2021.07.02
不動産投資

【連載#5】物件を持っておくか売却すべきかはどう判断する?

【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介

不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。

著者 広瀬智也

物件の資産価値を見直すための4ポイント

経営者としては、常に資産の状況に気を配っておき、利益を最大化させるために組み替え(売却して資金化→新規取得)を図っていくことも必要です。

資産の見直しに当たっては、次の4つがポイントになります。
① キャッシュフロー
② ROI
③ 担保価値
④ 立地

①「キャッシュフロー」と②「ROI」に関しては、ここまで説明してきた通りですが、例えば、付属設備や建物の減価償却が終了するなど、キャッシュフローが悪くなったりマイナスになったりするときは見直しをする一つの目安になります。

空室率・利回りなどが悪くなくても、ROIがイマイチであれば見直しの対象になりますし、逆にROIが優秀な物件でも、例えば元利金等や変動金利で融資を受けている場合は、金利上昇の際にキャッシュフローが悪くなる可能性もありますから、金利リスクを恐れる人は売却を検討するのも一つの手だと思います。

また築年数が古い、立地が悪くて将来の入居率が不安という物件などは、売却を検討する対象になるでしょう。

銀行からの融資を借りるには担保価値に着目!

③の「担保価値」については、銀行がその物件をどの程度評価しているのかということです。例えば1億円を借りて買った物件でも、銀行が1億5000万円と評価してくれる物件であれば、もう5000万円の担保余力があるということで、その枠を使って別の借り入れができます。新しい物件を買うときの共同担保にするなど、活用することができるのです。

私の経験でも新築物件を建てる際に、融資のための担保価値が足りなかったため、手持ちの物件で担保価値が余っている別の物件を共同で担保として差し入れて満額の融資を得ることができました。借り入れの返済が進んでいれば、担保余力が出る可能性もあるので、銀行に相談してみる価値はあります。

それがたとえキャッシュフローやROIがそれほどでもない物件でも、担保価値が高ければ資産の中に組み込んでおくと有効な場合もあるのです。

自分の資産に無自覚で、そういった価値に気がつかないのはもったいない話です。逆に担保余力がないのであれば、売却する一つの要素になるでしょう。毎年公示される路線価をチェックすることで、担保価値の変化をキャッチすることもできます。

物件エリアのプラス面、マイナス面を整理

さて最後の④「立地」ですが、近くに電車の駅ができるとか、大きな商業施設ができるとか、大きな企業や大学が来るとか、そういうプラス要素があればその物件に対する評価を上げるべきですし、逆に、商業施設がつぶれたり、企業や大学が撤退したり、過疎が進んだり、バスの路線が廃止になるといったマイナスの要素があるならば、マイナスポイントとして考えたほうがいいでしょう。

ちなみに売却を検討していると書いた神奈川県横浜市緑区の物件では、最寄り駅の駅前を再開発する計画があり、駅前に大きな商業ビルが建ちました。ちょっと迷ったものの、再開発されたプラス面を勘案しても、そのときは資金化して別の物件を買ったほうが効率的かなという判断をして、売却しました。

エリアごとの不動産マーケットの相場もチェック

さらに、そのエリアの不動産マーケットの相場もチェックしておくといいと思います。

私が保有していたアパートは神奈川県横浜市緑区にありましたが、このエリアでは売却した当時、中古物件の利回り相場が8~9%でした。これを知っていると、私が神奈川県横浜市緑区の物件を買ったときは12.8%の利回りでしたから、その差額が利益になるとわかるわけです。そういった指標が、アメリカだとキャップレート(対象不動産にどれだけの収益力があるかを示す)と呼ばれて広く公開されていますが、残念ながら日本では個人投資家が買う市場ではオープンになっていません。

ですから私の場合は、「楽待」や「健美家」といった収益物件のポータルサイトで、最寄り駅や物件種別、築年数などが似ている売り物件の利回りや、売買の成約事例の利回りをチェックするようにしています。投資する際の判断基準としても使えますし、売却するかどうかを判断する上でもとても参考になります。不動産は値動きがわかりにくく、また、緩やかですので、そうした大きな流れをとらえるための情報収集が重要なのです。

そうやって常に自分の資産に目を光らせ、良いもの悪いものを自分でランク付けして、悪いものから良いものに組み替えられる可能性があるのであれば、積極的に組み替えを図るのも手です。

また、見直しの過程で、管理面でコストを下げたり、リフォームすることで空室率を減らし収入アップが見込めるのであれば、そうやって素早く対応していくのが、賢い経営者と言えるでしょう。

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『2時間で丸わかり! 不動産経営のきほん大全』
【連載#1】不動産経営の収支計画はどう作ればいいの
【連載#2】どうすればキャッシュフローは良くなるの?
【連載#3】「キャッシュフロー」が悪化するのはどんなとき?
【連載#4】ローンを多く受けるのと少なく抑えるのとどちらがいい?
【連載#5】物件を持っておくか売却すべきかはどう判断する?
【連載#6】銀行っていっぱいあるけど、どこに相談すればいい?
【連載#7】「融資が通りやすい物件、通りにくい物件ってあるの?」
【連載#8】融資を受けやすい人、受けにくい人を教えて
【連載#9】「慣れていない人は、どうやって銀行に相談すればいいの?」

 

<著者プロフィール>
広瀬智也(ひろせ・ともや)
1972年北海道札幌市生まれ。1995年に東京大学法学部卒業後、日商岩井(現、双日)の法務部、上海法人にて勤務。2000年、株式会社エリアクエストにて、事業用不動産の賃貸仲介業務を行い、同社の取締役として東証マザーズに上場。2004年、不動産事業を手がける株式会社不動産投資アドバイザーを創業。
現在は、株式会社バンブーインターナショナルにて、不動産・飲食事業を行う。2014年、一般社団法人相続オールインワンの理事に就任。個人・法人で賃貸不動産を所有してきた経験から、不動産経営に関するコンサルティングやセミナーを行う。著書・翻訳書に、『家賃収入が月収を超える!』(小社)、『キャッシュフローを生む不動産投資』(かんき出版)、『世界の不動産投資王が明かす お金持ちになれる「超」不動産投資のすすめ』(東洋経済新報社)などがある

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