2023.11.21
税金

空き家にかかる税金とは?特定空き家になるリスクと解決策

2015年度の税制改正までは、更地にするよりも空き家のままにしておくほうが固定資産税額を抑えられるため、節税になるという風潮がありました。しかし、改正後は管理が行き届いていない空き家は固定資産税の軽減措置を受けられないため、大幅に納税額が増える事態となっています。そこで、本記事では特定空き家になるリスクと解決策について解説します。また、京都市が独自で空き家に課税する新税「空き家税」についても紹介します。

【著者】矢口 美加子

 

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京都市で導入が決定された「空き家税」とは?

空き家にかかる税金についての紹介に入る前に、まず本章では全国初の空き家税が導入される見通しとなった京都市について紹介します。国内で空き家の増加が問題となっていることから、京都市の空き家税は大きな注目を集めています。そこで、この制度の概要と背景について説明していきます。

「空き家税(非居住住宅利活用促進税)」の概要

「空き家税」とは通称で、京都市が創設する「非居住住宅利活用促進税」のことです。空き家などに課税する全国初の取り組みで、2023年3月に総務大臣が同意したことから、早ければ2026年を目安に導入されることが決定しました。

この導入により、京都市では固定資産税に加えて空き家税も支払うことになります。京都市内の市街化区域内に所在する空き家が課税対象で、納税義務者は空き家の所有者です。

空き家税は、家屋の固定資産税評価額の0.7%と、土地の固定資産税評価額の0.15~0.6%を合算したものが税額となります。なお、固定資産税評価額が20万円未満(制度導入から5年間は100万円)の家屋には課税されません。

詳しい内容は以下をご覧ください。

課税額と税率 課税額=➀ 家屋価値割+②立地床面積割

①家屋価値割 
固定資産税評価額(家屋)×税率0.7%
②立地床面積割
固定資産税評価額(土地)×税率0.15〜0.6% ※家屋の固定資産税評価額により異なる

課税が免除・減免される要件 ・事業用として使用している(1年以内に使用予定)
・賃貸または売却を予定している(募集開始から1年が免除期間)
・一時的に住んでいないという場合(転勤・介護施設への入所など)
徴収が猶予される期間 ・所有者が死亡してから最大3年間
・猶予期間中に空き家でなくなった場合、その期間の納税義務が免除される

参考:京都市 – 空き家・別荘などの非居住住宅への新税導入を進めています

空き家税の課税基準日は毎年1月1日で、普通徴収で徴収されます。

京都市の空き家税の計算例

具体的に京都市の空き家税がどのくらいになるのかをイメージしてみましょう。
以下のような物件の例で計算してみます。

【空き家税の対象となる空き家:土地付き木造2階建住宅】
家屋 (評価額:600万円 床面積:160平方メートル)
土地 (評価額:3,600万円 1平方メートルあたり18万円 面積:200平方メートルの宅地)

 
【家屋価値割の計算】
最初に家屋価値割の計算をします。建物の固定資産税評価額の0.7%を乗じます。

600万円✕0.007=4万2,000円

 
【立地価値割の計算】
次に立地価値割の計算をします。固定資産税課税標準額を住宅用地特例を適用して計算しましょう。

18万円(1平方メートルあたりの土地の評価額)×6分の1(住宅用地特例率)=(土地の課税標準額)3万円

 
課税標準額(3万円)に、空き家の床面積である160平方メートルを乗じます。

3万円✕160=480万円

 
家屋の固定資産税評価額が600万円なので、0.15%の税率を乗じます。

480万円✕0.0015(0.15%)=4,800円

 
※税率:家屋の固定資産評価額が700万円未満は0.15%、700万円以上900万円未満は0.3%、900万円以上は0.6%

空き家税の課税額は以下の計算式で算出します。

4万2,000円(家屋価値割)+4,800円(立地価値割)=4万6,800円(空き家税額)

 
このように、空き家税額は4万6,800円となります。

導入された背景

京都市は観光地として有名ですが、市内には10万戸を超える空き家があり、空き家問題が深刻です。近年では若い世代が近隣都市に流出しており、このままでは空き家の数が大幅に増加することが見込まれています。そのような事態を打開するために、京都市では全国初の空き家税(非居住住宅利活用促進税」を新設することになったのです。

