建物には固定資産税がかかることが知られていますが、小屋にもその分の固定資産税がかかるのか、また固定資産税がかかる条件とは何なのか気になるところです。もし使っていない小屋なら、取り壊すことで固定資産税が安くなるかもしれません。そこで今回は、小屋に固定資産税がかかる条件や具体的な計算方法などを解説します。
【著者】水沢 ひろみ
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目次
固定資産税とは、固定資産を所有している人が納めなくてはならない市町村税のことで、その年の1月1日現在、所有者として固定資産課税台帳に登録されている人が対象となります。
そもそも固定資産とは、土地や建物、償却資産などで、それぞれの内容は以下をさします。
納期は6月、9月、12月、翌年2月の年4回に分かれており、6月頃に納税通知書と共に課税明細書が送られてきます。
※構築物とは、土地に固定された建物以外の設備や工作物で、事業のために必要とされるものをさします。
固定資産税は以下の計算式で求めることができます。
固定資産税課税標準額とは、固定資産税を算定するための基準となる金額です。建物の固定資産税課税標準額は、固定資産税評価額と同じ額になることが通常です。
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書と共に送られてくる課税資産明細に記載されているので、建物の固定資産税課税標準額を知りたい時には、課税資産明細を調べれば分かります。
なお、この記事は小屋の固定資産税についての解説を目的としていますので、土地の固定資産税課税標準額に関する詳しい説明は省略します。
固定資産税評価額は、固定資産課税台帳に記載されている土地や建物の評価額で、総務省が定める固定資産評価基準に基づいて決定されます。
これによって、建物の評価額は、再建築価格と経年減点補正率等を基に算定されます。再建築価格とは、同じ建物をその時点でもう一度新たに建てると仮定した際にかかる費用のことを意味します。経年減点補正率とは、建築後の経過年数による価値の減少を考慮して定められた率のことです。
要するに、建物の固定資産税は、再建築価格を基に市町村の職員が算定した価格によって決まることになります。具体的には、所有者からの申告や登記所からの通知によって、建物の新築や増改築の事実を知った市町村の職員が家屋調査を行って評価を行います。ですから、新たに建物を建てたり、改築等を行ったりした際には、市町村への届け出が必要となるのが原則です。
反対に建物を取り壊した場合には、その翌年度からは固定資産税はかからなくなります。その場合には、取り壊した日から1カ月以内に建物の滅失の登記をする義務が生じ、それによって登記を受け付けた法務局から、各自治体の固定資産税の担当窓口へ通知がいく仕組みになっています。
一人の人物が同一の市町村内に所有する固定資産の課税標準額の合計が一定額未満の場合には、固定資産税は原則として課税されません。この判断の基準となる一定の額を「免税点」と呼び、土地の免税点は30万円、家屋の免税点は20万円、償却資産の免税点は150万円と決められています(財政上特に必要と判断され、条例により課税することができるケースもあります)。
固定資産の課税標準額の合計が免税点を超える場合には、超過した部分にのみ課税されるのではなく、課税標準額全体に対して課税されます。以下に計算例を紹介します。
このケースの場合、土地の課税標準の合計額は40万円となり免税点を超えるので、40万円に対して課税されるのに対して、家屋の課税標準額は15万円で免税点未満なので、家屋には課税されないことになります。
「不動産登記法における建物」に該当する場合には、小屋も固定資産税の対象となる家屋に分類されます。「不動産登記法における建物」とみなされるには、以下の3つの要件に該当する必要があり、これらの要件に該当すれば、実際に登記しているかどうかに関わらず固定資産税の対象とされます。
つまり、小屋が「建築物」としてみなされるかどうかは、以下の要件にあてはまるかどうかで決まるということです。小屋の設置方法や使用目的等によって異なるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
