2021.06.21
税金

不動産をもらったら贈与税の申告は自分でできる?方法と注意点を解説

不動産を贈与されたら贈与税の申告が必要です。今回は、申告書作成や提出・納税の流れや方法、そして注意点について解説します。翌年の3月15日までの申告が必要で、遅れるとペナルティもあるので、しっかり確認しましょう。

自分で贈与税の申告をするときの4つの流れ

受け取った不動産について自分で贈与税を申告するときは、次の流れで行います。

(1)土地と建物を評価する

贈与税は土地や建物の贈与時の時価にかかります。といっても、この時価は実勢価格ではありません。次の金額が時価になります。

▽土地の場合:路線価方式または倍率方式で評価した金額
市街地のように路線価が設定されているエリアの土地は路線価方式で、それ以外のエリアの土地は倍率方式で評価します。路線価方式や倍率方式では次のように計算します。

・路線価方式:路線価×各種補正率×土地面積
・倍率方式:固定資産税評価額×倍率

▽建物の場合:固定資産税評価額
建物の贈与時の時価は、固定資産税納税通知書や課税台帳に記載された金額をそのまま用います。なお、この評価は、贈与された不動産が、贈与者が自宅や別荘などで自ら使用している場合のものです。もし受贈した不動産が賃貸物件ならば、他人に貸している分だけ評価額が下がります。具体的には、次の算式で計算します。

・賃貸物件の土地
自用地価額(自ら使う土地の評価額)×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

・賃貸物件の建物
建物の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

不動産オーナーとその親族の場合、不動産の贈与が賃貸物件であるケースも多いかもしれません。自ら住んでいる不動産の贈与とは計算の仕方が変わりますので、土地、建物ともに確認をしておきましょう。

(2)評価額から税額を計算する

次に贈与税の税額を計算します。贈与税は原則、「もらった財産の時価-110万円」に税率を乗じ、控除額を差し引いて計算します。

税率と控除額は、贈与された財産から110万円を差し引いた金額と贈与者・受贈者の関係によって変わります。一般に、祖父母や両親などといった直系尊属からもらった財産(特例贈与財産)は、そのほかの人からの贈与財産(一般贈与財産)よりも税額が低くなります。また、贈与された不動産が賃貸物件など居住用途ではない場合は、適用される控除がおおよそありません。「もらった財産の時価―110万円」に税率を乗じたものが、税額となると考えてよいでしょう。

ただし、相続時精算課税制度を選択しているのなら、累計2,500万円まで贈与税は非課税です。2,500万円を超えた部分については一律20%の贈与税がかかります。

引用:東京税理士会 贈与税の計算方法
※速算表ではありません。

(3)申告書を作成する

受け取った財産の評価と税額計算が終わったら、次は申告書の作成と必要書類の準備となります。申告書には必要事項を記入します。贈与された不動産の申告なら、申告書第一表と本人確認書類(マイナンバーカードのコピー等)が必要です。この他、次のような書類が求められます。

・贈与者・受贈者の関係や受贈者の氏名や生年月日を証明する書類(戸籍謄本・抄本など)
・土地及び土地の上に存する権利の評価明細書
・家屋の固定資産税の評価証明書

贈与された財産に関する評価証明書などといった書類の提出は義務付けられていませんが、添付するのが一般的です。さらに、相続時精算課税制度の適用を受けるなら申告書第二表など別の書類が必要になります。

(4)翌年3月15日までに申告・納税する

贈与税は財産をもらった年の翌年3月15日までに申告・納税します。ただし、3月15日が土日祝日と重なっていたら、その次の最初の平日が期限です。なお、2019年分の贈与税の申告・納税の期限はコロナ禍で1ヵ月延長になりました。2020年分の贈与税も状況によっては延長になるかもしれません。国税庁のホームページなどで、最新の情報を確認しましょう。

申告書の入手先・作成

贈与税の申告書は近くの税務署で入手できるほか、国税庁のウェブサイトからダウンロードすることもできます。

▽申告書第1表(兼贈与税の額の計算明細書)(令和2年分以降用)

引用:国税庁 令和2年分贈与税の申告書等の様式一覧

贈与税の申告書は手書きの他、国税庁「確定申告書等作成コーナー」で作成することもできます。

参考:国税庁 確定申告書等作成コーナー

申告方法

申告は、記入した紙の申告書かe-Taxで行います。紙ならば税務署に直接提出するか、郵送で提出します。郵送後、控を返送してほしいのなら、切手を貼付した返信用封筒を同封します。

e-TaxならマイナンバーカードとICカードリーダライタか読取可能なスマートフォンが必要です。マイナンバーカードがなくてもIDとパスワード方式でe-Taxができますが、事前に税務署で手続きしなくてはなりません。

参考:国税庁 e-Tax ID・パスワード方式について

納税の方法

納税は、税務署や金融機関の窓口で現金で納付する他、次のような方法があります。

・振替納税
・電子納税
・コンビニ納付
・クレジットカード納付

振替納税と電子納税は預貯金口座から納税額を振り替える方法です。振替納税は自動振替ですが、事前手続きが必要です。電子納税はe-Tax経由での納税で、事前手続きが必要なものとそうでないものがあります。

コンビニ納付は納税額が30万円以下のときに利用できます。自宅でQRコードを発行しておくことが必要です。クレジットカード納付は1,000万円以下の納税額のときに利用できます。専用のWEB画面から行います。なお、納付税額に応じて決済手数料がかかります。いずれも事前手続きは不要です。

参考:国税庁 [手続名]クレジットカード納付の手続

自分で申告するときの注意点

不動産の贈与を受けたときに贈与税の申告を自分で行うときは、期限に注意しましょう。特に相続時精算課税制度の適用を受けるときは、申告期限を意識しなくてはなりません。

相続時精算課税制度では累計2,500万円まで贈与税が非課税です。しかし、非課税の適用を受けるなら、すべての贈与に関し期限内の確定申告が必要です。たった10万円の贈与でも申告が遅れると20%の税率、つまり2万円の贈与税を納めることになります。

また、暦年課税制度であっても相続時精算課税制度であっても、申告期限に遅れると無申告加算税や延滞税といったペナルティで余計な税金を支払うことになります。期限内の申告と納税を心がけましょう。

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