【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介
不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。
著者 吉澤 大
不動産取得税とは、有償・無償を問わず、土地や家屋を取得した際に課税される税金です。
ただ、「不動産を取得した際」といっても、実際に納税の通知書が届くのは、その不動産を取得してから数カ月後、特に新築の家屋であれば取得した翌年4月以降と時間が経ってからのことです。
不動産取得税の納税通知書は忘れた頃にやってくるので、その支払いについて事前に準備をしておかないと、思わぬ出費に家計や資金繰りが圧迫されることにもなります。そんな思いをしないためにも、不動産取得税についてきちんと準備をしておきたいものです。
不動産取得税については原則として、その取得した不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所に自ら申告することになります。
しかし、実務上は都道府県税事務所から送付されてきた書類に必要事項を記入して返送することで申告とすることが多いようです。
この不動産取得税の対象となる「不動産」とは土地と家屋のことです。土地と家屋であれば、その種類や用途は関係がなく課税の対象となります。
また、有償か無償かも問わないので、交換や贈与による取得も対象になります。ただし、相続による取得については、原則非課税です。
ちなみに、登記の有無も問いません。不動産取得税の課税を逃れるために登記をしないというのは意味のないことなのです。
不動産取得税の税額は次の計算式で計算されます。
不動産取得税の課税標準は、不動産を購入した金額ではなく、固定資産税評価額です。ただし、課税標準額が一定の金額未満の場合には、不動産取得税が課税されない「免税点」があります。
固定資産税評価額とは、既に申し上げたように、自治体の窓口で「固定資産評価証明書」の交付を受けることで確認できます。
しかし、新築の家屋では、まだその固定資産税評価額は算出されていません。
固定資産税評価額のおよその目安は、家屋であれば購入価額の6割程度の金額になると思われます。そこから、概算の固定資産税評価額を算出し、支払うべき不動産取得税の金額を試算してください。
なお、令和3年3月31日までに取得した「宅地など」については、固定資産税評価額を 2分の1にした金額が課税標準額になります。
この「宅地など」にはマンションの「敷地利用権」も含まれます。マンションの価格は、家屋の部分と土地の利用権に相当する敷地利用権部分から成っており、この敷地利用権に ついても、宅地として課税標準額が2分の1に軽減されるということです。
税率は原則として4%です。ただし、令和3年3月31日までの取得であれば土地と住宅家屋(賃貸住宅も含む)については、3%に軽減されています。
さらに、マイホームや賃貸住宅といった住宅用家屋やその敷地については、税率以外にも特別な軽減措置がいくつもあります。
結果的に、住宅用の不動産と住宅用以外の不動産では、不動産取得税の金額に大きな違いがあるのです。
▽不動産取得税が課税される場合、課税されない場合
住宅用の家屋とその敷地については、生活に必須のものであるという配慮から、不動産取得税についていくつかの税額軽減措置があります。
どんな軽減措置かと言うと、家屋については課税標準額が減額され、その敷地である土地については一定の税額控除が受けられるのです。
なお、家屋は、新築住宅なのか中古住宅なのかによっても軽減が受けられる条件や軽減内容が異なってきます。
まずは、住宅を新築した場合や新築住宅を購入した場合の家屋の軽減措置についてみていきましょう。
新築未使用の住宅の場合、一定の要件を満たせば課税標準額から 1,200万円を控除できます。
つまり、家屋の固定資産税評価額が1,200万円までの新築住宅であれば家屋については不動産取得税がかかりません。
言いかえると、新築家屋の固定資産税評価額が購入価額の6割程度だとすれば、購入価額が約2,000万円(1,200万円 ÷ 60%)までの新築の家屋には不動産取得税は課税されな いということです。
中古住宅についても一定の要件を満たせば、課税標準額から控除が受けられます。その控除額は新築の時期によって異なり、最高で1,200万円です。
一方、住宅とともに取得した敷地についても家屋が新築住宅の軽減措置を受けられる場合で、かつ一定の条件を満たせば税額の控除が受けられます。
控除額は次のいずれか多い金額になります。
*1 令和3年3月31日までに取得した宅地等の場合1/2にした後の金額
*2 住宅の床面積の2倍の上限は一戸当たり200m²となります
中古住宅の敷地については、住宅用家屋の課税標準の軽減措置の要件を満たす中古住宅と同時に、もしくはその前後一年以内に取得した敷地であれば、新築住宅の場合の土地の軽減と同じ税額控除が受けられます。
なお、これらの軽減措置は、新築の場合、構造が居住用であれば賃貸用であっても住宅とその敷地に適用がされます。
しかし、中古の場合、自らが居住する住宅とその敷地にしか適用されないので注意が必要です。
不動産取得税は自ら申告するのが原則ですが、仮に申告し忘れても自治体が税額を計算して納税通知書を送ってきます。
しかし、住宅やその敷地についての軽減措置を受けたいのであれば、不動産の取得者自らが60日以内に、「不動産取 得税減額申告書」を提出する必要があるのです。
その際には、売買契約書のほか様々な書類の添付も必要です。自治体ごとに添付する書類が異なることがありますので、事前に都道府県税事務所の担当部署に問い合わせをし、申告手続きをスムーズに行えるようにしたいものです。
▽不動産取得税減額申告書 見本
*さらに詳しくなるための参考資料
▽不動産取得税の免税点(1物件ごとに判定)
▽不動産取得税の税率
▽新築未使用住宅の不動産取得税住宅軽減要件一覧
※1 マンション等の場合、構造上独立した一住戸ごとの日か面積により、共有部分は持分に応じた面積を加算して判定されます。
※2 令和4年3月31日までに新築された認定長期優良住宅の場合には、控除額が1,200万円から1,300万円に拡大されます。
▽新築未使用住宅の敷地の不動産取得税住宅軽減要件一覧
※1 この適用の前提として、住宅と土地を購入するのが同一人物であるのが条件
※2 上記で3年とあるのは土地の取得が令和4年3月31日までの場合で原則は2年。また、この期限内で法律で定めるやむを得ない事情があれば4年。
▽中古住宅の不動産取得税住宅軽減要件一覧
▽中古住宅の不動産取得税住宅軽減控除額要件一覧(一部抜粋)
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『不動産の税金の基本を学ぶ』
└【連載#1】不動産の購入に対する消費税
└【連載#2】契約書などの作成に対する印紙税
└【連載#3】不動産登記に対する登録免許税
└【連載#4】不動産取得に対する不動産取得税
└【連載#5】税務署からの「お尋ね」への対応
└【連載#6】ローンで購入した際の住宅ローン控除
<著者プロフィール>
吉澤 大
196年生まれ。税理士、中小企業診断士、宅地建物取引主任者。明治大学商学部卒業。國學院大學大学院経済学研究科博士前期課程修了。不動産全般、とりわけ相続や事業承継、資産税に強い税理士として、首都圏を中心に活躍。大学院在学中に國學院大學公開講座講師を務めた後、本郷公認会計士事務所(現辻・本郷税理士法人)勤務を経て、1994年、当時26歳で吉澤税務会計事務所を開設。現在、同事務所代表、株式会社トータル・マネジメント・コンサルティング代表取締役及びアライアンスLLPパートナー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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