2022.05.26
不動産投資

不動産の担保評価|評価が決まる仕組み、ローン利用の流れ

物件の「担保評価」は、特に不動産担保ローンにおいては、金融機関が融資額を決定する重要な判断材料となります。したがって、不動産担保ローンを利用する場合は、担保評価が決まる仕組みやローンを組む流れを把握しておくことが大切です。本記事で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

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不動産の担保評価とは

不動産の担保評価とは、投資対象となる不動産の物的担保としての評価です。物的担保とは、債務者が債務を返済できなくなった場合に、その物を換金することで債務を回収できるだけの価値のあるものを指し、物品のほか土地や建物といった不動産も対象になります。

したがって、担保評価が高い物件であるほど高値で売却できるものと判断され、担保として強い価値を持ちます。なお、その不動産を売却した場合にいくらで売れるのかを算出した金額のことは「担保評価額」といいます。

不動産の担保評価が決まる仕組み

不動産の担保評価は、基本的に「市場価格×掛目」で決まります。市場価格とは、不動産独自の評価方法で算出された価格であり、実際に物件を売却した場合に取引される価格に近い金額になります。

掛目とは、金融機関が融資を行う際の担保に掛ける一定の比率であり、不動産の場合は70%程度が目安となっています。しかし、ローンの種類や保障期間の有無、金融機関によって数値は異なるため、高い融資を受けたい場合は複数の金融機関を比較することをおすすめします。

また、金融機関は不動産の担保評価だけで融資額を決めるわけではなく、年収や勤務先、家族構成などといった個人の属性も考慮します。そのため、担保評価が低くても、属性をはじめとしたその他の要素で高い信用を得られれば、希望通りの融資額を受けられる可能性はあります。

不動産の市場価格を算出する方法

前章で説明した通り、不動産の担保評価を知るためには、まず市場価格を把握しなければなりません。ただし、不動産の評価方法は土地と建物で異なるため、それぞれの違いを理解しておく必要があります。

土地の評価方法

土地の評価は、主に路線価や基準地価を使って算出されます。路線価と基準地価はそれぞれ評価する機関や評価時期などが異なるため、内容をよく理解しておく必要があります。以下に違いをまとめます。

  路線価 基準地価
評価する機関 国税庁 都道府県
評価時期 毎年1月1日時点 毎年7月1日時点
公表時期 毎年7月1日 毎年9月下旬
調査地点 路線(道路)に面する土地の1m2当たりの価格 「基準地」1m2当たりの価格

 
路線価は基本的に、相続税や贈与税などの税金計算のために使用する指標であり、時価と乖離しているケースも少なくありません。一方、基準地価は都道府県が国よりも細かい地点を調査して、現状に即した価格で公示している価格です。しかし、こちらも必ず時価に等しいとは限らず、乖離する可能性は考えられます。

建物の評価方法

建物の評価方法には、積算法と収益還元法の2種類があります。それぞれの違いを解説します。

積算法

積算法とは、建物の再調達原価や法定耐用年数などを考慮して評価する方法です。具体的には以下の計算によって算出されます。

積算法の評価額=再調達原価×延床面積×残存年数÷法定耐用年数

 
再調達原価とは、その建物を再調達する場合に想定される価格のことで、路線価や類似物件の価格など、さまざまな視点から計算されます。

法定耐用年数は、建物の用途や構造ごとに定められています。マンションやアパートといった住居用の建物の耐用年数については以下をご覧ください。

【住居用建物の構造ごとの法定耐用年数】

構造 法定耐用年数(年)
木造・合成樹脂造 22
金属(鉄骨)造 ※(骨格材の厚み4mm超) 34
金属(鉄骨)造 ※(骨格材の厚み3mm超、4mm以下) 27
金属(鉄骨)造 ※(骨格材の厚み3mm以下) 19
鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造 47

参考:国税庁 – 主な減価償却資産の耐用年数表

木造・合成樹脂造は22年、鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造は47年というように、構造のグレードが上がるほど耐用年数が上がっていきます。また、残存年数とは法定耐用年数から築年数を引いた数値のことです。

収益還元法

収益還元法とは、不動産の収益性に着目した評価方法です。収益還元法は2種類あり、一定期間の収益を還元利回りによって還元することにより収益価格を算出する「直接還元法」と、将来発生する収益と売買価格を、その発生時期に応じて現在価格で割り引くことで価格を求める「DCF法」に分かれます。DCF法の計算式はやや複雑ですので、ここでは直接還元法の計算式を紹介します。

直接還元法の評価額=年間の収益÷還元利回り

 
年間の収益とは、不動産の家賃収入から経費を引いた収益を表します。また、還元利回りとは「キャップレート」とも呼ばれ、物件の資産価値を評価する手法の1つで、物件から得られる利益と将来の利益を算出する際の指標となる数値となります。

還元利回りの計算は難解ですので、具体的な計算式についてここでは割愛しますが、類似不動産との取引事例を比較して求める方法が一般的であり、大体5~8%程度が平均値となっています。

◆還元利回りに関する詳しい解説は、以下の記事を参考にしてください。
キャップレート(還元利回り)の基本と、自分で予想する方法

積算法と収益還元法の使い分けについて

積算法と収益還元法は、どちらがより正確というわけではないうえ、それぞれにメリット・デメリットがあるため、状況に応じて使い分ける必要があります。基本的に、積算法は不動産の所有者が価格を推定するときに使うことが多い一方、収益還元法は不動産経営において使うことが多くなっています。

