2022.06.21
不動産トピックス

所有権移転登記|費用と必要書類、自分で行う流れを解説!

所有権移転登記は、不動産の所有権が自分にあることを第三者に証明する時に必要となる大変重要なものです。司法書士に依頼することもできますが、自分で手続きをすることで費用を抑えることができます。ここでは、所有権移転登記にかかる費用と必要書類、さらに自分で登記を行う流れを解説します。

【著者】水沢 ひろみ

 

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「所有権移転登記」とは?

所有権移転登記とは、売買や相続など、何らかの原因で不動産の所有権が移転した時に、取引の関係者以外の人に対して誰が所有者なのかを明らかにするために行われる手続きです。

不動産の登記には、「表示の登記」と「所有権移転登記」があります。

表示の登記とは、新しく建物を建てた場合など、まだ登記がされていない不動産に対してはじめて行う登記のことで、これによってどこにどのような不動産があるかが公に分かることになります。表示の登記は建物完成後1カ月以内、または所有権を取得した日から1カ月以内に申請しなくてはならない定めがあり、反すると罰則が科されます。

これに対して、所有権移転登記には原則として申請期限は設けられていませんし、登記自体は必ずしも所有権移転の要件ではないので、不動産の所有権を取得しても登記する・しないは自由です。ただし、不動産の登記を備えていないと、先に登記をした者に所有権を主張できないなど大きな不利益を被る可能性がありますので、所有権を取得すると同時に登記することが一般的です。

所有権移転登記はどのようなときに必要?

不動産の所有権が移転するのは、売買契約や贈与を行うなどといった「当事者同士の意思が合致した時」とされるのが民法の原則です。売買の場合であれば、売買契約の成立によって所有権は移転することになります。

しかし、不動産の正式な所有者が誰であるのかは、外形からでは判断できません。そこで、不動産の取引の安全のために登記制度が設けられ、不動産の所有者が取引の当事者以外の第三者に自分の所有権を主張するには登記を備えなくてはならない、とされているのです。

では、このような所有権移転登記が必要とされるのは、具体的にはどのようなケースなのでしょうか?売買や相続、贈与、離婚による財産分与など、代表的なケースで解説していきましょう。

不動産を売却した場合、購入した場合

先ほど説明したように、不動産を購入する場合は、売買契約が成立すれば買主は契約で定めた日に所有権を取得することができます。契約の当事者である売主に対して、買主は登記がなくても有効に所有権を主張することが可能となります。

しかし、買主が登記を備えない間に、不動産の売主が他の人にこの不動産を二重に売り渡してしまうという恐れがあります。この場合、後から譲り受けた人が先に登記を備えてしまうと、先に購入した人は登記を備えた譲受人に対して所有権を主張できなくなってしまうのです。

不動産の売買ではこのようなリスクを避けるために、ほとんどの場合、代金の支払いと所有権移転の登記は同時に行われることが一般的となっています。

◆マンション経営には、本記事のテーマである登記のほか、いくつかの初期費用がかかります。こちらの記事ではマンション経営の初期費用について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
マンション経営の初期費用|シミュレーションと抑えるコツ

不動産を相続した場合

不動産を相続した場合は、所有権移転登記を行うことで、誰が不動産の所有者となったのかを明らかにする必要があります。

今までは相続による所有権移転登記は原則として任意とされていたため、相続が発生しても登記がなされないまま放置されているケースが多くみられていました。その結果、相続発生後に登記をしないまま長期間が経過してしまい、相続関係が複雑になり、誰が所有者なのか分からない「所有者不明」の土地が増加して社会問題となっていました。

そこで、2021年に民法をはじめとした法律改正が行われ、相続により不動産の所有権を取得した場合には、2024年4月1日以降は登記が義務付けられることになりました。詳しくは法務省の「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」をご覧ください。

参考:法務省 – 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)

不動産を贈与された場合

不動産の贈与を行う場合、特に決まった形式があるわけではないので、「あげましょう」「もらいます」というように当事者同士の意思が合致すれば贈与は成立します。しかし、このような口約束だけで成立した贈与は「書面によらない贈与」と呼ばれ、当事者の一方から撤回することができます。

