2021.11.12
不動産投資

不動産投資の利回り、平均相場と計算例からみた理想%は?

物件の情報を検索していると、高い利回りが目につくことがあります。不動産投資に興味がある人の中には、果たしてその利回りは現実的な数字なのか、疑問に思う人もいるのではないでしょうか?本記事では、表面利回りと実質利回りの違い、計算方法や利用の仕方などについて説明しますので、ぜひ不動産投資の参考にしてみてください。

【著者】水沢 ひろみ

 

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不動産投資の利回りの種類と計算方法

新たに賃貸用不動産を購入するとき、購入にかかる費用と、その不動産から得られる利益の利回りを計算することは、その不動産が投資対象として適格かどうかの判断基準となります。そして、この利回りには「表面利回り」と「実質利回り」という2つの種類があります。また、物件の空室を加味して計算するか否かによって「想定利回り」と「現行利回り」という考え方もあります。

ここでは、これらの利回りの計算方法について説明していきます。

表面利回り

表面利回り=年間家賃収入÷購入金額×100

 
表面利回りとは、購入した不動産を賃貸した際に得られる、年間の家賃収入に対する不動産の購入金額の割合のことです。

表面利回りには、不動産経営に関わる諸経費や税金など、実際に発生する費用が加味されていません。不動産の広告などで表示されているのはこの表面利回りですので、広告に掲載されている利回りだけ見るとかなり高い利回りが得られるように感じられることがあります。

しかし、実際のところ不動産経営には諸々の経費が発生しますので、この表面利回りを想定して物件を買うのは現実的ではありません。表面利回りはあくまでも次に説明する実質利回りを計算するための前提として利用することが必要です。

実質利回り

実質利回り=(年間家賃収入―年間諸費用)÷購入金額

 
賃貸経営には、固定資産税や都市計画税などの税金のほか、修繕費や管理費などの諸経費が掛かります。実質利回りとは、不動産を賃貸した際に得られる年間の家賃収入から、これらの諸経費などを差し引いて計算した利益に対する不動産の購入金額の割合のことです。

つまり、その不動産を購入して賃貸した場合に実際に得られる収益の利回りをさします。賃貸経営に不可欠な諸経費を加味して計算していますので、実質利回りが分かれば現実的な利回りを把握することができます。

オーナーが注意すべき利回りとは

表面利回り、実質利回りという考え方以外に、想定利回り、現行利回りという考え方もあります。

想定利回りとは、賃貸物件の部屋が満室であると想定した場合の利回りです。それに対して現行利回りとは、現在入居中の部屋から得られる収益を基に計算した利回りです。広告などで用いられているのは想定利回りであるケースが多いので、実際には空室が発生していて現行利回りが低い場合にも、利回りが高く表示されていることがあります。

賃貸経営では、ある程度の空室も想定する必要がありますので、広告などで想定利回りが書かれている場合は注意してみるべきといえるでしょう。

不動産投資の利回りの平均相場

不動産投資における利回りは、東京と地方都市、あるいはワンルームとファミリータイプといった属性によって違いが出ます。

東京と政令指定都市の利回りの違い

まずは、東京と政令指定都市の賃貸物件の利回りを比べてみましょう。日本不動産研究所が発表した「不動産投資家調査」の結果によると、東京都・城南地区のワンルームの期待利回りは4.2%であるのに対して、同じワンルームでも政令指定都市の期待利回りだと4.8%~5.7%となっています。

同じく、東京都のファミリー向けマンションの期待利回りは4.3%であるのに対して、政令指定都市のファミリー向けマンションの期待利回りだと4.9%~5.8%となり、同じ間取りであっても政令指定都市の期待利回りのほうが東京に比べ高い傾向にあることがわかります。

ちなみに、この「期待利回り」というのは、その不動産へ投資する際に投資家が回収を期待する利回りのことです。単純に利回りの高さだけを比べると、地方の不動産のほうが利回りは高く、投資対象として魅力的に映るかもしれません。

しかし、利回りが高いというのは物件の価格が安いということであり、物件の価格が安い=それだけ相対的な魅力に乏しいといえます。そのため、想定利回りが高い物件でも、実際に部屋が埋まらなければ現行利回りは低くなります。地方に比べ東京の利回りが低いのは、それだけ賃貸需要が旺盛で、空室リスクが少ないことを反映していると覚えておきましょう。

