2023.05.19
税金

固定資産税の軽減措置|申告方法や注意点などのまとめ

空室期間中であっても発生するのが、固定資産税です。実は居住用の不動産を対象に軽減措置は用意されているものの、税金に関する情報は複雑なため、固定資産税の軽減措置にはどのような制度があるのか、申告方法やどのような注意点があるのかなど、本記事で詳しく解説します。固定資産税の軽減措置の対象に該当する場合には、しっかり対策を取っていきましょう。

【著者】水沢 ひろみ

 

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固定資産税とは?

固定資産税とは、土地や建物といった「固定資産」を所有している者に課税される税金で、毎年納税します。賃貸経営を行うために土地や建物を所有しているオーナーは、固定資産税の負担も考慮して不動産投資の利回りを計算する必要があります。

本章では、固定資産税の概要について解説しますので、固定資産税の基本と計算方法についてしっかり理解していきましょう。

固定資産税の基本

固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している者に課税される仕組みになっており、毎年4月~6月頃に不動産所在地の市町村などから納税通知書が届きます。

一括払いと分割払いの2つの納付方法から選択でき、分割払いを選択する場合には6月・9月・12月・翌年2月の年4回に分けて支払います。固定資産税には納付期限が定められており、この納付期限を過ぎると分割払いはできなくなりますので、分割払いを希望する場合には注意する必要があります。

固定資産税の計算方法

固定資産税は以下の計算式で算定します。

課税標準額×1.4%

 
固定資産税の税率は、標準税率である1.4%を採用している自治体が大半ですが、条例で異なる取り決めも可能となっているため、正確な税率は市区町村役場の窓口やホームページなどで確認することが必要です。

課税標準額とは、固定資産税を計算する基になる評価額をいい、建物の場合には課税標準額と固定資産税評価額は同じになります。一方、土地の課税標準額は 固定資産税評価額に負担調整率や特例を加味して計算します。固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書と共に送られてくる課税明細書で知ることができます。

また、同一の市区町村にある土地や建物の課税標準額が一定額未満の場合には、非課税となります。課税標準額の合計が30万円未満の土地、課税標準額の合計が20万円未満の建物には固定資産税が課税されません。課税標準の合計は市区町村ごとに計算しますので、免税点未満の土地や建物を複数の市区町村に所有している場合には、固定資産税は課税されないということです。

◆小屋の固定資産税については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
小屋に固定資産税はかかる?その条件と税金額の計算方法とは

固定資産税の軽減措置・減税制度について

一定の要件に該当する居住用の建物や住宅用地は、固定資産税の軽減措置や減税制度の対象になる可能性があります。期限内に申告が必要となるものがほとんどですので、どのような場合に軽減措置や減税制度の対象となるのかを理解しておく必要があります。

以下に解説していきますので、ぜひ固定資産税の節税に役立ててみてください。

参考:東京都主税局 – 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)

新築住宅

2024年(令和6年)3月31日までに新築した住宅は、固定資産税が1/2に減額されます。ただし、床面積が50~280㎡の範囲内という条件があり、減額される期間は建物の構造によって違いがあります。

一般の住宅⇒3年間
3階建て以上の耐火・準耐火建築物⇒5年間

 

認定長期優良住宅

長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で使用することができるように建物の構造や設備を設計・建設し、所管行政庁の認定を受けた住宅のことです。

2024年(令和6年)3月31日までに認定長期優良住宅を新築した場合は、そうではない住宅よりも、固定資産税が1/2に減額される期間が延長されます。上記同様、床面積が50~280㎡の範囲内という条件があり、減額される期間は建物の構造によって異なります。

一般の住宅⇒5年間
3階建て以上の耐火・準耐火建築物⇒7年間

 
参考:国土交通省 – 長期優良住宅のページ

住宅用地の特例

住宅用地の場合には、特例措置として固定資産税が軽減されます。住宅用地とは、居住用の戸建てやアパートなどが建っている土地・庭・駐車場(貸駐車場以外)などを指します。住宅用地は広さに応じて小規模住宅用地と一般住宅用地に分けられ、それぞれ減額の割合が異なります。

小規模住宅用地とは住宅1戸につき200㎡までの部分の住宅用地を指し、一般住宅用地とは小規模住宅用地に該当しない部分の住宅用地を指します。小規模住宅用地と一般住宅用地の「固定資産税と都市計画税の減額の割合」は、以下をご覧ください。