これを防ぐには、贈与についての契約書を作成して書面を残すか、不動産であれば所有権移転の登記をする必要があります。「書面によらない贈与」も履行が終わった部分は撤回できないとされているのですが、所有権移転の登記をすることで、贈与契約の履行が済んだものとみなされるからです。

また、売買契約の時と同様に、受贈者が登記を備えないでいるうちに贈与者が他の人に売却するなどし、その人が先に登記を備えると、不動産は登記を備えた人のものになってしまいます。このようなトラブルを避けるためにも、不動産を贈与された場合にはきちんと所有権移転の登記をすることをおすすめします。

離婚により財産分与する場合

所有権移転の登記には不動産の譲渡人の協力が必要となりますが、離婚による財産分与で不動産の所有権を譲り受ける場合、離婚した後に移転登記を申請することになります。

離婚した後でも相手方が誠実な対応をしてくれることを信じたいものですが、現実としてなかなか難しいケースもあります。このような場合に備えて、離婚届を提出する前の段階から登記手続きに必要な書類を準備しておくなど、慎重に進める必要があります。

所有権移転登記を行う方法

所有権移転登記の申請手続きは、司法書士へ代行依頼する方法が一般的ですが、自分でも行うことができます。自分で手続きを行う場合には、2つ後の章で詳しく紹介する費用のうち、司法書士への報酬は発生しません。多少手間がかかりますが、時間に余裕があれば以下の手順で手続きをしてみてください。

登記の申請方法には「書面による方法」と「オンラインによる方法 」の2つがありますが、ここでは「書面による方法」の申請の仕方を解説します。

ステップ1:申請書を作成する

まず、申請書を作成することからはじめましょう。「不動産登記の申請書様式について」という法務局のサイトがありますので、そこに記載されている「登記申請書の様式及び記載例」の中から、該当する登記の申請書をダウンロードします。そこに記載されている記載例にしたがって、申請書に必要事項を記入していきます。

参考:法務局 – 不動産登記の申請書様式について

ステップ2:必要書類を集める

次に、申請書に添付する必要書類を集めます。登記の種類やそれぞれの状況によって必要となる書類は異なります。次章の「所有権移転登記の必要書類一覧」の内容を参考にして、過不足のないように揃えていきましょう。

ステップ3:法務局へ提出する

必要な書類が揃ったら、申請書とともに対象の不動産を管轄する法務局へ提出しましょう。管轄する法務局が不明の場合には、以下を参照してください。

参考:法務局 – 管轄のご案内

申請書を受け付けると、法務局の職員が申請内容や添付書類について審査を行います。不備があれば職員の指示に従い補正が必要となります。

ステップ4:登記識別情報通知書を受け取る

登記手続きがが完了すると、登記完了証と登記識別情報通知書を受領することができます。登記完了証は、登記が完了したことを知らせる通知であり、特に何らかの法律的効果を発生させるものではありません。一方、登記識別情報通知書は、従来の登記済権利証に代わる非常に重要なものとなります。受領後は十分に気を付けて保管しましょう。

これらを受領する方法には、窓口で受け取る方法と郵送で受け取る方法があります。

窓口で直接受け取るには、

  • 登記申請時に付与された受付番号
  • 身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 登記申請書に捺印した印鑑
  •  
    が必要ですので、忘れずに持参してください。

    【注意!】
    登記完了までの日数は、申請する登記の種類や法務局の混雑の程度によって3日から2週間などと開きがあるので、事前に窓口へ確認してから受け取りに行くとよいでしょう。

     
    登記完了証を郵送等で受領するには、登記申請書に「送付の方法により登記完了証の交付を希望する」旨と、送付先の住所などの必要事項を記載し、郵便切手を提出します。原則として書留郵便等での郵送となりますが、費用を負担すれば速達や本人限定受取郵便での郵送もしてもらえます。