したがって、不動産経営を考えている人は、収益性に着目した評価方法である収益還元法で計算してみることをおすすめします。

◆積算法の考え方、計算法、シミュレーションなどを紹介しています。
積算価格とは|計算方法とシミュレーション、収益価格との違い

◆収益還元法の特徴や計算法については、こちらの記事をご覧ください。
収益還元法とは|積算法との違いや計算式をわかりやすく解説

担保評価が低い=融資が不利になるわけではない

担保評価は不動産の融資額に影響します。しかし、担保評価が低いことによって融資条件が不利になるとは限りません。

重要であるのは、借り入れをする金額は担保評価額に対してどの程度の割合なのか、ということです。担保評価額に対して借り入れをする金額の割合が少なければ、金融機関のリスクは低減されます。したがって、担保評価額が低いことは、必ずしも融資条件を不利にすることに結びつきません。

また、ローンの審査では担保評価以外のさまざまな要素が考慮されます。特に、年収や勤務先、家族構成など、個人の属性が高い人は金融機関の信用を得やすいため、審査では有利になる可能性が高いといえます。

不動産担保ローンを利用する流れ

不動産担保ローンを利用するにあたり、ここでは準備するものや、ローンを開始するまでの期間について説明します。以下にローンを利用する場合の流れをまとめます。

相談、申し込み

まず、金融機関へ相談、申込みを行うことから開始します。相談の段階では、審査に必要な書類や審査期間、金利などを詳しく尋ねるようにしましょう。申込み方法は金融機関によって異なりますが、ホームページからの申込みと、電話による申込みのどちらにも対応していることが多いです。

不動産担保ローンの申込みは「仮申込み」と「本申込み」の2段階に分けて行われるのが一般的です。ただし、仮申込みは、正式に審査の申込みをする前に融資が下りそうかどうか事前に確認しておきたいといった利用者の要望に応えるために金融機関が設けていることから、相談も兼ねているものになります。

また、住宅ローンなどの審査ではほとんどの場合、仮審査の完了後に本審査という流れになりますが、不動産担保ローンでは仮申込みをローンの仮審査と位置づけるケースがあります。この場合、仮申込みが完了して本申込みを行えばすぐに本審査へと移ることができるため、融資を受けるまでの期間を短縮できます。

不動産担保ローンの本申込で提出する書類は以下の通りです。金融機関によって異なることもあるため事前に確認しておく必要はありますが、参考までに一般的に必要となる書類を以下にまとめます。

・不動産登記簿謄本、公図、地積測量図
・売買契約書、重要事項説明書
・本人確認書類
・源泉徴収書
・実印・印鑑登録証明書
・収入証明書 など

 
このうち、不動産担保ローンにおいて重要な書類は「不動産登記簿謄本、公図、地積測量図」などの担保評価をするための書類です。ただし、これも金融機関によって必要書類の種類が異なることがあります。仮申込み後にどのような書類が必要なのかが分かりますが、中には入手するのに時間がかかるものもありますので、漏れがないよう準備するようにしてください。

審査

本申込みが完了すると、金融機関の審査の段階に移ります。審査では、不動産の担保評価額、個人の属性の精査が行われ、融資可能な金額・融資期間・金利などの詳細が正式に決定されます。

基本的には、仮審査(仮申込み)の段階でどのくらいの融資が受けられるか、ある程度の目安が分かりますが、担保評価が予想よりも低かった場合や、利用者に他の借金(住宅ローン、車のローンなど)があり返済能力に問題があると判断された場合は、想定通りの融資を受けられない可能性があります。そのため、ローンを申込む場合は、審査前にできるだけ信用力を高める努力をすることをおすすめします。

たとえば、担保評価や個人の属性は審査前に改善するのは困難ですが、借金の支払いに関しては、まとまった資金が残っているのならば事前に返済しておくほうが望ましいといえます。審査の結果までは1~3週間ほどを要するのが一般的ですが、金融機関によっても違いがあるため、事前に問い合わせて確認しておくようにしましょう。

契約

本審査を通過して、金融機関から融資金額や金利などの詳しい説明を受けたら、いよいよ正式に契約を結ぶことになります。契約時に提出する書類は、審査時に提出したものと重複するものもありますが、一般的に必要となる書類は以下の通りです。

・住民票
・印鑑証明書
・不動産の登記簿・謄本
・不動産の評価証明書
・審査後に金融機関から受け取る書類

 
契約時には、印紙税・登記費用・金融機関の事務手数料などがかかる点を覚えておきましょう。特に、事務手数料は融資額によってはかなり高額になる傾向があります。場合によっては数十万円かかることもあるため、事前準備が必要です。

契約書を取り交わす段階で、金融機関の担当者から詳しい説明を受けることになります。この際、契約後のトラブルやクレーム防止のため、各項目を一つ一つ読み上げて丁寧な説明がなされるのが基本ですが、担当者によっては細かい事項を割愛する場合があるため、自分の目で確認する意識を持つようにしてください。

担保評価の仕組みを理解しよう

不動産担保ローンは他のローンとは少し異なり、不動産の担保評価がもっとも重視される傾向にあります。そのため、本記事で紹介したような担保評価が決まる仕組み、計算方法などをできるだけ理解したうえで利用するようにしましょう。それに加え、個人の属性や返済能力もローンの審査には大きく影響するため、自分自身の信用力を意識することも大切です。

また、実際にローンを組む場合の流れや必要書類は金融機関によって異なるため、事前によく確認しておくようにしてください。必要書類の中には取り寄せに時間がかかるものもあるので、スケジュールに余裕を持って進めていくようにしましょう。

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