【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介
不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。
著者 吉澤 大
不動産の売買などの取引をしたとしても、その不動産が誰のものになったのかというのは当事者でなくてはわかりません。
そこで、土地や建物について、その所在地や面積、所有者の住所・氏名などを公の帳簿(「登記簿」といいます) に記載し、権利関係などを誰もがわかるようにすることを「登記」 といいます。
登記された情報は、法務局で「全部事項証明書」等を入手することで誰でも確認ができます。この一定の登記をする際に掛かる税金を「登録免許税」といいます。
では、不動産の取引について、登記が必要になる主な場面を一つひとつみていくことにしましょう。
(1)新築の建物を取得した場合
新築の建物を取得した場合にする登記には、大きくわけて二種類のものがあります。
一つは、「表題登記」というものです。これは、新築の建物について、建物の所在や構造、面積といった情報を登記するものです。
いわば建物の登記簿の表紙を作成するようなものといって 良いでしょう。
この表題登記は、新築の建物を取得した人が、その取得後一カ月以内に必ず行う必要があり、怠ると法律違反になり罰金をとられることもあるので注意が必要です。
ただし、実際には、この表題登記をしていない「未登記建物」というものも存在します。
なお、この表題登記をするためには、登録免許税は掛かりませんが、その手続きに際し、詳細な図面などの添付が必要なため、土地家屋調査士という専門家に手続きを依頼するこ とがほとんどです。
もう一つは、建物の最初の所有者を確認する「所有権保存登記」です。こちらは、表題登記と異なり、登記をするかしないかは所有者の任意です。
しかし、自分の権利を明らかにするためにもこの登記はするのが一般的です。
なお、所有権保存登記をする際には、一定の登録免許税が掛かります。
ですから、所有権保存登記に掛かる税金や費用は、あらかじめ必要なものとして見込んでおくとよいでしょう。
(2)土地や中古の建物を取得した場合
土地や中古の建物など、既に誰かが所有していた不動産の所有者が変わる場合には「所有権移転登記」というものをします。
こちらも所有権保存登記と同様に登記をするかどうかは所有者の任意です。しかし、後述する融資についての抵当権設定や自分の権利を明らかにするためにも、この登記は行われるのが一般的です。
なお、不動産の取得には、購入した場合だけではなく、相続や贈与により取得した場合も含まれます。
その「取得した原因」に応じた登録免許税の税率が定められており、登記の際には、それぞれ必要な登録免許税が掛かるのです。
(3)融資を受けて抵当権を設定する場合
融資をする銀行などは、その融資が万一回収できない場合に備えて、不動産を担保に取ることがあります。返済ができなくなった場合には、その不動産を売却しその代金を優先的に返済に充ててもらうようにするのです。
この担保となった物件の売却代金から優先的に返済を受ける権利のことを「抵当権」といいます。抵当権を土地や建物に設定する際には、登記簿にその旨の記載がされますが、その登記にも登録免許税が掛かります。
この抵当権を設定する費用については銀行などが負担するのではないかとも思えますが、実際には融資を受ける人がその費用を負担することになっています。
登録免許税の金額はそれぞれ下記の算式で計算されます。
不動産の取得:固定資産税評価額×税率 |
抵当権の設定:抵当権の設定金額×税率 |
この税率は、新築建物の所有権保存等kについては4/1,000(0.4%)であり、所有権移転登記については購入の場合、原則 20/1,000(2%)、贈与の場合は 20/1,000(2%)、相続の場合には 4/1,000(0.4%)とその「取得した原因ごと」に定められています。
また、抵当権設定についての税率は 4/1,000(0.4%)です。 なお、住宅に関しては所有権保存・移転登記や抵当権設定登記について、それぞれ登録免許税の軽減措置があり、その負担は住宅以外の建物に比べて大幅に軽減されます。
新築住宅の保存登記の場合、その時点では、まだ固定資産税の評価額が明らかになっていません。
この場合の登録免許税の算出の際には、登記官が決めた価額を使うことになります。
具体的には、建物の利用目的や構造などによって予め基準となる金額が定められた「新築建物課税標準価格認定基準表」を使って算定した金額が固定資産税評価額の代わりになるのです。
登録免許税は、登記を受けるときまでに金融機関窓口等で現金で納付し、その領収証書を登記申請書に貼り付け、添付書類とともに法務局に提出するのが原則ですが、税額が3 万円以下の場合にはその分の印紙を購入し申請書に貼り付けることも認められています。ただ、実務上は 3 万円を超える場 合でも印紙を貼る納付方法が一般的です。
いずれにしても、登記には思いのほか多額のお金がかかるので、事前にきちんと準備をしておきたいものです。
▽不動産についての主な登記の種類
個人が一定の要件を満たす住宅を取得した場合には、新築住宅、中古住宅についてそれぞれ登録免許税が軽減され、そのローンについての抵当権の設定についても軽減措置があります。
一方、土地については、住宅用であるかどうかにかかわらず、売買の移転登記の登録免許税が本来2.0%のところ、1.5%に軽減されています。*1
また、一定の基準を満たした「認定長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」については、さらに軽減措置が設けられてい ます。
*1 令和3年3月31日までの登記申請が対象です。
この登記の手続きは、登記をする人自身で行うこともできます。ただし、そのためには正しい登記についての知識を身 に付け法務局(登記所)に何度も足を運ぶ必要があるでしょ う。
どうしても登記に掛かる費用を削減したいのであれば、自分で登記をすることも良いとは思いますが、「不動産についての登記をする場合には、別途司法書士報酬が掛かる」と考えるほうが現実的だといえます。
司法書士報酬はその司法書士ごとにバラつきがありますが、目安としては所有権保存登記で2万円から3万円、売買による所有権移転登記の場合で5万円前後、抵当権設定登記で5万円前後といったところです。
もちろん、登記の対象となる金額により異なりますが、一般的な住宅をローンで購入した場合にはおおむね合計で10万円から15万円程度の司法書士報酬が掛かると考えておい たほうが良いでしょう。
*さらに詳しくなるための参考資料
▽不動産取引についての登録免許税額表
▽主な軽減税率と適用要件
《適用要件》
1. 自己の居住用であること
2. 新築または取得後1年以内の登記であること
3. 床面積が50m²以上であること
4. 築年数が木造等20年以内、鉄筋コンクリート造等25年以内であること。
ただし一定の基準を満たした耐震住宅については築年数を問わない
5. 令和4年3月31日までに登記した認定長期優良住宅であること
6. 令和4年3月31日までに登記した認定低炭素住宅であること
▽新築建物課税標準価格認定基準表(東京の場合、一部抜粋)
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『不動産の税金の基本を学ぶ』
└【連載#1】不動産の購入に対する消費税
└【連載#2】契約書などの作成に対する印紙税
└【連載#3】不動産登記に対する登録免許税
└【連載#4】不動産取得に対する不動産取得税
└【連載#5】税務署からの「お尋ね」への対応
└【連載#6】ローンで購入した際の住宅ローン控除
<著者プロフィール>
吉澤 大
196年生まれ。税理士、中小企業診断士、宅地建物取引主任者。明治大学商学部卒業。國學院大學大学院経済学研究科博士前期課程修了。不動産全般、とりわけ相続や事業承継、資産税に強い税理士として、首都圏を中心に活躍。大学院在学中に國學院大學公開講座講師を務めた後、本郷公認会計士事務所(現辻・本郷税理士法人)勤務を経て、1994年、当時26歳で吉澤税務会計事務所を開設。現在、同事務所代表、株式会社トータル・マネジメント・コンサルティング代表取締役及びアライアンスLLPパートナー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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