2022.05.27
不動産投資

建築基準法違反物件|5つの実例とリスク、調べる方法とは

建物に関する法律として知られる「建築基準法」ですが、建築基準法とはどのような法律で、建築基準法違反の物件を取得すると不動産投資を行ううえでどのようなリスクがあるのでしょうか?最低限必要な知識を身に付けることによって不動産投資の成功の確率は格段に高くなりますので、本記事では建築基準法違反物件について詳しく解説します。

【監修者】弁護士 森田 雅也
【著者】水沢 ひろみ

 

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建築基準法違反物件とは

建築基準法違反物件とは、その名の通り、建築基準法に違反している物件のことです。建築基準法は、建物の安全性を守るための最低限の基準として1950年に制定されました。

建物の安全性は外観からは判断できないことが多いうえ、具体的な判断には専門的な知識も必要になります。長年に渡って使用される建物の安全性は、人の命にも関わる重要なものです。そこで、建物を建てる際には最低限守らなければならない基準を定め、違反者には罰則を課すことで、人々が安心して建物を利用したり売買などの取引ができたりするように定められたのが、建築基準法です。

新たに建物を建てる際には建築確認という手続きが必要となり、原則として建築基準法に違反した建物は建てられないことになっています。それでも中には建築基準法に違反した物件が存在しているのが現実です。

では、なぜ建築基準法に違反した物件が存在するのか、違反している物件にはどのような不都合があるのか、建築基準法に違反している物件をどうやって見分ければよいのか、という点について次章では詳しく解説していきます。賃貸経営を行うにあたって新たに物件を取得する際には、これらのリスクを十分に理解して判断していくことが必要です。

なぜ建築基準法違反物件があるのか

建物を建てる際には、建築予定の建物が建築基準法に違反していないかを確認するために、自治体などに建築確認の申請をすることが求められています。それなのに、なぜ建築基準法違反物件があるのでしょうか?建築基準法違反物件がある理由として、以下の3つが考えられます。

違法建築だと分かっていて建てた

1つ目の理由として、違法建築であることを認識していながら、建築確認申請を行った建物とは異なる建物を建てた場合が考えられます。この場合には、違法建築をした業者は違反が判明した時点で罰則の対象となるリスクを負っていることになります。

法改正により後から違法になった

建築基準法に適合していない物件の中で多く見られるのが、「既存不適格建築物」と呼ばれる建物です。既存不適格建築物とは、建築当時は問題なかったものの、後の法改正により法律に反してしまうケースです。

先程も説明しましたが、建築基準法は建物の安全性を守るための基準として1950年に制定されました。一度制定された後も、建物の安全性に対する意識の変化に伴って法律の改正は行われています。

法律の改正前から存在していた建物は、それ以前は法律自体がなかったのですから、厳密にいえば違法とはなりません。ですから、既存不適格建築物は、現行の建築基準法には反していますが、違法建築とはみなされません。ただし、新たに再築する場合には当然、現行の法律に適合した建物を建てる必要があります。

増築やDIYなどが原因で違反物件になった

建築基準法に適合した建物を建てた後に、増築やDIYなどを行ったことで違反物件になっているケースも考えられます。建築業者などによって増築の工事を行う場合には、原則として増築の際に新たに確認申請を行いますので、違反物件になるのは個人が行うケースに多くなります。

建物を増築して床面積が増えた際には増築の登記をする義務もありますが、個人で増築やDIYを行った場合には増築登記もきちんと行われていない可能性があり、登記を見ても増築の事実が判明せず、増築によって建築基準法違反物件になっている可能性を見落とす危険性もあります。

建築基準法違反物件(違法建築)の実例

では、具体的な建築基準法違反物件の実例にはどのようなものがあるのでしょうか?以下に説明していきます。

建ぺい率オーバー

建築基準法違反物件としてよく見られるのが、建ぺい率がオーバーしているケースです。建ぺい率とは、土地の面積に対してどれだけの広さの建物を建てられるかの割合を定めたものです。

建ぺい率 = 建物の建坪 ÷ 土地の面積 × 100
※建坪とは、建物を真上から見た時の面積のこと

 
用途地域ごとに30~80%の範囲で定められており、たとえば、建ぺい率が50%の土地であれば敷地面積に対して50%の広さの建物までしか建てることができません。用途地域については3つ後の見出しにある「用途違反」で詳しく説明しますが、簡単にいうと、地域ごとに建てられる建物の用途が定められていることをさします。都市計画区域、および準都市計画区域以外の区域については原則的には建ぺい率の制限は適用されませんが、自治体によって別途制限が定められている地域もありますので確認が必要です。

建ぺい率が定められている理由は、地域の特性に応じた住環境を保護するためです。敷地いっぱいに建物が建てられてしまうと、日当たりや風通しが悪く、防火対策上も問題がある街並みになってしまう可能性が高くなります。

