなりますので、シミュレーションした上でスタンスを明確にしておいた方がよいでしょう。

3-5.返済方式の違い

返済方式には、「元利均等払い」と「元金均等払い」があります。両者には以下のような違いがあります。

(1)元利均等払い

元利均等払いとは、毎月の支払額が一定になる支払方法です。支払い計画が立てやすく、返済開始当初の返済が少なくなるメリットはありますが、元金均等払いに比べて支払総額は多くなります。

(2)元金均等払い

元金均等払いとは、毎月の支払額のうち元金のみが均等になる支払方法で、元利均等よりも総支払額が少ないというメリットがあります。ただし、返済当初の支払額は多くなります。

3-6.購入後のリスクを抑える

不動産投資は投資である以上、さまざまなリスクがあります。代表的なリスクには、以下のようなものがあります。

(1)    入居率の下落(空室リスク)

物件購入を検討する際は、満室を想定して収支計画を立てますが、どうしても空室は出てしまいます。空室リスクをなくす方法に、「家賃保証サービス」があります。また、空室期間を短くするために「ホームステージング」を行って物件の印象を良くすると、入居者を早く確保できる傾向があるので、それらのサービスを検討するのもいいでしょう。

(2)    家賃下落リスク

家賃の下落には、物件自体が劣化して家賃を下げる場合と、周辺の家賃相場の下落に合わせる場合があります。家賃を下げない(または上げる)方法としては、リノベーションによって物件価値を高める戦略が考えられます。

(3)    金利上昇リスク

昨今は超低金利ですが、長期金利の上昇によって住宅ローン金利が上がる可能性は常にあります。このリスクを回避するためには、購入時に固定金利を選ぶことです。また購入後は、少しでも金利の安い金融機関で借り換えを行うという方法もあります。ただし固定期間中に借り換えを行うとペナルティ(違約金)が発生するケースがありますので、事前に調査しておきましょう。

4.不動産所得の必要経費

確定申告における不動産所得を少しでも減らすために、必要経費として算入できるものは漏れなく計上することが大切です。主な必要経費は、以下のとおりです。

<管理費>
物件管理を委託した場合、家賃の3%~5%程度を対価として支払います。サブリースを付けた場合は10%前後の管理費(サブリース費)が発生します。

<修繕費>
共用部分の電球交換や外壁塗装、また退去後の原状回復費用などが修繕費に該当します。

<通信費>
管理会社と連絡する際の通話料や、ネットで物件検索する際の通信費などです。プライベートでの利用とは区別する必要があり、費用の5~6割程度として申請する人もいます。

<旅費>
遠方の物件であれば、物件の定期視察のために支払った電車賃・飛行機代がかかります。これを旅費として計上します。

<交際費>
管理組合や業者との打合せ時にかかる会食費や喫茶代、ご挨拶のための手土産代などがこれに当たります。

<図書新聞費>
不動産産業界の動向・情報を得るために購読している新聞などの費用や、不動産事業の関係で購入した書籍代などです。

<消耗品費>
物件撮影のためのデジカメや、物件検索や確定申告をするためのパソコン代、申告書を印刷するためのプリンターなどは消耗品費として計上します。

<借入金利息>
毎月のローン返済分のうち、利息に相当する部分。月々のローン返済額は「元本+利息」で構成されており、経費として計上できるのは利息部分のみです。

<減価償却費>
建物の構造や用途によって決められている耐用年数に応じて、毎年減った分の価値を計上して償却する費用です。

代表的なものだけでも、これだけの費目があります。

5.不動産投資初心者が注意すべき点3つ

初めて不動産投資をする人が注意すべき点は、主に3つあります。

5-1.不動産投資で利益が出ると、確定申告が必要になる

サラリーマン・公務員・団体職員は、「給与所得者」なので、それぞれが所属する会社・組織が年末調整を行うことで所得税額が確定します。一方で、個人の所得にはいくつか種類があり、不動産投資によって家賃収入を得るものは「不動産所得」に該当します。

不動産賃貸経営における収入と支出の関係は、以下のとおりです。

・毎月の収入:家賃収入
・毎月の支出:ローン返済・管理費・臨時の修繕費・消耗品費など

式にすると、「所得=収入-その収入を得るためにかかった必要経費や所定の控除額」になります。つまり、収入=所得ではなく、収入から経費を引いた残りが所得になり、確定申告では所得の部分のみに所得税が課税されるのです。

