【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介
不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。
著者 吉澤 大
不動産を購入する際には、不動産本体の価額だけではなく、それ以外にも付随していろいろな費用が発生します。
どんな費用が付随して掛かるのか、まずは、購入契約の時点で負担が必要になる印紙税からみてみましょう。
印紙税とは、契約書や領収証など「一定の文書」(「課税文書」といいます)を作成した人が納めなくてはいけない税金のことです。
税金を納めるといっても、金融機関などで振り込みをするのではなく、「収入印紙」を購入し、それらを文書に貼って消印をすることで納税をするのです。
印紙は郵便局や「収入印紙売りさばき所」として指定された場所で購入が可能です。はがきなどを取り扱っているコンビニエンスストアの一部でも購入できます。
ただ、コンビニに置いているのは少額のものばかりですので、不動産の売買(譲渡)契約書に貼るような比較的高額の収入印紙は、郵便局で手に入れるのが一番確実です。
不動産の売買契約書は、課税文書に該当するため、原則として契約書を作成した売主、買主ともに自らの契約書に印紙を貼って、消印をすることが必要です。
なお、取引金額が10万円を超える不動産の売買契約書については、「軽減税率」として通常の契約書などよりも低い金額の印紙税の負担で良いことになっています。
例えば、契約金額3,000万円であるマンションの売買契約書には、通常20,000円の印紙税の負担が必要であるところ、10,000円の印紙を貼って消印をすれば良いのです。
一方、マンション等の購入ではなく、自分の土地に建物の建築をする場合もあるでしょう。この場合には、建築の依頼主と施工業者との間で工事請負契約書が交わされます。
この請負契約書も課税文書であるため、建築の依頼主と施工業者それぞれが印紙税を負担する必要があります。
この請負契約書についても請負金額が100万円を超える場合、通常の税率よりも低い軽減税率が定められています。
例えば、2,000万円の工事請負契約書には、通常であれば20,000円のところを、軽減税率により10,000円の印紙を貼って消印をすればよいことになります。
不動産の取引について、売買代金を受け取った側が領収証を発行しますが、一定金額以上の売買代金の領収証にも印紙を貼って消印することが必要になります。
しかし、個人が自宅を譲渡した代金の受取について発行をする領収証には印紙は不要です。
なお、銀行振込でお金のやりとりがされた場合には、その事実が預金通帳で確認されるために、通常は領収証の発行はされませんので、印紙税もかかりません。
さて、不動産の購入に際して、多くの人は銀行でローンを組まれると思います。このローンを組む場合に、金融機関との間でローンの借用書(「金銭消費貸借契約書」といいます) を取り交わします。
この借用書も課税文書であるため、契約書に記載された融資額に応じた金額の印紙を貼り消印をしなくてはなりません。
例えば、2,000万円のローンを組む場合、20,000円の印紙を貼らなくてはならないのです。
さらに、住宅ローンを組む場合には、借用書の印紙だけでなく、融資に対する手数料や保証料という費用を負担することが多いものです。
これらの費用が不動産の購入価額以外にも必要であることと、具体的にどの程度の出費が必要になるのかを事前にきちんと理解しておくことが、その後の資金繰りのプランにとって大切なことなのです。
▽不動産取引で印紙税がかかる主な契約書等
印紙税は、契約書等に記載された金額に応じてそれぞれの課税文書ごとに定められた税額を納めることになります。
しかし、不動産の売買契約書で消費税込の金額と消費税抜の金額では、印紙税の金額が異なることもあります。
では、この契約書等に記載された金額の消費税額はどのように考えれば良いのでしょうか。
契約書等で消費税の金額を区分できるのであれば、消費税抜の金額によって、消費税の金額が具体的に明示されていないのであれば、消費税込の金額によって印紙税の金額を判断することになるのです。
さて、印紙を貼らないとどうなるのでしょうか。
万一、税務調査で、印紙が貼られていないことが発覚した場合には、本来納付すべきだった税金の3倍のペナルティ(「過怠税」といいます)を負担しなくてなりません。
また、印紙が貼ってあったとしても正しく消印をしていない場合には、本来納付すべき税金と同じ金額の過怠税を別途負担しなくてはならないのです。
では、印紙が貼っていないと、その契約書は無効なのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。印紙が貼っていなかったとしてもその契約書は有効です。
ただ、契約書や領収証を多く発行する法人の税務調査では、印紙についてチェックされることが多いので、契約書や領収 証等には、きちんと印紙を貼り正しく消印をしておきましょう。
なお、契約書を作成し印紙を貼って消印をしたものの、実は本来の金額以上の印紙であったということもあるで しょう。
その場合には、貼ってしまい消印をしてしまった印紙はどうなるのでしょうか?
そのようなときには、税務署に行き、「印紙税過誤納確認申請書」を提出することで、印紙の金額の還付を受けることができるのです。
不動産の取引の当事者の中には、印紙税の負担をできるだけ少なくしたいという人もいるでしょう。そんなときには、印紙税の負担を最小ですませる方法もあります。
売主、買主、仲介業者がそれぞれ契約書を保持しようとすると、そのすべてに印紙を貼り消印をする必要があります。
しかし、仲介業者が契約書の原本を保有する必要性はそれほどなく、売主も手放した不動産ならば、契約書は原本ではなくても良いと考える人もいます。
その場合には、正式な契約書を一通だけ作成し、この契約書には印紙を貼り消印をします。
一方、コピーであってもその記載内容についての証拠になるため、契約書の原本を必要としない人はそのコピーを所持 するのです。
こうして、原本分の印紙税を売主と買主とで折半することにより印紙税の負担を軽減するということが、実務上よく行 われています。
しかし、そのコピーに「原本と相違ありません」という記載を加えたり、新たに署名や押印をしたりした場合には、そのコピーは、もはや単なるコピーではなく印紙税の課税文書となるので注意しましょう。
▽契約書のコピーには印紙は不要
*さらに詳しくなるための参考資料
▽不動産取引に関わる印紙税額表
※不動産譲渡契約書の「1万円以上10万円以下」、工事請負契約書の「1万円以上100万円以下」の印紙税は200円となります。また、ともに「1万円未満」については非課税になります。
▽金銭消費賃貸
▽売上代金の受領証(領収証)に関わる印紙税額表
※個人の自宅を譲渡した代金の領収書など営業に関しないものは非課税になります。
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『不動産の税金の基本を学ぶ』
└【連載#1】不動産の購入に対する消費税
└【連載#2】契約書などの作成に対する印紙税
└【連載#3】不動産登記に対する登録免許税
└【連載#4】不動産取得に対する不動産取得税
└【連載#5】税務署からの「お尋ね」への対応
└【連載#6】ローンで購入した際の住宅ローン控除
<著者プロフィール>
吉澤 大
196年生まれ。税理士、中小企業診断士、宅地建物取引主任者。明治大学商学部卒業。國學院大學大学院経済学研究科博士前期課程修了。不動産全般、とりわけ相続や事業承継、資産税に強い税理士として、首都圏を中心に活躍。大学院在学中に國學院大學公開講座講師を務めた後、本郷公認会計士事務所(現辻・本郷税理士法人)勤務を経て、1994年、当時26歳で吉澤税務会計事務所を開設。現在、同事務所代表、株式会社トータル・マネジメント・コンサルティング代表取締役及びアライアンスLLPパートナー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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