2021.02.12
税金

【生前贈与で不動産を贈与】注意しないといけない事は?

2015年1月1日に相続税と贈与税が改正となりました。相続税改正前は5,000万円に法定相続人につき1,000万円を加算した額が基礎控除額でしたが、改正により3,000万円に法定相続人1人につき600万円を加算した額が基礎控除額になり、相続税を支払う対象となった方が増えています。これまで不動産は相続税がかからないので相続で構わないと考えていた方も、相続税の改正を受けて生前贈与への関心が高まっています。
では、不動産の生前贈与については、贈与した不動産の名義変更が必要なのか、税金対策として有効なのかなども含め、相続対策の基礎知識をみておきましょう。

名義変更は必要?

生前贈与とは、将来、子どもなどに不動産を相続したいと考える親など(被相続人)が、不動産を受け取る子どもなど(相続人)が支払う税の負担を少しでも軽減するために生前に財産を贈与することです。生前贈与と聞いて、最初に思いつくのは、毎年少しずつの現金を配偶者や子や孫に渡すことかもしれませんが、金融資産でなく不動産でも生前贈与することができます。
不動産である土地や建物は、もちろん生前贈与を行わなくてもいずれは相続されることになりますが、不動産の生前贈与を行うことで、自分が所有している土地や建物を生前に自分が決めた特定の人に譲ることができるのです。なお、生前贈与として譲渡した土地や建物の贈与が有効であることを示すため、贈与契約書や、不動産の登記をしておくことが望ましいのです。
不動産は贈与した際の、不動産の名義変更(相続登記)が必須ではありません。そのため、不動産の名義変更をしないまま、贈与された不動産に住んでも問題はありません。しかし名義変更をしないと贈与として有効であることを示すことができません。
不動産の名義変更を行わない場合、誰がその土地や建物を取得したのか、贈与に関わってない方は知ることができません。つまり名義変更を行っておかないと、第三者には不動産を贈与したことを証明することができないのです。
名義変更が行われないと、不動産を贈与された方が、不動産を担保にお金を借りたり、相続した不動産を売却したりすることができないばかりか、そのまま長期にわたり名義変更せずそのままにしておき、名義変更前に贈与した側が亡くなるようなことがあれば、生前贈与が有効と認められにくいことがあったり、名義変更に必要な書類を揃えるための時間やお金がかかることもあります。そのため名義変更することが望ましいといえるのです。

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生前贈与による税金対策

生前贈与を行う目的は、将来の相続時の相続税の負担を軽減するためですので、贈与税の非課税範囲を有効に活用できるようにあらかじめ考えておきましょう。
生前贈与による税金対策としては、通常の贈与税である「暦年課税」、または「相続時精算課税」のどちらかの制度を活用することが一般的です。

(1)暦年課税
通常の贈与税の算出方法は暦年課税です。
暦年課税は、1月1日~12月31日までの1年間に贈与した財産の合計金額が基礎控除の110万円を超えた場合に、財産を贈与で受け取った受贈者が110万円を超えた金額に対して贈与税を納めるという制度です(平成29年11月現在の贈与税の基礎控除額は110万円です)。
以下の式で毎年の贈与税額を計算することができます。
納める贈与税=(1年(※)の贈与額合計-基礎控除額)×税率 - 控除
※1年は1月1日から12月31日までの期間です。

平成27年以降、贈与税の税率は、①20歳以上の人が直系尊属(父母や祖父母など)から受ける贈与である「特例贈与財産用(特例税率)」、②それ以外の「一般贈与財産用(一般税率)」贈与に区分されました。

特例税率で基礎控除後の課税価格が200万円以下の場合、税率は10%となります。例えば特例税率の適用ができる場合、1年目に100万円の贈与を受けると基礎控除内のため納税額は0円となります。2年目に200万円の贈与を受けると贈与税は9万円、3年目に150万円の贈与を受けると贈与税は4万円という計算になります。このように相続財産が多い場合、毎年贈与税を支払った方が、相続税を支払うより納税額が総額で少なくなることがあります。

(2)相続時精算課税
もう1つ税金対策として使える制度が相続時精算課税制度です。
相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合、総額で2,500万円までを非課税とできる制度です。
なお、贈与額が2,500万円を超えたときは、一律20%の贈与税率で、受贈者が納税します。

