賃貸経営の主な目的は家賃収入を得ることですが、節税対策として使われることもあります。節税できる税金は、相続税や固定資産税、所得税など多岐にわたります。課税所得が減ることで、さらなるメリットを享受できる人もいるでしょう。ここではその仕組みを解説しますので、資産を効率良く増やしたい人は参考にしてください。
目次
不動産賃貸経営は、多くの金融資産を持つ富裕層や地主にとって有効な節税対策です。効果の大きい2つの税金を見てみましょう。
賃貸経営は、現金を多く保有する富裕層が相続税対策として利用することがあります。土地や建物は相続税の計算上、市場価格の約7~8割で評価されるからです。
賃貸用のアパートやマンションが建っている土地は、貸家建付地としてさらに評価が下がります。元の評価額から、借地権割合と借家権割合の部分が差し引かれるのです。借地権割合は地域によって異なり、東京や大阪などの大都市圏の住宅地は60~70%が一般的です。興味がある人は、国税庁のホームページで路線価図を確認してみてください。一方で借家権割合は、2019年現在一律30%です。
貸家建付地には、入居率が高いほど土地の評価が低くなる「賃貸割合」という仕組みもあります。「他人が住んでいる土地は所有者が自由に処分できないから、その分資産価値を低く見積る」という考え方です。
たとえば、借地権割合が70%のエリアで土地4,000万円、建物6,000万円のアパートを買うと、相続税における評価はおおむね以下のように計算されます。なお、入居率(賃貸割合)は80%とします。
・建物の評価額:4,200万円(自治体による評価)
・土地自体の評価額:3,200万円(路線価によって計算)
・貸家建付地の評価:3,200万円-3,200万円×70%(借地権割合)×30%(借家権割合)×80%(賃貸割合)≒2,662万円
・合計:4,200万円+2,662万円=6,862万円
合計1億円の資産が、6,862万円に圧縮できました。なお、建物は経年劣化分を差し引くので、基本的には年月の経過につれて評価が下がっていきます。
あからさまに節税のみを目的とした土地建物の購入は国税庁によって指摘され、購入価格で計算させられることもあるため注意が必要です。一方で節度ある賃貸経営は、富裕層にとって有効な相続税対策の1つとして利用されています。
もともと賃貸経営は、地主が保有している土地にアパートを建てるのが一般的でした。その目的の1つが、固定資産税の節税です。更地に住宅を建てると、税金を最高で6分の1に抑えられます。
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賃貸経営で「帳簿上の赤字」が発生すると、給与所得から差し引くことができます。すると所得税が還付されたり、住民税の節税になったりします。このように賃貸経営の赤字で他の黒字の一部を相殺することを、損益通算といいます。
「帳簿上の赤字」と書いたのは、税金の計算上の利益と実際に手元に残る現金には差が生じるからです。それが顕著に現れるのが、減価償却費です。減価償却とは、建物の購入価額を複数年にわたって少しずつ経費として計上することです。
築年数が浅く、ローンの返済期間が長いマンションは、現金収支が黒字であるにもかかわらず所得税の還付を受けられることがあります。初期の返済金に占める支払利息(経費計上できます)の割合が多いためです。
この効果は一時的なもので、課税を先延ばしにしているだけと言えるかもしれません。しかし、所得を減らすことには、節税以外にもさまざまなメリットがあります。
たとえば住宅ローン控除や贈与税の特例など、多くの優遇税制には所得制限があります。子育て世代への支援も、所得が低いほうが手厚いのが一般的です。児童手当や高校授業料無償化、認可保育所の料金などがその例です。
ライフプランに合わせて課税所得をコントロールできることが、賃貸経営における節税のメリットなのです。
減価償却や利息の他にも、賃貸経営ではさまざまな経費を計上できます。簡単に言えば、「家賃収入を得るためにかけたお金は、基本的にすべて計上できる」のです。正しく申告することで、所得税と住民税の節税につながります。
特に不動産を購入した年やその翌年は、多額の還付を受けるケースが多いです。登録免許税や不動産取得税、入居者確保のための広告費など、計上できる経費が多いからです。
他にも、固定資産税や印紙税などの租税公課、管理会社への委託管理料、保険料、修繕費などの経費があります。
家事按分についても押さえておきましょう。家事按分とは、自宅の電気代や電話代、自家用車のガソリン代などのうち、賃貸経営のためにかかった部分は経費に計上できるというものです。
富裕層は、賃貸経営を相続税や固定資産税を節税する手段としても活用しています。会社員や公務員も、減価償却費や各種経費を計上することで、所得税や住民税を節税できるでしょう。所得を減らすことで、税制優遇や子育てに関する支援を受けられることもあります。収入や保有資産の状況に合わせて、節税を検討してみてはいかがでしょうか。
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