    登記識別情報通知書も郵送を希望する場合には、登記完了証と同様に登記申請書にその旨の記載をすれば郵送での交付が可能ですが、この場合には本人限定受取郵便での受け取りとなりますので、その分の切手代の負担が必要です。

    【注意!】
    登記識別情報通知書は、登記の完了から3カ月経過すると破棄されてしまいますので、期限内に受け取るように気を付けてください。

    所有権移転登記の必要書類等一覧

    所有権移転登記は、売買・贈与・相続・財産分与のそれぞれで必要書類が異なるうえ、司法書士に依頼する場合は司法書士への委任状も必要になるなど、複数の書類を揃えなくてはなりません。さらに、必要となる書類の種類やケースによって、当事者全員の分を用意しなければならない場合や、当事者のどちらかのものを用意する場合もあります。

    まずは必要書類について分かりやすいように一覧にまとめたものを記載し、続く章でそれぞれの書類についての詳しい説明を行いますので、ぜひご確認ください。

    【全てのケースで必要な書類(以下①の1-1~1-5で解説)】

    司法書士への委任状
    (司法書士に委任する場合 ※1)
    全員の分
    登記済権利証または登記識別情報 売主・贈与者・財産を分与する人・相続人の分
    印鑑証明書(※2)および実印 売主・贈与者・財産を分与する人・相続人の分
    固定資産評価証明書 売主・贈与者・財産を分与する人・相続人の分
    身分証明書 全員の分
    新たに所有者となる者の住民票の写し 新たに所有者となる者の分
    (現住所が登記簿の記載と異なる場合、全員の分)

     
    ※1 所有権移転登記の手続きを司法書士に委任する場合には、司法書士への委任状が必要となります。司法書士が作成した委任状に、関係者がそれぞれ署名、押印して手続きの代理を委任します。

    ※2 相続のケースでは、遺言書や法定相続分にしたがって登記する場合には、印鑑証明書は不要となります。

    【ケースごとに必要となる書類(登記原因証明情報)】

    売買のケース……(以下②で解説 売買契約書等
    贈与のケース……(以下③で解説 贈与契約書等
    協議離婚のケース……(以下④の1-1で解説 離婚協議書
    + 離婚の記載のある戸籍謄本
    裁判上の離婚のケース……(以下④の1-2で解説 調停調書、審判書、和解調書等
    + 離婚の記載のある戸籍謄本
    相続:遺言のあるケース……(以下⑥で解説 公正証書遺言もしくは自筆証書遺言など遺言書
    (自筆証書遺言の場合には検認調書も必要)
    相続:相続人間の協議によるケース……(以下⑦で解説 遺産分割協議書
    相続:調停または審判によるケース……(以下⑧で解説 調停や審判の調書

     
    【相続のケースに必要なその他の書類】

    被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)……(以下⑤の1-1で解説 被相続人の分
    被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票……(以下⑤の1-2で解説 被相続人の分
    戸籍謄本(抄本) ……(以下⑤の1-3で解説 相続人全員
    相続関係説明図……(以下⑤の1-4で解説

    ➀全てのケースで必要となる書類

    全てのケースで必要となる書類は複数ありますので、それぞれについての詳しい説明をします。

    1-1.登記済権利証または登記識別情報

    登記済権利証とは、不動産の正式な所有者として登記されていることを証明する書類です。2005年以降は登記識別情報という制度が導入され、登記済権利証に代わる機能を果たしています。

    登記識別情報とは、不動産及び登記の名義人ごとに定められた12桁の符号で、登記識別情報制度が導入された後に登記した所有者に届く「登記識別情報通知書」に記載されています。登記識別情報は大変重要な情報ですので、「登記識別情報通知書」に目隠しシールを貼って交付されます。

    これらは不動産の所有者として登記されていることを証明し、登記された所有者が保管するものであり、売買や贈与、財産分与などの所有権移転の登記の際に必要となります(相続の場合には原則として必要ありません)。

    【紛失してしまったら!】
    登記済権利証や登記識別情報を紛失してしまった場合、再発行はできませんが、「事前通知制度」や「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」などで、本人確認を行うことができます。