建物として利用するためには、三方向以上が壁で囲まれていて、屋根が付いており、外気から分断されていることが最低限必要です。ただし、どの程度外気から分断されていればよいかについては、建物の用途によって判断が分かれます。
住居として利用する目的であれば、外気からしっかり分断できる状態であることが必要だと考えられます。一方で、屋根がついている場合には、野球場や競馬場も建物として登記が認められていることから、外気分断性の程度についてはケースに応じてある程度柔軟に判断されているといえます。
ただし、会社等が所有している場合には事業用の資産として償却資産となり、固定資産税の対象となりますので注意が必要です。
建物として登記するためには、土地にしっかりと固定されていることと、一定期間だけではなく永続的な期間に渡って固定された状態が続くということも必要です。ホームセンター等で購入できるような簡便な物置であっても、基礎の上にしっかりと固定されていれば土地への定着性が認められて、建物として登記することが可能ということです。
しかし、たんに地面の上に置いてあるだけの物置では、不動産登記簿上の建物とは認められません。
また、永続性という観点から、たとえば工事現場の仮設事務所や展示場等として使用した後に、取り壊されることが前提の建物の場合、登記は認められません。
固定資産税の対象となる建物の要件として、「目的とする用途に供し得る状態」であることが必要とされています。住居として利用したいのか、店舗、工場、倉庫として利用する予定なのか、利用する目的によって備えなくてはならない建物の状態は異なります。
倉庫として使用するのであれば、物を貯蔵できる空間であれば足りますが、住居として利用するなら、電気やガス、水道等のライフラインが備えられ、寝食可能な空間である必要があります。
建物の目的に沿って人や物が問題なく利用できる空間を提供しているかを、上記2つの要件と共に総合的に判断して決められることになります。
先程お伝えしたように、固定資産税の計算式は下記のとおりですので、固定資産税課税標準額が分かれば固定資産税の額を計算することができます。
建物の固定資産税課税標準額は、その建物を建てるために実際にかかった費用ではなく、価値を評価する時点での再建築にかかる費用を想定し、経年劣化も加味したうえで、市町村の職員が算定します。それなので、グレードの高い材料を用いており、高価な設備が整えられていれば、それだけ評価額は高くなります。
設備の1つひとつまで評価の対象となるので、固定資産税課税標準額を厳密に計算することは現実的ではありません。そのため、建築にかかった費用の50~70%程度として計算するのが一般的です。
たとえば、10㎡(約6帖)ほどの小屋を建てた場合の固定資産税の額を計算していきます。用いる材料や備え付ける設備等にもよりますので、約150万円で建てたと仮定(小屋は100万~300万円程度で建てるケースが多い)し、建築にかかった費用の70%を再調達原価と考えると、以下のように計算できます。
となり、大体1万5千円以内には収まると考えられます。
3年ごとに行われる評価替えの際には、この額にさらに経年劣化も加味して決められます。一般的には年数の経過で評価額は落ちると考えられますが、建築費の上昇等によって経年劣化よりも価値の上昇のほうが上回ると判断されると、評価額が上がることもあります。
ただしその場合には、納税者の経済的な負担を考慮して、固定資産税の額は評価替えの前の額のまま変わらないとされるのが原則です。そのため、評価替え後の固定資産税は、評価替え前よりも安くなるか、そのまま据え置かれるかのどちらかになります。
上記の内容を踏まえると、小屋の固定資産税を考える場合、多くのケースでは1万5千円程を予定しておけばよいといえます。
先に投資用戸建てを購入し、後から小屋等を建てようとするケースがあります。このような場合、気を付けなくてはならないポイントが2つあります。後で困ることがないように、事前に確認しておきましょう。
新たに建物を建てる際に気を付けたい決まりが、建築基準法の「一建築物一敷地の原則」です。これは、「ひとつの敷地にはひとつの建物しか建てられない」という考え方です。
ただし、用途上不可分の関係にあると考えられる建築物であれば、同じ敷地内に複数建てることが認められています。用途上不可分の関係にある建築物とは、たとえば車庫や物置、温室、離れ等が該当します。これらの建築物は独立して利用されるのではなく、主に本体である建物の用途を拡充するために利用されるからです。
