2021.06.21
不動産トピックス

「IT重説」の時代が本格到来。賃貸オーナーにとってのメリットとこれからの戦略

賃貸契約時に必要な重要事項説明を、オンラインで完結できることをご存じの賃貸オーナーは多いかと思います。このようにオンラインで重要事項説明を行うことは「IT重説」と呼ばれ、コロナ禍による対人接触を少なくする流れからも普及が進んでいます。しかし、実際にIT重説を行ったことがない、聞いたことはあるがよくわからないといった方が多いのも事実です。

そこで今回はこのIT重説についてその基本と、賃貸オーナーにとっての意外なメリット、さらには今すぐにでも導入するべき理由と時代背景について解説します。

IT重説(オンライン重説)とは?

IT重説とは、2017年10月から本格運用が始まったオンライン型の重要事項説明です。それまでは宅建資格者から対面で受けることが義務づけられていた重要事項説明をオンライン化できるというもので、ビデオ通話が可能な仕組みがあれば対面ではなくても重要事項説明をすることが可能になりました。

IT重説の導入が提案され、社会実験が行われていた当時の目的は利便性の向上でした。しかし、2020年に起きたコロナ禍では対人接触を極力減らすという観点からリモートワークやリモート会議などオンライン化の流れが起き、あらためてIT重説の価値が評価されることとなりました。

また、当初は単に重要事項の説明をオンライン化することがIT重説と定義されていましたが、電子署名を活用することによって書面のやり取りも電子化することが可能になり、完全オンライン化の流れがすでに始まっています。

IT重説のメリット3つ

賃貸オーナー目線で、IT重説のメリットを3つの項目に整理しました。意外なものも含めて賃貸オーナーには多大なメリットがあります。

(1)忙しい人でも手軽に重説ができる
IT重説が当初目指していたメリットが、利便性の向上です。宅建資格者と入居者の双方が同じ場所に集まる必要がなく、好きな場所で手軽に重説をすることができます。

(2)遠方の入居者に来てもらう必要がない
遠方の人が賃貸住宅に入居する場合、物件の内覧時だけでなく契約時にも重説のために遠方から足を運ばなくてはならなかったものが、契約時の重説はIT重説に置き換えることができ、遠方からの入居者にとって利便性が大きく向上しました。これは賃貸オーナーにとっても大きなメリットなので、詳しくは後述します。

(3)「新しい生活様式」にマッチしている
コロナ禍によって推奨されている「新しい生活様式」ではソーシャルディスタンスの確保が求められています。IT重説は対面を必要としないためこれにマッチしています。IT重説が提案された当時は想定していなかった意外なメリットですが、アフターコロナの時代においてもIT重説が定着する大きな要因のひとつとなるでしょう。

こんなにカンタンなIT重説の方法

「IT」という言葉のニュアンスからIT重説を導入するのは難しいことではないかとお感じかもしれませんが、実際にはとても簡単です。しかも、実際に重説を行うのは管理会社や仲介会社であることが多いので、賃貸オーナー自身が何か特別な機材を用意する必要もないでしょう。

IT重説はオンラインでビデオ通話ができる仕組みがあれば可能なので、リモートワークに多用されている「ZOOM」や「Skype」などを使った方法が一般的です。ほかにも「LINE」や「カカオトーク」などスマホ環境でのメッセージアプリに実装されているビデオ通話機能を使っても問題ありません。パソコンとWebカメラを用いた方法、スマホだけで行う方法、いずれもビデオ通話が可能であればIT重説に用いることができます。

このほか、IT重説を行うためには以下の項目を遵守することが求められています。

(1)宅地建物取引士及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像を視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること。

(2) 宅地建物取引士により記名押印された重要事項説明書及び添付書類を、重要事項の説明を受けようとする者にあらかじめ送付していること。

(3)重要事項の説明を受けようとする者が、重要事項説明書及び添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること並びに映像及び音声の状況について、宅地建物取引士が重要事項の説明を開始する前に確認していること。

(4)宅地建物取引士が、宅地建物取引士証を提示し、重要事項の説明を受けようとする者が、当該宅地建物取引士証を画面上で視認できたことを確認していること。
(引用:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(平成13年国総動第3号)(抄)第三十五条第一項関係)

IT重説時代に賃貸オーナーが心がけたいこと

利便性の向上に加えてコロナ禍によるオンライン化の流れによって、IT重説へのシフトは今後さらに進むでしょう。賃貸オーナーとしてはこの流れをしっかりと理解して、IT重説時代の入居者ニーズに応えていくことが重要です。実際にIT重説を行うのは管理会社になるので、管理会社選びにおいてもIT重説に対応していることは必須となるでしょう。

もうひとつ、IT重説時代に向けて留意しておきたいのは遠方の入居者に対する競争力強化です。大都市圏の物件を運用している賃貸オーナーにとって、遠方の入居者は大きなマーケットです。遠方の人が物件選びと入居の手続きをするのにあたって移動回数を減らしたいのが本音ですが、以前は内覧時と契約時の2回にわたって移動をする必要がありました。内覧時に賃貸契約をしたとしても、最低1回は移動が必要です。

IT重説はそんな遠方の人にとってとても魅力的なサービスです。この流れを受けて物件の内覧もオンラインで完結できるよう、Webでの見せ方に工夫を凝らすサービスも多くなりました。スマホのアプリからテレビ電話機能を使って、遠隔地でも内見ができるようにするなどです。

今後は入居まで一度も来訪せずにWeb内覧とIT重説によって入居までの手続きを完結する流れも強まると考えられます。IT重説だけでなく写真や動画などを多用して「リモート部屋探し」に対応できる態勢づくりが、客付けにおける競争力強化につながっていくでしょう。

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