【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介
不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。
著者 広瀬智也
すでに物件を持っている大家さんから、よくこんな相談を受けます。
「最初はよかったのに、最近はどうもあまり儲けが出ていない気がする……」
なぜそうなるのか。結論から言いますと、キャッシュフローが原因です。キャッシュフローが下がっていて、悪くするとマイナスになっているからです。
ではなぜそうなるのか? 要因の一つとしてはローンの返済方式が挙げられます。
ローンの返済には「元利金等」と「元金均等」という2つの方式があります。
元金均等とは、その言葉の通り、元金を返済回数で分割し均等に返済する仕組みです。一方、元利均等は毎月の支払い額が一定で、年々、返済元金が大きくなっていく方式です。つまり、あとになればなるほど返済元金が増えて、キャッシュフローが悪くなるのです。一般的な住宅ローンはこの元利均等です。
第二の要因としては、減価償却費の減少が挙げられます。新築の場合は、建物とは別に「付帯設備」という形で資産計上し、その設備は耐用年が短いのです。しかも、建物の部分は、「定額法」による償却で毎月決まった額を減価償却していくのに対し、付帯設備の部分の償却方式は「定率法」と呼ばれ、下のグラフのように最初に償却額が大きく、あとになるほど小さくなります(ただし、2016年4月1日以後に取得する建物の付属設備については「定額法」に一本化されます)。したがって最初は償却額が大きいのでいいのですが、年々減価償却費が減り、キャッシュフローが悪化していくのです。
▽100万円の設備を8年かけて償却する場合
①定額法:毎年同じ額だけ減価償却費が発生する
②定率法:毎年同じ率で減価償却費が発生する
また第三の要因としては、建物の経年があります。年々古くなることで、空室の期間が長くなったり、家賃を下げたりしなくてはいけなくなります。これらのことが重なって経営が悪化していくというわけです。
しかも、所得税を納めるのは一般に年に1回ですから、正しいキャッシュフローが把握しづらい場合もあります。なんとなく「まあ銀行残高は増えているかな」と思っても、実際は所得税を支払ったら手元にお金が残らなかった……ということにもなりかねません。
減価償却費はどれくらいか、税金はいくら払っているか、キャッシュフローはプラスになっているか、常に把握しておかなければなりません。
私は毎月1回、試算表を税理士さんに出してもらってチェックするようにしています。常に自分の状況を把握し、先手先手で適切な対策を打っていけるようにしたいですね。
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<著者プロフィール>
広瀬智也(ひろせ・ともや)
1972年北海道札幌市生まれ。1995年に東京大学法学部卒業後、日商岩井(現、双日)の法務部、上海法人にて勤務。2000年、株式会社エリアクエストにて、事業用不動産の賃貸仲介業務を行い、同社の取締役として東証マザーズに上場。2004年、不動産事業を手がける株式会社不動産投資アドバイザーを創業。
現在は、株式会社バンブーインターナショナルにて、不動産・飲食事業を行う。2014年、一般社団法人相続オールインワンの理事に就任。個人・法人で賃貸不動産を所有してきた経験から、不動産経営に関するコンサルティングやセミナーを行う。著書・翻訳書に、『家賃収入が月収を超える!』(小社)、『キャッシュフローを生む不動産投資』(かんき出版)、『世界の不動産投資王が明かす お金持ちになれる「超」不動産投資のすすめ』(東洋経済新報社)などがある