小規模住宅用地に該当する部分の土地⇒固定資産税の額が1/6、都市計画税が1/3
一般住宅用地に該当する部分の土地⇒固定資産税の額が1/3、都市計画税が2/3

 
小規模住宅用地に該当するかを算定する際には、「住宅1戸」ごとに200㎡以内であるかを算定しますが、アパートなどの共同住宅の場合には1部屋ごとに200㎡以内であるかを判定します。たとえば1棟に6部屋あるアパートの場合には、1,200㎡までは小規模住宅用地に該当することになります。

また、200㎡を超える住宅用地の場合には、200㎡までの部分は小規模住宅用地として、200㎡を超える部分は一般住宅用地として固定資産税や都市計画税が減額されます。

バリアフリー改修

一定の要件に該当するバリアフリー改修工事を行った場合、一戸につき100㎡までの床面積相当分までを限度に、工事完了の翌年度分の固定資産税のうち3分の1が減額されます。
※ただし、1月1日が工事完了日の場合は、その年度分が減額の対象となります。

【バリアフリー改修に係る固定資産税減額の要件】

  • 新築後10年以上経過した建物であること
  • 居住部分が建物の1/2以上の割合であること(賃貸部分は減額の対象外)
  • 平成28年4月1日~令和6年3月31日までの期間に行われた工事であること
  • 改修後の床面積が50㎡以上280㎡以下であること
  • 補助金などを引いた後の一戸あたりの工事費用が50万円(税込)を超えること
  • 工事完了後、原則3カ月以内に申告すること
  • 以下のいずれかに該当する人が居住する住宅であること
  • 工事完了の翌年1月1日時点の年齢が65歳以上の人
  • 要介護または要支援の認定を受けている人
  • 障害のある人
  • 過去にバリアフリー改修に係る固定資産税の減額措置を受けたことがないこと
  • 耐震基準適合住宅に係る減額と重複しないこと
  •  
    参考:東京都主税局 – バリアフリー改修工事をした住宅の固定資産税が減額されます

    省エネ改修

    一定の要件に該当する省エネ改修工事を行った場合、一戸につき120㎡までの床面積相当分までを限度に、工事完了の翌年度分の固定資産税のうち3分の1が減額されます。
    ※ただし、1月1日が工事完了日の場合は、その年度分が減額の対象となります。

    【省エネ改修に係る固定資産税減額の要件】

  • 平成26年4月1日以前に建てられた建物であること
  • 居住部分が建物の1/2以上の割合であること(賃貸部分は減額の対象外)
  • 令和4年4月1日から令和6年3月31日までの期間に、現行の省エネ基準に新たに適合するように、以下のⅰを含む工事を行うこと(ⅰの工事は必須)
  •  ⅰ 床の断熱改修工事
     ⅱ 修工事
     ⅲ 天井の断熱改修工事
     ⅳ 改修工事
     ⅴ 発電装置の設置工事
     ⅵ 調機・給湯器の設置工事
     ⅶ 太陽熱利用システムの設置工事

  • 改修後の床面積が50㎡以上280㎡以下であること
  • 補助金などを引いた後の一戸あたりの断熱改修に係る工事費用が60万円(税込)を超えるか、もしくは、断熱改修に係る工事費が50万円超で、太陽光発電装置、高効率空調機・給湯器、太陽熱利用システムの設置工事費と合わせて60万円を超えること
  • 工事完了後、原則3カ月以内に申告すること
  • 耐震基準適合住宅に係る減額と重複しないこと
  •  
    参考:東京都主税局 – 省エネ改修工事をした住宅の固定資産税が減額されます ―熱損失防止改修など住宅の減額―

    耐震改修

    一定の要件に該当する耐震改修工事を行った場合、一戸につき120㎡までの床面積相当分までを限度に、東京23区内は全額免除、それ以外は2分の1が減額されます。工事完了の翌年度分の固定資産税が対象ですが、1月1日が工事完了日の場合は、その年度分が減額の対象となります。

    【耐震改修に係る固定資産税減額の要件】

  • 昭和57年1月1日以前に建築された建物であること
  • 居住部分が建物の1/2以上の割合であること(賃貸部分は減額の対象外)
  • 現行(昭和56年6月1日以降)の耐震基準に適合する改修工事が行われていること
  • 令和6年3月31日までに耐震改修工事が完了していること
  • 一戸あたりの工事費用が50万円(税込)を超えること
  • 工事完了後、原則3カ月以内に申告すること
  •  
    参考:東京都主税局 – 耐震化のための建替え又は改修を行った住宅に対する固定資産税・都市計画税の減免(23区内)~住宅の耐震化を支援します~