建ぺい率オーバーの建物が存在するケースとしては、建築確認申請とは異なる建築や増築、敷地の一部の売却などがなされるケースが挙げられます。たとえば、屋根のあるカーポートなどは、建ぺい率の計算上、原則として建物の面積の一部とされますが、中には、建ぺい率の制限を不当に逃れるために建築確認時点では申請していなかったカーポートを黙って増築工事してしまうケースなどもあります。

また、先ほど述べたように、個人のDIYなどの延長で増築した際に建ぺい率をオーバーしてしまうケースや、建物を建てた後に敷地の一部を売却することで、既存の建物を建てるのに十分な敷地面積が不足する状態になるケースもあります。

建ぺい率オーバーの物件を知らずに購入してしまい、再築するとなっても、定められた建ぺい率の範囲内の物件しか建てられませんし、行政からの勧告・指導があれば是正の義務が生じる可能性もあります。そのため、購入の際には、物件の現状をしっかりと確認することが重要です。

容積率オーバー

容積率とは、土地の面積に対する建物の延べ面積の割合のことを指します。

容積率 = 建物の延べ面積 ÷ 土地の面積 × 100

 
延べ面積とは、建物すべての階の床面積を合計した面積ことで、2階建ての建物であれば1階と2階の床面積の合計となります。

容積率も建ぺい率と同様に、用途地域ごと、または自治体ごとに建物の安全性や住環境を保護する目的で定められています。容積率の制限の厳しい地域で、十分な広さの敷地を確保できない場合には、少しでも床面積を増やすための設計がなされることになります。

たとえば、バルコニーや出窓は一定の条件を満たせば床面積に算入されないため、空間を広く利用することができます。また、下の階の床面積のうち1/2以下の面積であるといった要件を満たせば、ロフトも床面積に参入しなくて済みます。こういった方法をできるだけ取り入れれば、住空間を広く確保できるように工夫することができます。

しかし、これらの条件を満たさないバルコニーやロフトを作ってしまったり、吹き抜けの予定だったにもかかわらず急遽ロフトを作ったりするなどの変更を行うケースが見られることがあり、このような場合には容積率オーバーとなってしまう可能性が生じます。

採光不良

建築基準法によると、住宅の居室には採光のために窓その他の開口部を設けなくてはならないとされています。そして、採光のための開口部の面積は、居室の床面積の1/7以上必要であると定められています。

開口部の面積 ≧ 居室の床面積 ÷ 7

ただし、ここでいう「開口部の面積」とは、用途地域や開口部の位置などによる光の入りやすさを考慮して、「採光補正係数」というものを掛けて計算した数値となり、こうして計算された開口部の面積を有効採光面積といいます。

開口部の面積 × 採光補正係数 = 有効採光面積

 
日当たりの良さが重視されると考えられる住居系の地域では、より多くの開口部を設ける必要があるため、採光補正係数は小さく設定されています。反対に、商業系や工業系の地域では採光補正係数は大きくなり、必要な開口部が少なくても良いように調整されています。

建築基準法で床面積の1/7以上必要とされている開口部とは、この有効採光面積となります。有効採光面積は形式的な計算で求められるものですので、現実的な部屋の日当たりの良さを保証するものではありませんが、採光のために必要な基準としての役割を果たしています。

用途違反

用途地域の定めのある地域では、定められた用途以外の建物を建てることはできません。用途地域とは、住居や商業、工業などの建物の用途によって地域を13種類に区分し、それぞれに適した環境を維持するために、建てられる建物の種類や大きさなどを制限している地域のことです。

たとえば、住居系の地域に大型の商業施設や工場などが建つことになると、静かで安全な住環境を維持することが難しくなります。そのため、これらの施設を建てることを制限することで、当該地域に住む住民の静かで安全な住環境を維持しているのです。

住居系の地域の中でも、第一種低層住居専用地域では原則として店舗や飲食店を建てることができませんが、それ以外の地域では建てられるなど、細かい区分けがされています。事務所としての利用ができない地域や、倉庫を建てられない地域もあります。

建物を建てる際には、建物の使用目的が用途地域の用途制限違反にならないかを十分調べたうえで、建ぺい率や容積率などが用途地域ごとに定められた基準に従っているかを守ることも必要です。中には住居を店舗や事務所に使用したり、工業専用地域の建物を寄宿舎にしたりと、途中から用途の変更を行っている場合もあり、その用途の変更自体が建築基準法の違反になっている可能性もありますので注意が必要です。

違法増築

原則として、10㎡以上の増築を行う際には建築確認の申請を行わなくてはなりません。しかし、個人がDIYで増築する場合や後から倉庫を設置する場合など、この決まりを知らないために違法建築になってしまっているケースがあります。

また、建築業者によっては、確認申請の必要を認識していながら黙認して増築工事を行っているケースもあります。増築箇所がある物件の場合には、建築確認はきちんとされているかどうか、違法建築になっていないかどうかを確認することが重要です。

違法建築にはどのようなリスクがある?