    「事前通知制度」とは、名義変更のための登記に先立って、法務局が登記義務者に対して通知をして意思を確認する制度で、本人限定受取郵便で通知がなされます。「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」とは、司法書士などが「本人確認情報」を提供する方法のことで、その他に公証人が認証する方法もあります。

    1-2.印鑑証明書および実印

    印鑑証明書とは、実印が印鑑登録されていることを示す証明書です。印鑑登録とは、自分の印鑑を役所に登録することで、自分の印鑑であることの正式な証明をできるようにするためのものです。また、実印とは印鑑登録された印鑑のことを指します。重要な取引の際には実印を押印し、印鑑登録された印鑑であることを証明するために印鑑証明書を添付することで、本人確認を行います。

    印鑑証明書の添付が求められるのは、虚偽の登記申請を防止するためです。印鑑証明書で証明された実印を押すことで、

  • 真正な実印であること
  • 登記の申請人が本人であること
  • 申請者の意思で登記すること
  •  
    が証明されることになります。

    売買や贈与、財産分与などによる所有権移転の登記では、所有権を手放す側が登記申請書類もしくは司法書士への委任状(司法書士に委任する場合)に実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。これは、所有権が移転することで不利益を受ける側の意思の確認が重要となるからです。

    相続による所有権移転の登記では、遺言書や法定相続分にしたがって登記する場合には、印鑑証明書は不要となります。しかし、法定相続分とは異なる割合で相続する場合には、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名、押印しなくてはならないので、印鑑証明書の添付も必要です。

    【注意!その1】
    登記簿上の住所と印鑑証明書の住所が一致していないと登記の申請は受理されないため、登記後の住所が変わっている場合には、住所が移転したことを証明できる住民票の添付が必要になります。

     

    【注意!その2】
    遺産分割協議書に添付する印鑑証明書には、特に有効期限は定められていません。しかし、売買や贈与、財産分与などによる所有権移転の登記の際に添付する印鑑証明書は、発行後3カ月以内という期限があるので注意が必要です。

     
    印鑑証明書を発行するには、役所で印鑑登録の手続きを済ませている必要があります。すでに印鑑登録の手続きをしてあるのであれば、印鑑登録証と本人確認書類を持参すれば役所で交付してもらえます。また、マイナンバーカードを持っている人ならばコンビニで取得することもできます。

    1-3.固定資産評価証明書

    固定資産評価証明書とは、固定資産の評価額が記載された証明書で、原則として対象となる不動産の所在地の役所で交付されます。東京23区内の場合、申請は都税事務所で行うことになりますが、この場合にはどこの都税事務所でも手に入れることができます。

    所有権移転登記の際には「登録免許税」を納めなくてはなりませんが、この登録免許税の算定の基準となるのが「固定資産の評価額」です。また、固定資産評価証明書を申請できるのは、原則として固定資産税の納税義務者や相続人などとなり、委任状があればこれらの代理人が取得することもできます。

    1-4.身分証明書

    所有権移転登記の手続き自体に必要となる書類ではありませんが、司法書士に依頼する場合には本人確認のために必要となります。マイナンバーカードや運転免許証などといった顔写真付きのものが原則となります。

    1-5.新たに所有者となる者の住民票の写し

    所有権移転登記をするには、新たに所有者となる者の住所を記載しなくてはならないので、買主の住民票の写しが必要となります。一方、売主の住所は現所有者として登記に記載されているはずなので、売主の住所が変わっていないのであれば、売主の住民票は必要ありません。

    しかし、登記後に引っ越しをして住所変更の登記をしていない場合には、その事実も登記に反映する必要がありますので、その場合には売主の住民票も必要となります。

    ただし、住民票では直前の住所までしか確認することができないため、売主が複数回転居している場合には、その経過を確認するために戸籍の附票も必要になります。戸籍の附表は本籍地の市区町村の役所で申請します。本籍地が遠方にあるなど、足を運ぶのが負担であれば、郵送によって取得することも可能です。