ワンルームとファミリー向けタイプでの利回りの違い

さきほど紹介した調査結果から、ワンルームとファミリー向けタイプを比べると、ファミリー向けマンションの利回りのほうが若干高いことがわかりました。しかし、アパートやマンションを1棟購入した場合の空室リスクを考えてみましょう。

ファミリー向けの部屋が一部屋だけ空室になるのと、ワンルームタイプの部屋が一部屋だけ空室になるのとでは、全体の利回りへの影響は異なります。ファミリー向けタイプだと一部屋が空室になることで利回りは大きく下がりますが、ワンルームタイプは部屋数が多いぶん利回りへの影響は少なくなります。したがって、ここでも利回りの高さだけに注目するのは危険といえるのです。

不動産投資の利回りを見るときに大切なポイント

収益用不動産を購入しようとする時、つい目が行きがちになるのは利回りの高い物件です。今後、どの程度の収益を得られるかという目安として利回りを参考にするのは大切な視点ですが、その一方で、利回りの高い物件というのはそれだけリスクも抱えているといえるのです。

相対的に安く購入できることで、うまく行けば高収益を確保できる可能性がある代わりに、空室リスクも大きくなるので結果として収益がマイナスになる可能性も高くなります。投資の世界では利回りの高さとリスクは比例することに注意が必要です。

物件の条件によって利回りは変わる

一般的に、新築・中古、立地(駅からの距離)、物件の構造などは利回りに影響する傾向があります。たとえば、新築よりも中古、駅近よりも駅から遠い物件のほうが、不動産の価格は安くなるので利回りは高くなります。

不動産の利回りは年間に得られる収益と物件価格の割合で収益性を図るものですが、不動産投資には長期的に考える視点が重要です。その不動産の耐用年数全体に渡るトータルでのリターンやコストを考えると、中古物件は新築に比べて耐用年数が短くなるうえ、修繕費などのコストもかかります。つまり、中古物件は年間の利益率が高くても、最終的に手元に残るキャッシュフローはそれほど多くない可能性があります。

また、駅から遠い物件はそれだけ需要が少なくなり、空室リスクを抱える可能性が高くなります。そのため、たとえ利回りが高くても、その利回りを実現できる可能性は低いかもしれないことを視野に入れて検討する必要があります。

そのほか、不動産を購入するには物件の構造も重要です。構造がしっかりとした物件の価格は高くなりますが、後の耐用年数や修繕費などのコストを考えると最終的なキャッシュフローは多くなるケースは考えられます。特に不動産投資の初心者にとっては、高利回りの不動産の購入は却ってリスクがあることも念頭に置いておき、慎重に検討しましょう。

都心よりも地方のほうが利回りは高くなる

都心の人気居住エリアは地価が高いため、そのぶん利回りは低くなる傾向にあります。

しかし、都心は多少家賃が高くても賃貸需要は旺盛であるため空室リスクが低い点、また、仮に転売する際にも買い手が付きやすいという点にメリットがあります。一方、地方は物件の価格が安いため利回りは高くなりますが、都心に比べて空室リスクが大きくなる点、買い手が少ないため転売が難しくなる点にリスクがあります。

ローンをした場合の利回りも想定しておくべき

多くのケースでは不動産を購入するときにローンを組みますが、その際にローンのための金利の負担が生じます。不動産価格は高額であるため、金利によってはトータルで数百万円もの利息を払う可能性があります。

こういった金利をふくめて毎月返済していくことになるので、最終的に残る金額は少なくなる点に注意が必要です。そのうえ、これらは部屋が空室で家賃収入のない期間でもかかってくるため、ローンを利用して購入する際には金利の支払いも想定して利回りを計算しましょう。

◆不動産投資のローンについては、こちらの記事をご覧ください。
不動産投資ローンと他ローンの違い!審査難易度や借り換えも

利回りの高い物件は何らかの理由がある可能性

比較的利回りの高い物件は、立地や築年数をはじめ、事故物件となる要素があったり、耐震性に問題があったりするなどの理由から、物件価格を下げている可能性があります。通常、需要があり買い手のある不動産であれば価格は高くなるので、当然利回りは下がります。

利回りが高いということは、そのぶん人気がない物件ということですから、どのような理由で価格が下がっているのかを調べることが大切です。

ただし、一般的には需要のない物件であっても、利用の仕方によっては大きな需要が見込める可能性があります。利回りが高い理由を調べた結果、利用目的に影響がない理由から生じているものであるならば、購入するにあたって問題ないと判断できることもあるでしょう。