空き家税を導入すれば、その負担を避けるために所有者が賃貸や売却などを進めることが予想されます。そこに子育て世帯を呼び込もうというのが京都市の目的です。空き家の流通・利活用が進めば、子育て世代が住宅として利用する可能性が期待できるからです。

また、空き家の発生を抑えると街の景観が良くなり、防災面でも安心できるようになります。空き家税は空き家の活用支援などに重点的に使われる予定で、京都市は持続可能な街づくりの実現も目指しています。

以上が京都市の空き家税についての解説です。それでは、現在だと空き家にかかる税金はどのようになっているのか、次章で詳しく紹介していきます。

空き家にかかる税金とは?

住んでいる人がいる家と同じように、空き家にも固定資産税と都市計画税が課税されます。ここでは、それぞれの計算方法と利用できる軽減措置、更地にした場合の課税について解説します。

固定資産税と都市計画税の計算方法

固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日現在において土地や家屋の所有者として固定資産課税台帳に登録されている人に課される地方税です。土地・家屋の価格は3年に1度行われる全件の評価替えで決定され、納税通知書と課税明細書の両方が自治体から送られてきます。

土地と家屋で別々に税額が算出され、その合計額が課税額です。それぞれの計算は以下の計算式で求めることができます。なお、軽減措置を利用していない通常の計算式となります。

【土地・建物の税額】

固定資産税の税額 固定資産税評価額(固定資産税課税標準額)× 1.4%(標準税率)
都市計画税の税額 固定資産税評価額(固定資産税課税標準額)× 0.3%(制限税率)

 
たとえば、土地2,000万円、家屋が1,000万円の住宅の固定資産税と都市計画税を計算してみましょう。計算式は以下をご覧ください。

固定資産税:(土地2,000万円× 1.4%)+(家屋1,000万円× 1.4%)=28万円+14万円=42万円

都市計画税:(土地2,000万円× 0.3%)+(家屋1,000万円× 0.3%)=6万円+3万円=9万円

固定資産税+都市計画税=42万円+9万円=51万円

このケースでの固定資産税と都市計画税の合計税額は、51万円となります。

利用できる軽減措置

固定資産税には、税金を低く抑えるための減税制度がいくつかあります。

・新築住宅の軽減措置
・住宅用地の特例
・省エネ改修促進税制
・バリアフリー改修促進税制
・耐震改修促進税制
・長期優良住宅化リフォーム
・農地への転用

空き家に関連する減税制度の一つが「住宅用地特例」です。居住用として使用している住宅の税額を下げられます。

固定資産税は固定資産税評価額の6分の1が課税対象に、都市計画税は固定資産税評価額の3分の1が課税対象になり、大幅に税額を抑えられるのがメリットです。課税対象額が低くなるため、税率は同じでも全体の税額が下がります。

「住宅用地特例」の適用を受けられない場合は、固定資産税・都市計画税を通常の税額で納付することになります。

更地にした場合の課税

居住用の建物が建っている土地は、税負担を軽減するために住宅用地の特例措置(固定資産税1/6、都市計画税1/3)が設けられています。しかし、更地にすると家がなくなり住宅用地の減税制度が適用されませんので、更地にする前よりも固定資産税は高くなります。

たとえば、課税評価額が1,000万円の建物、3,000万円の土地で、敷地面積が150㎡の空き家を解体して更地にする場合の固定資産税の税額を算出してみましょう。

更地にする前(空き家あり)
建物:1,000万円×1.4%=14万円
土地:3,000万円×1/6×1.4%=7万円
固定資産税合計:21万円

更地にした後(空き家なし)
土地:3,000万円×1.4%=42万円
固定資産税合計:42万円

更地になると非住宅用地になるため、減税制度が適用されません。そのため、建物がないにもかかわらず税額は高くなります。

「空き家」と「特定空き家」の違い

空き家には、特に問題のない普通の空き家だけでなく、周辺環境に悪影響を与える「特定空き家」という種類もあります。ここでは、この2種類の違いについて解説します。

「空き家」とは

空き家の定義とは、「居住その他の使用がなされていないことが常態である住宅」です。誰も住んでおらず、店舗など事業用としても使っていない状態が1年以上続いている、というのが空き家の要件です。