なお、ひとつの敷地内にもうひとつの建物を建てるためには、敷地分割という方法を取らなくてはなりません。この場合、分割後の敷地それぞれについて、建蔽率や容積率、接道義務は問題ないか等、建築上必要な基準を満たしていることが必要になります。そのため、これから小屋を作る場合、その小屋が既に建っている建物と用途上不可分の関係にあると認められれば問題なく作ることができますが、そうでなければ敷地分割という手続きが必要になるということです。
小屋が建物と用途上不可分の関係にあると認められるかは、小屋と建物の関係性によって決まります。台所やバス・トイレ等、生活に必要な設備が一式揃っているとしたら、本体の建物を利用しなくても小屋だけで生活が完結できてしまうため、用途上不可分の関係にあるとは考えられない可能性があります。
しかし、物を収納したり、趣味や仕事をしたりするための空間を追加で作ることが目的の一般的な小屋であれば、用途上不可分の関係にあるとして、同じ敷地に作ることは基本的に問題ないと考えられます。
建物を建てたり、増改築を行ったりする際には、建築確認の申請を行わなくてはなりません。
建築確認とは、建物の工事を行う前に、施工内容が建築基準法等に定められている基準を満たしているかを、都道府県や市町村の担当者や指定確認検査機関が確認する制度です。建築確認によって建築基準法に適合していると判断されると、確認済証が交付されて工事を着工することができるようになります。
この建築確認は、建築基準法が必要とする安全性の基準を建物がきちんとパスしているのか確認することが目的ですが、特定のケースにおいては「建築確認申請」が不要とされることがあります。
防火地域や準防火地域では、広さに関わらず確認申請が必要となります。それ以外の地域では、10㎡以内の「増築」であれば確認申請は不要です。ただし、新たに建物を建てる場合や10㎡を超える増築をする際には、確認申請が必要です。
一般的には、10㎡以内の小屋であれば、建物の新築ではなく本体の建物と用途上不可分の関係にある建築物の「増築」にあたると考えて問題ありません。ですから、防火地域、準防火地域以外で10㎡以内の小屋を建てる場合には、建築確認は不要であると考えられます。
ただし注意したい点として、建築確認が不要だとしても、建築基準法を守らなくてよいことにはなりません。建築基準法は、利用者の安全や環境を守るために建物の構造や設備などに関する最低限の基準を定めた法律ですので、建物を建てる際には遵守しなくてはならないものです。
それなので、この場合にも建築基準法を遵守して小屋を作らなくてはなりませんし、不動産登記法上の建物に該当するのであれば、原則として固定資産税が課税されることに変わりはありません。
現実的に小屋が「建築物」としてみなされるかどうかは、小屋の設置方法や使用目的等によって異なるとお伝えしてきました。ただし、課税対象とはならないと認識されている内容でも、自治体や担当者によっては判断が分かれることが少なくありません。
それなので、お住まいの地域についてはどうなのかと疑問に感じたり、固定資産税がかかるのか分からなかったり判断できなかったりする場合は、すぐに税務署や自治体窓口で相談することをおすすめします。
投資用の不動産を購入したら小屋があったという場合、不要なのであれば撤去することで固定資産税が安くなるかもしれません。反対に、これから新たに小屋を建てようと考えているのであれば、設備の程度によって固定資産税が高くなる可能性を考えておいたほうがよいでしょう。
固定資産税は継続的にかかる費用ですので、どういう場合に固定資産税がかかるのか、その場合の固定資産税の額はどれくらいなのかといった点は、不動産投資をする際には知っておきたい基本的な知識です。この記事を参考に、小屋にかかる固定資産税の知識を身に付けて、不動産投資を成功に導いてみてください。
かつて銀行や不動産会社に勤務し、資産運用に携わった経験を活かし、現在は主に金融や不動産関連の記事を執筆中。宅地建物取引主任、証券外務員一種、生命保険募集人、変額保険販売資格など保険関係の資格や、日商簿記1級など、多数の資格を保有し、専門的知識に基づいた記事の執筆とアドバイスを行う。