三点ユニットバスは、一人暮らし用のワンルームなどによくみられる設備です。一人で暮らす場合はさほど支障がないですが、近年では「バス・トイレ別」を賃貸住宅の条件に加える人が多いため、空室改善として分離工事を検討するオーナーがいます。この記事では三点ユニットバスの分離工事の費用相場や、工事なしで空室改善するアイデアなどを紹介しますので、賃貸物件のオーナーはぜひ参考にしてみてください。
【著者】矢口 美加子
オーナーのための家賃保証
「家主ダイレクト」
こうしたお悩みを抱えている方は、まずは資料ダウンロード(無料)しお役立てください。
目次
三点ユニットバスとは、お風呂・トイレ・洗面台がひとつの部屋に一緒になったユニットバスのことです。ホテルやワンルームの賃貸物件など、単身で利用する部屋に多く設置されています。一見、狭い空間に3つの設備があるため使いづらいように感じられますが、コンパクトに収まるので単身用の賃貸物件では空間を有効活用することができます。
なお、よく混同されるのが「ユニットバス」です。ユニットバスは工場で生産された壁・天井・床・浴槽が一体となったセットを組み立てた設備をさしており、トイレや洗面台は付いていません。近年はユニットバスが主流で、一般的な住宅のバスルームでは多く利用されています。
ちなみに、壁や床、浴槽を職人が作ることを在来工法といいます。一昔前の住宅ではよく施工されており、築年数が古い住宅で見られる工法です。しかし、近頃ではデザインにこだわりを持つ人以外は採用しなくなってきています。
三点ユニットバスのメリット・デメリットをオーナー・入居者それぞれの目線に分けて詳しく紹介します。
オーナーと入居者それぞれの立場からみた三点ユニットバスのメリットを紹介します。
オーナーのメリット | ・居住面積を広げられる ・漏水のリスクが少ない ・工期が短い |
---|---|
入居者のメリット | ・家賃が安い ・掃除がしやすい ・気密性が高いので暖かい |
オーナー目線だと、三点ユニットバスはバスルーム・洗面所・トイレが一体化しているため、サニタリールームをコンパクトにまとめられるのが良い点です。それぞれを別の場所に設置する場合はそのぶんの広さが必要であることから、これら3つの設備を同じ空間にまとめることで入居者の居住スペースを広めに取ることができます。
そのうえ、ユニットバスで気密性が高く、水回りが1つの場所にまとまっているので、階下への漏水リスクが少ないのも大きなメリットです。老朽化など、入居者の責任ではない漏水事故の修繕費用はオーナーが負担しなければなりません。その点、三点ユニットバスならばその心配は少ないと考えられます。また、工期が短いのもメリットで、1つの場所に3つの設備が設置できるので通常の工期よりも時間がかかりません。
入居者目線だと、まず、家賃が相場より安いことが挙げられます。一般的なバス・トイレ別の物件は、2カ所分の面積を取らなければならずコストがかかるため、家賃は高くなる傾向があります。しかし、三点ユニットバスだとコストを抑えられるため、それが家賃に反映される傾向があります。バス・トイレ別の物件と同じ専有面積でも、三点ユニットバスの物件のほうが居住面積は広くなります。
そして、掃除がしやすいのもメリットです。三点ユニットバスはお風呂場とトイレが同じ空間にありますので、お風呂掃除をしながらトイレ掃除も一緒に済ませることができます。独立したトイレでは床に水を流すことはできませんが、三点ユニットバスならばシャワーで流すことが可能です。また、ユニットバスによる気密性の高さから、冬の寒い日でも温度差を気にせずに入浴できる点もメリットです。
いっぽう、三点ユニットバスのデメリットは以下のとおりです。
オーナーのデメリット | ・バス・トイレ別の物件を選ぶ人が多い ・カビが生えやすい ・分離工事を行うときに費用がかかる |
---|---|
入居者のデメリット | ・お風呂とトイレを同時に使用できない ・浴槽に浸かりにくい、足元が濡れやすい ・収納スペースが少ないので備品を置きづらい |
オーナー目線でのデメリットは、まず、バス・トイレ別の物件を選ぶ人が多い点です。入居者のデメリットでも挙げていますが、三点ユニットバスはお風呂とトイレを同時に使用することはできません。一人暮らしだとあまり問題ないかもしれませんが、2人以上で住んでいたり、ゲストが来ることが多かったりする場合は不便を感じる可能性があります。また、中には生理的にトイレは個室でないと嫌だと感じる人もいます。
そして、室内にカビが生えやすいのもデメリットです。入浴するたびに湿気がこもってしまうため、掃除をまめにできない入居者だとかなり汚してしまう可能性があります。また、バスルームとトイレを独立させる分離工事をする場合、所有している部屋数が多いほどかなりの費用がかかってしまいます。