たとえば、誰も住まなくなってから数年以上経ち、建物の外観や内部が劣化していても、定期的に倉庫として利用している場合などは空き家には該当しません。その一方で、建物が比較的新しく綺麗な状態であっても、1年以上誰も住んでいなかったり利用していなかったりする場合は空き家とみなされます。

「おおむね1年間、建物への出入りがない」「所有者の住所が違う場所にある」「電気、水道、ガスが使用されていない」などを基準に空き家かどうかが判断されます。

なお、空き家とみなされても、綺麗な状態で管理されていれば問題はありません。

「特定空き家」とは

ガイドラインによると、「特定空き家」とは以下の状態の家をさします。

・そのまま放置すれば倒壊するなど著しく保安上危険となる恐れがある
・著しく衛生上有害となる恐れがある
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である

 
たとえば、老朽化したブロック塀を放置していると倒壊し、通行人にケガをさせる恐れがあります。誰も住んでいないことでネズミなどの害獣が繁殖したら、衛生的には良くありません。ガラスが割れて落書きされているような、古びてみすぼらしい空き家があると、周辺の景観が損なわれて住宅街のイメージ低下へとつながります。

このような特定空き家が増えてしまうと、街全体にとってもさまざまなリスクが高まるため、近年では全国の自治体が特定空き家を減らすべく対策を行っています。

「特定空き家」に認定される流れ

特定空き家を認定するのは市町村などの自治体です。認定作業は以下の流れで実施されます。

住民による空き家の情報提供がある

職員による現地確認を行い、特定空き家であるかを判定

空き家等対策調整会議による審査・検討

空き家の所有者に、特定空き家に認定されたことを通知

 
周辺の建物や通行人などに対し悪影響をもたらす恐れがあるかどうか、空き家がもたらす悪影響がどの程度深刻なのかを考慮しながら、特定空き家に該当するのかを判断します。

特定空き家に認定されると税金が上がる

人が住むための家屋の敷地として利用されている土地(住宅用地)については、特例措置があり税金が軽減されます。通常、空き家に課税される固定資産税と都市計画税には、先に紹介した「住宅用地の特例」が適用されるため、税金負担が大きく軽減されるのがメリットです。しかし、特定空き家に認定されると住宅用地の特例を受けることができません

固定資産税の住宅用地特例は下表をご確認ください。

  小規模住宅用地
(200平方メートル以下の部分)
一般住宅用地
(200平方メートルを超える部分)
※家屋の床面積の10倍まで
固定資産税 固定資産税評価額の6分の1 固定資産税評価額の3分の1
都市計画税 固定資産税評価額の3分の1 固定資産税評価額の3分の2

 
出典:名古屋市 – 都市計画税について

このように住宅用地特例が適用されれば、小規模住宅用地(住戸一戸あたり200平方メートルまでの部分)の固定資産税は評価額の6分の1、都市計画税は3分の1に軽減されます。反対に小規模住宅用地の場合で住宅用地特例が適用されなくなると、固定資産税が6倍、都市計画税は3倍に増えてしまうことになります。

たとえば、評価額が2,400万円の住宅用の土地で床面積が180平方メートルの場合で計算してみます。以下は特例が適用された場合です。

固定資産税:2,400万円×1/6×1.4%=56,000円
都市計画税:2,400万円×1/3×0.3%=24,000円
合計=80,000円

住宅用地特例が適用されなくなる場合を、以下で計算してみます。事業用などで使用している土地と同様の計算方法で算出します。

固定資産税:2,400万円×1.4%=336,000円
都市計画税:2,400万円×0.3%=72,000円
合計=408,000円

このケースでは、住宅用地特例を受けていないと全体の税額が約5倍に上がることになります。そのため、固定資産税評価額が高い土地ほど、住宅用地特例が適用されるかどうかが大きなポイントとなるでしょう。