◆利回りが高い物件は「瑕疵物件」の可能性を疑ってみると良いかもしれません。瑕疵物件は外見上、何ら問題がないように見えるものもあるので、こちらの記事を参考に瑕疵物件について理解を深めてみてください。
瑕疵物件とは|賃貸オーナーとしての対策と告知義務について

不動産投資の利回りのシミュレーション

では、実際に2つのパターンでシミュレーションを行っていきます。まずは「3,000万円のワンルームマンション」で「想定利回りは5%」という例を使ってみましょう。

シミュレーション例➀

【表面利回り】
購入価格:3,000万円
年間家賃収入:150万円
表面利回り5%

【実質利回り~ローン金利2%の場合】
年間家賃収入:150万円
固定資産税:約30万円(概算)
年間管理費等:約6万円(管理費、修繕積立金などの概算)
ローン金利2%の場合の支払い:約120万円(35年ローン、元利均等額払いのケース)
合計:-6万円(-0.2%)

【実質利回り~ローンなしの場合】
年間家賃収入:150万円
固定資産税:約30万円(概算)
年間管理費等:約6万円(管理費、修繕積立金などの概算)
年間の負担額:約86万円(3,000万円÷35年。自己資金のみで、金利負担なしの場合の年間負担額を想定)
合計:28万円(0.9%)

 
次に、「3,000万円のワンルームマンション」で「想定利回りは6%」の例を使ってシミュレーションしてみましょう。

シミュレーション例②

【表面利回り】
購入価格:3,000万円
年間家賃収入:180万円
表面利回り6%

【実質利回り~ローン金利2%の場合】
年間家賃収入:180万円
固定資産税:約30万円(概算)
年間管理費等:約6万円(管理費、修繕積立金などの概算)
ローン金利2%の場合の支払い:約120万円(35年ローン、元利均等額払いのケース)
合計:24万円(0.8%)

【実質利回り~ローンなしの場合】
年間家賃収入:180万円
固定資産税:約30万円(概算)
年間管理費等:約6万円(管理費、修繕積立金などの概算)
年間の負担額:約86万円(3,000万円÷35年。自己資金のみで、金利負担なしの場合の年間負担額を想定)
合計:58万円(1.9%)

 
表面利回りが高くても、実質利回りを計算してみると、実際にはかなり差が出ることが分かります。特に、ローンを利用して不動産の取得を考えている場合には、金利を差し引いた後の利益がマイナスになることもあります。

一般の住宅ローンに比べると、投資用不動産に対する貸し付けの金利の相場は高くなっているため、ローンを利用するにしてもできる限り頭金を多くするなどといった金利負担を下げる工夫が必要です。

また、管理費や修繕積立金など、継続的に発生する支出にも注意が必要です。これらの金額は物件によって違いがありますし、同じ物件でも築年数の経過と共に増加する傾向のある費用であるため、慎重に見積もる必要があります。そのうえ、固定資産税についても、新築後3~5年は減税されるケースもありますが、そのあとで税額が上がることも想定する必要があります。

不動産購入後の現実的な収益性を予測するのであれば、上記のシミュレーションのように具体的な実質利回りを計算することが重要です。ただし、具体的な実質利回りは購入方法や費用のかけ方などによって変わりますので、一律に計算できるものではありません。そのため、表面利回りを参考に、そこへ自身の状況を加味して実質利回りを計算してみることをおすすめします。

◆家賃収入の基本、収入・支出の内訳についてはこちらの記事で紹介しています。
【超基本】家賃収入が理解できる!仕組みや収支内訳のまとめ

不動産投資の利回りだけにとらわれず、総合的に物件を判断しよう

不動産投資の利回りには表面利回りと実質利回りがあり、そのうえ、利回りは都心よりも地方都市のほうが高いこと、ワンルームタイプよりもファミリー向けのマンションのほうが高い傾向があること、中古不動産のほうが高くなることなどの理由も説明しました。

不動産投資を行う目的は利益を得ることですので、高い利回りを上げることは重要ではあるものの、大切なことは「高い利回りの根拠を知る」ことです。利回りの高さの原因はご自身の投資目的にとってクリアできることなのか、検討する必要があるでしょう。不動産は一つ一つ条件が異なり、同じ物件はありません。不動産投資の利回りだけにとらわれず、総合的に物件を判断することをおすすめします。

 

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