いっぽう、お風呂とトイレを同時に使用できないという点以外の入居者側のデメリットは、まず、浴槽に浸かりにくい点があります。シャワーしか浴びない人ならば問題ありませんが、ゆっくり浴槽でリラックスしたい人にはあまり向いていません。さらに、浴槽にお湯を張ってしまうと体を洗う場所がないので、シャワーを使うことが難しくなります。
そのうえ、足元が濡れやすいことも挙げられます。シャワーカーテンを閉めても床が濡れやすいため、足元を濡らしたくない人は防水仕様のスリッパを用意する必要があります。また、三点ユニットバスは収納スペースがほとんどなく、トイレットペーパーなどの備品を置くことが難しいのもデメリットです。
先に結論をいえば、三点ユニットバスの分離工事は、あまり費用対効果が良いとはいえません。
もちろん、一般的にはバス・トイレ別の物件のほうが入居希望者には人気があるので、なかなか空室が埋まらず困っているオーナーは少なくありません。ただ、三点ユニットバスの分離工事には高額な費用がかかります。三点ユニットバスリフォームの分離費用の相場を見てみましょう。
分離リフォームの内容 | 費用相場 |
---|---|
バス・トイレ・洗面台を独立して設置 | 100~200万円 |
浴室からシャワールームに変更 | 60~90万円 |
パーテーションで分離 | 20~30万円 |
一番手頃なのはパーテーションで分離して仕切りをつくる方法ですが、専用の板を設置して仕切るだけなので完全に別室になるわけではありません。とはいえ、入居者を募集する際にはバス・トイレ別と掲載することができるので、内見者を増やせるチャンスは高まります。
学生や単身者向けのワンルームならば、浴槽をなくしてシャワールームとトイレに分けるのも1つのやり方です。物件情報には、シャワールーム・トイレ別と掲載できます。設置費用はやや高額ですが、シャワーだけで十分という入居者ならば特に問題ないと考えられます。
もっとも費用がかかるのは、バス・トイレ・洗面台を独立して設置する工事です。トイレを新たに設置するには約1畳のスペースが必要ですので、居住スペースが狭くなるリスクもあります。ワンルームの物件だと狭いスペースであることが多いため、違う施工方法を選ぶほうが良いでしょう。
もしもバス・トイレ・洗面台を独立させる工事を行う場合、回収するにはそれなりの期間がかかることを想定しておく必要があります。たとえば、家賃7万円の部屋で、分離リフォームに200万円の支出がある場合、回収するためには2年4カ月ほどかかることになります。これらをふまえると、三点ユニットバスの分離工事は必ずしも費用対効果が高い工事であるとはいえません。
三点ユニットバスの部屋を所有しているオーナーの場合、少しでも空室改善につながる方法があれば知りたいという人もいるのではないでしょうか。そこで、本章では三点ユニットバスの部屋を空室改善する例について紹介します。
賃貸経営はただでさえ修繕費用・税金・各諸経費などと出費が多いため、三点ユニットバスの部屋を空室改善する場合も、いきなり大掛かりな工事をせずに見た目を工夫してみることを検討してみましょう。
たとえば、浴槽側の壁におしゃれなアクセントパネルを張ってスタイリッシュな雰囲気に変えたり、空いているスペースなどに雑貨や観葉植物を置いたりして、インテリアのセンスアップをしてみましょう。このような工夫をしてみることで、高額な改装費用をかけずに入居者が気に入りやすい部屋へと近づけられる可能性が高まるでしょう。
ターゲット層を変えるのも良い方法です。たとえば、一人暮らしの学生や単身者だけではなく、外国人も含めるなど、浴槽に浸かる文化のない人達も対象に加えます。シャワー文化に慣れている人たちであれば、三点ユニットバスの部屋でも大してデメリットにはならない可能性があリます。
三点ユニットの設備がある部屋は単身者向けの間取りであることが基本ですので、長期入居は考えにくいといえます。そのため、家具家電付きにするのも良い方法です。最初から家具・家電があれば、引越しの手間や初期費用があまりかからないので、入退去しやすくなります。入居者がホテル感覚で気軽に部屋を借りられるので入居する際のハードルが低くなり、空室改善につながる可能性が高まるかもしれません。
三点ユニットバスを分離工事すると高額な費用がかかるうえ、ワンルームのように広くない物件では居住空間が狭くなるなどのリスクも発生します。しかし、見た目をおしゃれに工夫したり、入居者のターゲット層を広くしたり、家具家電付きにしたりといった対策を講じることで、そこまで大きな費用をかけずに入居者が入りやすい物件へと変えることができるかもしれません。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
宅地建物取引士、整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級の資格を保有。家族が所有する賃貸物件の契約や更新業務を担当。不動産ライターとしてハウスメーカー、不動産会社など上場企業の案件を中心に活動中。