2021.02.10
不動産トピックス

【最近話題のかぼちゃの馬車】サブリース契約の落とし穴とは

2018年4月9日、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する株式会社スマートデイズが、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。表向きは入居者保護のために民事再生法を申請したとのことでしたが、5月15日にはオーナーの弁護団が刑事告発へ踏み出すことを発表しました。なぜこのような事態に発展してしまったのでしょうか。一連の流れを追いながら、サブリース契約の落とし穴について考えてみましょう。
 

かぼちゃの馬車問題とは!?

「かぼちゃの馬車」とは、スマートデイズが手掛けていたシェアハウスブランドです。そのビジネスモデルは、いわゆる「サブリース契約」によるものでした。サブリース契約とは、貸主(オーナー)から運営会社が物件を一括で借り上げ、入居者に転貸する契約です。

一括借り上げ後は、家賃収入から管理手数料などを差し引いた分が貸主へ支払われます。貸主側は物件の管理や空室対策、家賃の回収などの面倒な業務を省略できるというメリットがあります。また、契約書の内容によっては満室時の7割から8割程度での家賃保証が行われるため、常に一定の家賃収入を得られるというケースもあります。

サブリース契約は、不動産投資のリスクである空室や家賃滞納を回避しつつ収入を得られることから、「何もせずに家賃収入が得られる」という触れ込みで宣伝されることがありました。しかし、本来ならば土地所有者の節税対策として、一定の資産を保有する資産家向けの不動産投資と考えるのが適切でしょう。

一方、かぼちゃの馬車を運営するスマートデイズでは、不動産を一切保有していないサラリーマン層に銀行融資によって土地や建物を購入させ、一括借り上げまで行う仕組みを採用。土地や建物の購入を伴うため、当然初期投資額が大きくなります。さらにサブリース契約を目的とした融資は、通常の購入より費用が高くなりがちで、相場の3割から5割増しに達することが通常です。そのため、かぼちゃの馬車のオーナー達は、融資元であるスルガ銀行から巨額の融資を受けて物件を購入していました。ただし、割高な投資とはいえ、家賃収入(=サブリース賃料)さえしっかり支払われていれば問題はありません。

しかし、かぼちゃの馬車では、実際の入居率が4割程度で、賃貸経営としては致命的な数字でした。当然、オーナーに支払うサブリース賃料は到底まかなえず、新たに物件を売った利益を家賃収入に回すという自転車操業を続けていたのです。

やがて自転車操業は限界に達し、オーナーへのサブリース賃料の支払いが停止し始めます。これが波紋を広げ、国土交通省や消費者庁がサブリース契約の注意喚起を促す事態に発展。さらに融資元であるスルガ銀行の担当者による不正融資疑惑や、破産ではなく民事再生法を適用したことが火に油を注いでいます。また、かぼちゃの馬車に投資したオーナー達は、巨額の負債を背負った上にサブリース賃料の支払いを受けられず、返済に困窮しています。

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サブリース契約で気を付けること

前述したようにサブリース契約は、オーナーが物件を維持・管理する手間を省きつつ家賃収入を受け取れる仕組みです。特に「家賃保証」は、不動産投資の肝でもある「収益の安定化」につながるため、非常に魅力的に見えるかもしれません。しかし、この家賃保証こそが、サブリース契約で最も気を付けるべきポイントなのです。

○家賃保証は「家賃の絶対額」を保証するわけではない
サブリース契約の広告では「○○年の家賃保証」などといった、長期にわたる安定収入を確約するような文句が散見されます。また、「満室時家賃の8割を保証」と聞けば、常に一定の金額が懐に入ると勘違いしても仕方ありません。

しかし実際には、契約当初の家賃が継続的に保証されるケースは稀なのです。例えば20年から30年の長期契約の場合、2年から3年おきに家賃の改定を迫られます。サブリース会社がオーナーに対して、借地借家法で認められている「賃料の減額請求」を行い、契約期間中であっても家賃の見直しによって保証額を引き下げるのです。元の家賃が安くなるわけですから、オーナーに支払われるサブリース賃料(保証額)も減少していきます。