固定資産税と都市計画税は毎年納付しなければならない税金のため、長期間でみればまとまった金額になります。税額負担を大きくしないためにも、特定空き家に認定されないようにする対策が必要です。

特定空き家に認定されないためには

特定空き家に認定されないための対策として、➀貸し出す、②売却する、③解体する、が大きな選択肢となります。それぞれの選択肢について解説します。

貸し出す

1つ目は、賃貸物件として貸し出す方法です。居住用ではないため住宅用地の特例は受けられませんが、家賃収入を税金用のお金に充てられます。それほど古くない空き家で立地条件が良い場合は入居者が見つかる可能性が高いので、空き家を資産として有効活用しましょう。

売却する

管理するのが手間という場合は、売却するのも1つの方法です。不動産市況を見据えて、高値で売れそうなタイミングで実行することをおすすめします。リフォームせずにそのまま売れるケースも多いので、金銭的な負担なしに売却することも可能です。

売却して黒字になった場合は譲渡所得税が発生しますが、相続した空き家の売却には3,000万円の特別控除などを活用できます。この場合、ほとんど所得税がかからないケースもあります。

参考:国税庁 – No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

解体する

あまりにも古いため売却が厳しい、新しい家を建てたいなど、空き家を活用しない場合は解体するのも良い方法です。解体後の活用方法としては、

・マイホームを新築する
・マンションやアパートを建てて家賃収入を得る
・駐車場として土地活用する
・コインランドリー、トランクルームなどを運営する

などがあり、将来のビジョンや立地を考慮しながら上手に土地活用できます。解体費用は、木造の場合だと1坪あたり3万~5万円です。20坪の空き家ならば、およそ60〜100万円程度がかかります。空き家を解体する際に補助金を出す自治体があるので、空き家の所在地を管轄する自治体に問い合わせてみると良いでしょう。

空き家として維持する場合の選択肢

第三者に貸し出す、あるいは売却などをすることなく空き家として維持する場合には、➀自分で管理する、②親戚などに管理を依頼する、③管理業者に依頼する、という3つの選択肢があります。

自分で管理する

空き家が自分の家の近くにあり、あまり管理に予算をかけられない場合は、自分で管理するのが良い方法です。空き家の管理として、以下を行います。

・室内換気
・通水
・外壁の確認
・清掃

空き家を閉めたままにしておくと湿気が溜まり、シロアリやカビが発生する原因になるため、定期的に屋内の風通しをします。蛇口の水を全く使用しないままでいると水道管が錆びつく原因になるため、キッチンやトイレといった水道が通る所を、最低でも1カ月に1度は3分以上流して通水します。

外壁が崩れると大変危険ですから、外壁にヒビや割れがないかも確かめます。また、家の中や敷地内の庭も定期的に清掃するようにし、近隣住民に迷惑をかけないためにもきちんと管理するようにします。

親戚などに管理を依頼する

遠方に住んでいるといった事情により自分で管理できない場合は、空き家の近くに住んでいる親戚などに管理を依頼するのも1つの方法です。その際にはきちんと報酬を支払うようにし、なるべく契約書などを交わして書面化しておくのをおすすめします。

管理業者に依頼するよりもコストは抑えられますが、万が一、トラブルが発生したら対処できない可能性があります。空き家の状態を考えながら依頼するようにしてください。

管理業者に依頼する

専門の管理業者に依頼する場合、
毎月の管理費はかかりますが、適切な管理をしてもらうことができます。空き家管理代行の会社へ依頼すると、以下のようなサービスを受けることが可能です。

・室内の換気
・建物と敷地内の清掃
・通水
・庭木の確認や手入れ
・防犯確認
・郵便受けの確認

定期的にきちんとした管理が行われるため、特定空き家に認定されるリスクも減らせます。

空き家の税金をできるだけ抑えよう

特定空き家に認定されると住宅用地の特例を受けられず、今まで納付していた固定資産税の額が急激に増えてしまうため、認定されないように対策していきましょう。また、老朽化による事故や管理不全による衛生上・景観上の問題なども考慮しなくてはなりません。空き家を持て余している人は、賃貸に出す・売却する・解体するといった選択肢について検討してみてはいかがでしょうか。

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