前章のように違法建築にはいくつかの種類が存在していますが、違法建築には具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか?以下で確認していきましょう。

入居者の安全面のリスク

建築基準法は、火災や地震などの災害の際の安全性や、日常生活において快適な住環境を維持するための基準として設けられています。これらの基準は大規模地震といった災害などを通して都度見直しが行われているため、現行法の水準が現在において必要であると考えられている内容だといえます。

そのため、逆にいえば、建築基準法の規定に反している建物はもちろん、既存不適格建築物についても現在必要だと考えられている入居者の安全面のレベルを満たしていない可能性がある、と考えることができます。違法建築物件は入居者の安全面においてリスクのある物件だといえるでしょう。そして、違法建築物件で事故が発生した場合などには、所有者として責任を問われるリスクもあります。

融資が厳しい可能性

違法建築物件だと、金融機関から融資を受けることは厳しくなる可能性があります。金融機関は、万が一、貸した人からの返済が滞った場合に、担保にしている物件を売却した資金での回収を予定して資金の融資を判断します。

ところが、違法建築物件にはさまざまなデメリットがあり、担保にしたとしても通常通りに換金できない可能性があるため、担保価値は非常に低く算定されます。金融機関の判断にもよりますが、違法建築物件であると融資自体が受けられないケースも多いため、購入を検討する際には注意が必要です。

売却が難しい可能性

上記のように、違法建築物件には入居者の安全面においてのリスクがあるケースもあり、違法建築ではない物件に比べれば、居住することに抵抗をもつ人は一定数いると考えられます。また、賃貸物件として貸し出した際に事故があれば、オーナーの責任が問われるリスクもあります。

また、建ぺい率オーバーの物件の場合には、建物を立て直すとなったら現在の建物よりも建坪の小さい建物しか建てることができなくなります。場合によっては建物を一部除去しなくてはならなくなる可能性もあり、購入をためらう人は一定数存在すると考えられます。このように、違法建築物件は売却面においても難しい可能性があります。

行政からの勧告、指導が入る可能性

違法建築物は、行政からの勧告、指導が入る可能性があります(既存不適格建築物についても指導が行われる可能性があります(建築基準法9条の4参照))ので、購入に際しては注意が必要です。違法建築物の是正の責任は、違法建築をした建設業者や依頼主だけではなく、違法建築物を購入した所有者にも発生することがあります。場合によっては建物を撤去しなくてはならないケースがあり、従わなければ刑事罰を受ける可能性もあります。

建築基準法違反の物件を調べる方法

物件を購入する際に建築基準法違反の物件を調べるには、「建築確認証」や「検査済証」があるかを確認する方法があります。これらを紛失しているなどの理由で手に入らない場合には、市区町村の役所で「建築確認台帳記載事項証明」を発行してもらうことで建築確認のおおよその内容を調べることができます。

「建築確認日付」と「検査済日付」があれば、少なくとも建築確認を受けている建物であるということは知ることができます。この時に「建築計画概要書」も入手すればさらに詳細な情報を入手できます。

しかし、建築確認を受けている物件であっても、その後に違法な増築が行われている可能性はあります。そこで、目視による現地確認や図面と現況の照合などで、現在の状況を把握することも重要です。登記簿の確認も忘れずに行いましょう。

建築基準法違反物件を理解して不動産投資を成功させよう

建築基準法は、最低限の建物の安全性を保障し、良好な住環境を維持するために定められた法律です。そのため、基準法に従って建てられているということは、一定の基準を満たしている保証となります。

しかしその反面、違反している物件は融資や売却が難しかったり、行政からの勧告・指導が入る可能性があったりするなど、さまざまなリスクを抱えています。違反している物件を知らずに入手してしまい、後から後悔することがないように、建築基準法についての理解を深めてみてください。

【監修者】森田 雅也

東京弁護士会所属。年間3,000件を超える相続・不動産問題を取り扱い多数のトラブル事案を解決。「相続×不動産」という総合的視点で相続、遺言セミナー、執筆活動を行っている。

経歴
2003 年 千葉大学法経学部法学科 卒業
2007 年 上智大学法科大学院 卒業
2008 年 弁護士登録
2008 年 中央総合法律事務所 入所
2010 年 弁護士法人法律事務所オーセンス 入所

著書
2012年 自分でできる「家賃滞納」対策(中央経済社)
2015年 弁護士が教える 相続トラブルが起きない法則 (中央経済社)
2019年 生前対策まるわかりBOOK(青月社)

 

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