    住民票は現住所の管轄となる役所で入手できますが、マイナンバーカードを作成していればコンビニで取得することもできます。

    【注意!その1】
    所有権移転登記の際に添付が必要となっている書類は、原則として原本を提出する必要があります。たとえば、「住民票の写し」となっている場合には、住民票のコピーではなく、「住民票の写し」という証明書の原本を添付しなくてはなりません。

    もし原本を保管しておきたい書類があれば、一定の書類の原本を返還請求することはできます。この場合には返還を希望する書類をコピーし、そこに「原本に相違ありません」と記載して、署名・押印したものを原本と一緒に提出すればよいことになっています。ただし、中には返還されない書類もありますので、詳しくは登記所に確認してみるとよいでしょう。

     

    【注意!その2】
    不動産登記の際に添付する住民票の写しには、個人番号の記載のあるものは利用できません。住民票の写しの交付を申請する際には注意してください。

     

    ②売買のケース

    売買のケースによる所有権移転登記の場合、「登記原因証明情報」の提出が必要となります。登記原因証明情報とは、登記の原因となる所有権移転があったことを証明するために作成されるもので、売買のケースでは売買契約書等が該当します。特約で「代金支払時に所有権が移転する」とされているケースでは、売買代金の領収証や売主によって作成された代金を受領した旨の証明書などが含まれます。

    売買契約書がないという場合には、法務局の記載例にならって「登記原因証明情報」を作成する必要があります。司法書士に依頼するのであれば司法書士が作成しますが、自分で申請する場合にはこちらの記載例をご確認ください(法務局のページへの遷移はせず、記載例のドキュメントが直接ダウンロードされます)。

    ③贈与のケース

    贈与を原因とする所有権移転登記にも登記原因証明情報が必要となり、贈与契約書などがこれにあたります。贈与契約書とは、贈与をする場合に、財産を譲る側と譲られる側で贈与の内容について後日争いが起きないように残す書面です。ただし、契約書の作成自体は贈与の要件ではありません。

    贈与自体は、当事者同士の意思表示のみで有効に成立します。ですから、贈与契約書の作成にあたって法定の書式などはありませんが、

  • 贈与契約の当事者の氏名
  • 贈与の目的となる不動産を特定できる情報
  • 贈与契約の効力の発生の日付
  •  
    を明確に記載する必要があります。贈与契約書または登記原因証明情報作成にあたっては、<こちらの記載例をご確認ください(法務局のページへの遷移はせず、記載例のドキュメントが直接ダウンロードされます)。

    ④離婚における財産分与のケース

    離婚における財産分与には、協議離婚のケースと裁判上の離婚のケースがあります。それぞれで登記原因証明情報は異なりますので、以下に説明します。

    1-1.離婚協議書:協議離婚のケース

    財産分与における登記原因証明情報は財産分与協議書等となりますが、離婚におけるケースでは「離婚協議書」などがそれに該当します。

    離婚協議書とは、離婚に伴う財産分与その他について、後日紛争を避けるために文書化しておくものです。贈与契約書などと同様で、必ずしも作成が義務となっているわけではないので、書式が決まっているものではありません。

    離婚協議書がない場合には、登記原因証明情報を作成することになります。こちらの記載例をご確認ください(法務局のページへの遷移はせず、記載例のドキュメントが直接ダウンロードされます)。

    1-2.調停調書、審判書、和解調書等:裁判上の離婚のケース

    調停や審判、訴訟など、裁判による離婚のケースでは、調停調書や審判書、和解調書等が登記原因証明情報となります。

    この場合、これらの書類に、不動産の譲渡について書類作成日付けで「財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」旨の記載がある時には、財産を譲られる側が単独で登記の申請をすることができます。それ以外の場合には、譲る側と譲られる側が協力して申請する必要があります。

    (上記1-1、1-2共通)戸籍謄本:離婚の記載のあるもの

    離婚協議書等は通常、離婚の前に作成されますが、離婚によって財産が移転するのは離婚届を提出した日となります。それなので、離婚が成立した日付のある戸籍謄本を見て、離婚の日付を確認することが必要です。離婚した当事者のどちらか一方が本籍地の役所で申請して入手してください。