    固定資産税の軽減措置を申告する方法

    固定資産税の軽減措置の申告方法や期限は、特例の内容などによって異なります。また、必要となる書類の種類なども自治体によって違いがあります。申告方法は以下にお伝えしますが、詳しくは自治体の担当窓口で確認してください。

    新築住宅

    認定長期優良住宅以外の新築住宅を対象とした固定資産税の軽減措置を適用とする場合、申告は特に必要ありません。自治体の税務課担当職員が、関連資料の閲覧や家屋調査などを行うことによって新築住宅の状況を確認します。

    認定長期優良住宅

    認定長期優良住宅として固定資産税の減額を受けるには、「固定資産税減額申告書」とともに、「長期優良住宅の認定通知書の写し」などを所在地の市区町村役場の窓口に提出します。期限は、建物を新築した年の翌年の1月31日までです(1月1日に完成した場合は、その年の1月31日まで)。

    住宅用地の特例

    土地の上に居住用の建物を建てることで「住宅用地の特例の対象」となる場合には、「固定資産税の住宅用地など申告書」を、土地の所在地にある市区町村役場の窓口に提出します。期限は、住宅用地となった翌年の1月31日までです。

    バリアフリー改修・省エネ改修・耐震改修の軽減措置申告方法

    工事完了後3カ月以内に、「固定資産税減額申告書」とともに工事の内容や金額が分かる書類などを、建物の所在地にある市区町村役場の窓口に提出します。自治体ごとに必要となる書類が異なりますので、申告の際には自治体の窓口やHPなどで確認してください。

    固定資産税の軽減措置を利用する注意点

    固定資産税の軽減措置を利用する際の注意点を4つお伝えします。軽減措置の要件に該当する場合には、これらの点に気を付けて制度を有効に利用しましょう。

    固定資産税の軽減措置を利用するには申請が必要

    新築住宅に関わる軽減措置以外は、固定資産税の軽減措置を受けるには原則として申請が必要となります。申請に必要な書類も準備しなくてはなりませんので、固定資産税の軽減措置の対象に該当する場合には、早めに手続きをしておくことをおすすめします。

    固定資産税の軽減措置の申請期限に注意

    固定資産税の軽減措置を受けるための手続きには、申請期限が設けられています。軽減措置の種類によって申請期限は異なりますので、それぞれの制度の期限を把握しておきましょう。

    税額に間違いはないか確認しよう

    固定資産税の額は自治体の職員が慎重に算定していますが、人間が行うことですから、どのような場合にもミスは起り得ます。申請した減税措置が間違いなく反映されているか、税額の計算にミスはないか、固定資産税の納税通知書が届いたら忘れずに確認しましょう。また、もしも納税通知書に記載された固定資産税額に納得いかない場合には、自治体に問い合わせて説明を求めるとよいでしょう。

    住宅用地の特例の対象外になっていないか確認しよう

    住宅用地の特例の対象となっていた建物であっても、空き家の状態が続いて「特定空き家」として認定されてしまうと、固定資産税の軽減措置の対象外になることがあります。「特定空き家」とは、適切な管理がなされないまま放置され、周辺の環境保全のために悪影響があると判断されるような建物です。

    空き家の状態が続くと建物は傷みやすくなりますので、維持・管理には特に注意を払うことが大切です。

    固定資産税の滞納には注意しよう

    固定資産税の納付期限が過ぎると、軽減措置が適用されなくなってしまう上、滞納による延滞金がかかってきます。さらに、自治体から督促状が届き、この督促状を無視して滞納を続けると、財産を差し押さえられてしまう可能性もあります。

    固定資産税の支払いは、対象となる軽減措置を可能な限り利用することはもちろん、できるだけ速やかに行うことも非常に重要です。

    固定資産税の軽減措置を利用して、賃貸経営の収益性を確保しよう

    固定資産税の軽減措置の内容や申告方法、注意点などを解説しました。税金に関する措置は頻繁に改正されるため、日頃から関心を持って新しい情報を掴むことが大切です。

    固定資産税の軽減措置の対象に該当していて、節約できるにもかかわらず、制度を知らないために多く納めてしまうのは避けたいものです。固定資産税の軽減措置を賢く利用することで、賃貸経営の収益性を確保し、経営を安定させていきましょう。

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