必要経費がかさんで家賃収入を上回った場合、不動産所得はマイナス(赤字)になります。つまり、確定申告時に給与所得と相殺することで、給与・賞与から源泉徴収されている所得税を後で取り返すことができるのです。これにより、結果として年間収支がプラスになることがあります。想定シミュレーションで確定申告の還付金まで含めて考える必要があるのは、そのためです。

5-2.プライベートな経費と区別する

必要経費の内容を見て、以下のような疑問が思い浮かぶ人もいるでしょう。

・不動産投資用に購入したパソコンは、他のことにも使うことがあるかも……。
・物件撮影のために購入したデジカメも、保有物件以外のモノを撮影することがあるかも……。

確かに、不動産収入を得るために購入したものには、プライベートでも使用できるものも含まるので、それをどこで線引きするかという問題があります。この場合は、使用頻度に応じて個人・仕事用と分けることになります。

グレーゾーンではありますが、このような経費を上手に活用している投資家がいるのも事実です。確定申告にあたっては、何をどのくらい必要経費として計上すべきかについて、税理士に相談するのが賢明でしょう。

5-3.減価償却費を理解する

上記の中で最も重要なのが、「減価償却費」です。
減価償却費を完全に理解するにはかなり時間がかかるため、さしあたって以下のポイントを押さえておきましょう。

1.減価償却費はキャッシュアウトを伴わない経費
2.減価償却費が発生するのは、建物部分についてのみ
3.建物は、さらに「躯体」と「設備」に分けられる

上記の1については、首を傾げる人もいるかもしれません。費用なので、なぜ現金支出を伴わないのでしょうか? 具体的な例を挙げて説明しましょう。

(例)3,000万円の投資マンションを購入する場合
頭金と金融機関からの借入金を合わせて、売主に3,000万円を支払います。その3,000万円のうち、土地に該当する部分が1,400万円、建物該当部分が1,600万円。建物1,600万円のうち、躯体部分が1,000万円、設備部分が600万円だとします。

躯体部分は47年間、設備部分については15年間、分割して毎年費用として計上することができます。
しかし、物件価格の3,000万円は購入時に支払っているため、毎年の確定申告時に費用計上する減価償却費はキャッシュアウトを伴わないのです。

▼躯体部分:1,000万円÷47年間≒21万2,700円
▼設備部分:600万円÷15年間=40万円

つまり、合計で毎年612,700円も経費を計上できることになるのです。ただし設備部分は15年で償却が終わるので、16年目以降は躯体部分の21万2,700円が減価償却費となります。

3,000万円クラスの物件だと、想定家賃は(立地にもよりますが)月6~8万円程度。仮に8万円とした場合、年間の家賃収入は96万円。それに対して減価償却費61万2,700円は、大きな節税効果があると言えるでしょう。

6.収支シミュレーションをやってみよう

シミュレーションの結果をどのように考えればいいでしょうか。住宅ローンのシミュレーションであれば利益は関係ないので、無理なく返済できる額かを判断すればいいのですが、収益不動産の場合は、ローンを返済した上で利益を上げなければなりません。

したがって、毎月の運営において、「家賃収入>ローン返済+管理費ほか」という計算式が成り立てば、キャッシュフローはプラスとなり、良いシミュレーションと言えます。

7.まとめ

ここまで収支シミュレーションについて見てきましたが、最後にポイントをまとめておきます。

・収支シミュレーションに必要な、購入時の諸費用、大規模修繕費用、運営時の諸費用をチェックする。
・不動産投資の基礎知識である利回り、構造と耐用年数、積算価格、家賃収入などについて理解する。
・借り入れに関しては、自己資金をいくら準備できるか、いつから準備するか、借入先、金利の種類、借入期間、返済方式などを購入前の早い時期から検討する。
・購入後にはさまざまなリスクがあるが、空室リスク、家賃下落リスク、金利上昇リスクに特に注意し、必要に応じて対策を立てる。
・節税のためにも、必要経費をできるかぎり計上する。必要経費の中でも比重の大きい「減価償却費」を理解し、正しく計上する。
・シミュレーターを使ってシミュレーションを行う。

項目が多く覚えるのが大変ですが、物件に応じてその都度正しい収支シミュレーションを行うことが、不動産投資成功への近道と言えるでしょう。

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