    なお、離婚成立後に財産分与協議書を作成して財産分与するケースでは、戸籍謄本は必要ありません。

    ⑤相続による所有権の移転のケース

    相続によって所有権が移転するケースでは、法定相続分の割合で相続するケース、遺言のあるケース、相続人間の協議によるケース、調停または審判によるケースの主に4つに分かれます。法定相続分の割合で登記する場合、登記原因証明情報にあたる書類は不要となりますが、その他の場合にはケースごとに必要となる書類が異なりますので、ケースに分けて以下に説明します。

    相続を原因とする所有権移転登記は、相続人となる人一方のみで申請ができることになっています。そのため、手続きに不備や不正がないか厳しくチェックできるように、添付書類が細かく定められています。

    1-1.被相続人の戸籍謄本:出生から死亡まで連続したもの

    相続手続きには、被相続人の戸籍謄本が必要です。被相続人が出生した時から死亡する時までの連続したものすべてを取り寄せなくてはなりません。被相続人が出生した時からのすべての戸籍をさかのぼるのは、直近の戸籍を調べただけでは分からない隠れた相続人がいないかを確認するためです。

    1-2.被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票

    戸籍謄抄本には、本籍地の記載があるのみで住所の記載がありません。戸籍に記載されている人と登記簿に記載されている人が同一人物であるのかを確認するためには、被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票と、登記簿の住所が一致していることを証明する必要があります。

    住民票の除票とは、転出や死亡などによって除かれた住民票をいいます。これによって、以前そこに住んでいた事実やそこに住民票を移す前後の住所、本人がすでに死亡しているという事実が分かります。

    戸籍の附票とは、戸籍の原本と共に保管され、戸籍が作られた時以降の住所が記録されているものです。複数回転居している場合にも、戸籍の附票を取ることで、その過程を調べることができます。もっとも、本籍の変更をしている場合には、現在の戸籍の附票には変更前の住所の記録はされていませんので、それ以前の住所を調べるには転籍前の戸籍の除附票をとらなくてはなりません。

    【注意!】
    住民票の除票を取り寄せる際には、本籍地の記載のあるものとしてください。

     

    1-3.相続人全員の戸籍謄本(抄本)

    相続人全員の戸籍謄本や抄本によって、相続人が相続発生時に生存していたことを証明する必要があります。ですから、被相続人が亡くなって相続が発生した後に交付されたものでなくてはなりません。この際には不動産を相続しない相続人の分の戸籍抄本等も必要ですが、被相続人と同一の戸籍に入っていた場合には情報が確認できるため、新たに揃える必要はありません。    

    1-4.相続関係説明図

    被相続人と相続人がどのような関係であるのかを一覧できるように図で示したものを、相続関係説明図といいます。相続関係説明図の作成にあたっては書式が法定されているわけではありませんが、法務局のサイトに「様式及び記載例」が掲載されていますので参照してみてください。

    参考:法務局 – 主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

    ⑥公正証書遺言もしくは自筆証書遺言:遺言のあるケース

    遺言のあるケースでは、遺言書が登記原因証明情報となります。遺言には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」という2つの方法があります。

    公正証書遺言とは、遺言を残したい人が口頭で伝えた遺言の内容を公証人に伝え、それを基に公証人が作成するもので、原本の管理も公証人が行います。遺言書の内容に不備が発生したり、内容を改ざんされたりする恐れがないため、家庭裁判所の検認がなくても相続手続きを進めることができます。

    一方の自筆証書遺言とは、被相続人が自分で作成した遺言書を指します。そのため、遺言書としての民法上の要件を満たしているか、裁判所の検認を受ける必要があります。この場合には、この検認調書と遺言書を登記原因証明情報とし、登記の手続きを進めることになります。

    ⑦遺産分割協議書:相続人間の協議によるケース

    特に遺言書等がないケースで、法定相続分とは異なる割合で遺産を相続する場合には、相続人全員で協議して相続する財産の割合を決めなくてはなりません。この協議の結果によって作成されるのが「遺産分割協議書」です。特に法定の書式はありませんが、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。これにより、相続人全員が合意したという証明になります。