○臨時収入が入らない
さらにサブリース契約では、敷金や礼金、更新料といった臨時収入も入ってきません。これらは全て、入居者と賃貸借契約を結んでいるサブリース会社のものになるのが通常です。

○手数料が割高である
加えて、「管理委託」「滞納保証」「空室保証」といったほかの委託サービスに比べると、手数料が大きいことにも気を付けなくてはなりません。これらは家賃の5%、もしくは契約時に30%という手数料で委託できますが、サブリース契約は家賃の20%前後が常に差し引かれます。したがって、サブリース契約は「割高な手数料を支払っても手間を省きたい」という徹底した覚悟がなければ、慎重になるべき契約です。

○契約書は要チェック!
もしどうしてもサブリース契約を結ぶならば、「契約書に記載されている家賃が不当に低いものではないか」「家賃の改定が許容できる範囲のものか」などをチェックしましょう。また、「家賃保証に免責期間(家賃保証をしない期間)はないか」「原状回復費用や修繕費を誰が負担するのか」なども合わせて確認したいところです。サブリース契約は、オーナーが貸主、サブリース会社が借主であり、「借地借家法」によって強力に借主が保護されます。
つまり、貸主側からは簡単に解約できない性質のものなのです。事前に契約書を隅々までチェックし、リスクを把握した上で契約を結ぶようにしましょう。

シェアハウス経営で注意すべき点

サブリース契約のほかに、シェアハウス経営という観点からも注意点をまとめておきましょう。

○初期投資額が大きくリスク管理が難しい
かぼちゃの馬車問題でもわかるとおり、シェアハウス経営には高額な初期投資が必要です。シェアハウスは複数人が半共同生活を行う住宅ですから、土地・建物ともに一定以上の規模であることが必須です。
つまり、ワンルームマンション投資のような少額投資は難しいと言えます。

投資は初期投資額が大きくなるごとに回収までの期間が長くなり、リスク管理も難しくなります。したがって、不動産投資の初心者がいきなりシェアハウス経営に乗り出す、というのはあまりおすすめできません。

○入居者間のトラブル発生率が高い
シェアハウスでは、通常の集合住宅よりも濃密な人間関係が構築されやすく、その分だけトラブル発生のリスクが高まります。
サブリース契約ではオーナーが入居者間のトラブルに介入する必要はないものの、トラブル続きの物件は評判が悪化し、入居率の低下につながるでしょう。
入居率が下がって収益が悪化すれば、サブリース会社は家賃保証額を下げる対策に出てきます。
結果的に、オーナーの取り分は減少してしまいます。

○適法性維持に費用がかかる
シェアハウスには、通常の一軒家を改築しているケースがあります。このとき、建築基準法や消防法への対応のために費用がかかる可能性があるのです。例えばドアや窓が一切ない部屋が出てくれば消防法に触れてしまいますし、火災報知機の設置も必要です。あらかじめこういった費用がかかる可能性も知っておくべきでしょう。

「不労所得」に惑わされないことが大切

不動産投資は、うまく回転すれば不労所得を得ることが可能な堅実な投資です。。特に、何の手間もかけずに一定の家賃収入が入ってくるとなれば、つい興味を持ってしまうのも仕方ありません。しかし、現実には「お金を出したらあとは放置で不労所得」とはいかないものです。事実「サブリース契約」や「シェアハウス経営」は、一見初心者でも簡単に収益を上げられそうですが、これだけのリスクを内在しています。綿密な事業計画と資金繰り、リスクの洗い出しを怠らず、安定経営を目指していきましょう。

小林 弘司(不動産コンサルタント)
▼プロフィール
不動産投資家。楽待の「8人の成功者による不動産投資ノウハウ完全版 8つのステップ 2014」の講師に約2万人の投資家の中から選出される。
ゼロから不動産ビジネスを始め、現在、東京都内に7棟(新築2棟、中古5棟)のビル・アパート・マンションとコインパーキング・月極駐車場を複数経営、自主管理している。稼働率は、ほぼ満室の98%。
東京生まれ、東京育ち。大卒後、海外取引メインの商社、外資系マーケティング会社などを経て、2011年サラリーマンを卒業、独立。
▼保有資格
MBA(経営管理修士)、中小企業診断士、1級販売士、GCS認定コーチ、英検準1級

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