    遺産分割協議に基づいて所有権移転登記をする場合には、この遺産分割協議書が登記原因証明情報となります。

    ⑧調停や審判の調書:調停または審判によるケース

    遺産相続について相続人間で争いがある場合には、調停や審判によって遺産分割を行います。調停とは、裁判官や調停員が間に入って、遺産分割についての協議を行う方法です。審判とは、調停によって解決しなかった場合に、裁判所がそれぞれの主張や事情を中立な立場で考慮して遺産分割の判断をする方法です。

    調停や審判によって遺産分割を行う場合には、家庭裁判所が作成した「調停調書」や「審判書」が登記原因証明情報となります。

    所有権移転登記の費用について

    所有権移転登記を備えるには、登録免許税のほか、印鑑証明書や戸籍謄抄本などの書類を揃えるための手数料、司法書士へ依頼する場合の報酬などがかかります。なお、司法書士への報酬は、自分で登記の申請を行う場合には発生しません。

    登録免許税

    所有権移転登記の申請をするには登録免許税の納付が必要となり、この登録免許税は固定資産の評価額を基に算定されます。登録免許税算定の基礎となる固定資産の評価額は、不動産の所在地の役所で交付される「固定資産評価証明書」に記載されています。

    固定資産の評価額に「登記の種類ごとに定められた税率」を掛けて、登録免許税を計算します。税率は以下のようになります。

    登記の種類 登録免許税の税率
    売買による所有権移転登記 2%(※1、※2)
    相続による所有権移転登記 0.4%(※3)
    贈与・財産分与による所有権移転登記 2%

     
    ※1 売買による土地の所有権移転登記を2025年3月31日までにする場合には、登録免許税の税率は2%から1.5%へ軽減されます。

    ※2 売買による建物の所有権移転登記において、自己が居住するための建物を2024年3月31日までに取得した場合には、2%から0.3%へ軽減されます。

    ※3 土地の所有権を相続によって取得した人が、相続登記をする前に死亡した場合には、死亡した相続人への所有権移転登記にかかる登録免許税は2025年3月31日まで免除されます。

    手数料、書類を揃える費用など

    印鑑証明書や戸籍謄抄本、住民票の写しなど、公的な書類を役所などで揃えるには手数料がかかります。手数料の額は、申請する書類の種類や申請先の役所によって異なりますが、1通につき300~750円ほどが多いです。印鑑登録証明書や住民票の写しなど、一部コンビニで交付を受けられる書類もありますが、この場合には役所で交付してもらうよりも若干安くなります。

    相続による所有権移転の場合などは必要書類が多くなるなど、ケースによって必要となる書類の枚数には差がありますが、大体5,000円前後と考えればよいでしょう。

    司法書士への報酬

    司法書士に依頼して手続きを進めるのであれば、司法書士への報酬が発生します。司法書士への報酬は、依頼する司法書士事務所や登記の種類などによって異なりますが、大体5万円~10万円ほどが一般的です。

    不動産の購入にあたりローンを利用する場合には抵当権の設定登記も必要となったり、遺産分割協議書や離婚協議書の作成などが必要となるケースでは更に必要な処理が増えたりますので、費用は上記よりも多少増えます。

    リスクを避けるために所有権移転登記はしっかり行いましょう

    所有権移転登記を備えることで、不動産の所有権が自分にあることを第三者に証明することが可能となり、さまざまなリスクを避けることができるようになります。それなので、不動産を取得した際にはできる限り早急に登記を備えることをおすすめします。

    また、登記の申請には不動産の価格に応じた登録免許税などの費用がかかり、たとえば3,000万円の物件を売買によって取得した場合には、登録免許税だけでも60万円ほどとなります。それ以外にかかる費用を少しでも抑える方法として考えられるのは、自分で登記の申請手続きを行い、司法書士に依頼するための手数料を節約することです。

    手続きには数種類の添付書類を揃えたり、複雑な書類の作成をしたりしなくてはなりませんが、費用を少しでも抑えたい人はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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