例えば、父から3,000万円の不動産の生前贈与を受け、相続時精算課税を選択する場合は以下の計算となります。
納税額=(贈与額3,000万円 - 特別控除額2,500万円) ×20%=100万円

同じ贈与を暦年課税で計算すると以下となります。
暦年課税の納税額=(3,000万円-基礎控除110万円)×税率(20%-30万円)
=2,890万円×20%-30万円=548万円

不動産の価格は暦年課税の基礎控除額110万円を越えることが多いため、税金対策として相続時精算課税制度は活用できるといえます。収益を生むアパートなどの賃貸用不動産の相続時の税金対策を考えた場合にも同じです。
生前贈与をせず、所有しているアパートの毎月の収益により毎年毎年金融資産が増えているとしたら、将来において多額の相続税を支払うこととなるかもしれません。生前贈与された不動産で得た収入は、贈与を受けた人の収入となり、将来相続税を支払うための準備資金として貯蓄しておくこともできます。

なお、相続時精算課税制度の利用には注意点もあります。
相続時精算課税制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。また、相続時精算課税制度を選択すると、その後に暦年課税に戻すことができないことも覚えておきましょう。

(3)その他の制度
居住用不動産または居住用不動産を取得するための資金の贈与に限られますが、贈与税には配偶者控除という制度があります。婚姻期間が20年以上の夫婦で、一定の要件を満たした場合、暦年贈与の基礎控除額の110万円のほかに最高で2,000万円まで贈与税が非課税となる特例もあります。

以上のように、不動産を生前贈与したときの税金対策は、贈与税のほかに登録免許税や不動産取得税などを納めることも考えておかなければなりません。さらにこれらの手続きを司法書士や税理士などの専門家に依頼すると報酬の支払いも必要になります。不動産を生前贈与する場合には相続税に対する税金対策だけではなく、不動産の名義変更を行うための税金や手数料なども考慮しておきましょう。

相続対策の基礎知識を覚えよう

それでは、実際に相続対策を行う前に、相続に関する基礎知識を理解しておきましょう。
まずは、誰が自分の相続人となるのか、相続人の誰がいくらの相続財産をもらう権利があるのかという相続分、そして、相続人が最低でいくらの相続財産をもらうことができるかという遺留分のことをおおよそ知っておく必要があります。
例えば、本人、同居する配偶者・長男・長女の4人家族であり、本人が亡くなった場合、相続人は配偶者と長男、長女の3人となります。相続分は配偶者が2分の1、長男長女がそれぞれ4分の1となります。そして、遺留分は相続分の半分になりますので、配偶者が4分の1、長男長女が8分の1となります。

もし贈与できる財産が、自宅とアパートなどの賃貸用不動産の併用住宅の1つのみである場合、1つの不動産を配偶者と長男長女の3人に贈与すると、3人の共有名義の不動産となります。贈与時には共有名義不動産に一緒に住んでいるので、あまり問題にならないことも多いのですが、将来的に長男や長女が結婚して子どもが生まれ、新しい家族ができて考え方が変わり、財産を分割したいなど家族間のトラブルに繋がることもないとはいえないのです。そのため、不動産を生前贈与する際には、誰にどのように贈与するのかを慎重に考えておく必要があります。

また、生前贈与を行った後、3年以内に相続が発生すると生前贈与された財産も相続税の課税対象となります。これは、暦年贈与の基礎控除枠(110万円まで)を使った毎年の贈与でも、相続時精算課税制度での贈与でも対象となります。
ただし、例えば子を飛び越えた孫への生前贈与など、相続によって財産を受け取らない人が贈与を受けた場合は、3年以内の贈与が相続税に加算されることはありませんので、相続時精算課税を活用して、孫への生前贈与を行う方もいます。

まとめ

生前贈与は注意点もありますが、制度を理解してうまく活用すると税金対策になります。そのため、相続対策として生前贈与を考えている方は、早めに計画的に生前贈与を行うことが税金対策として最も効果があるといえるでしょう。相続はまだ先のことだからと、保有しているアパートや自宅の不動産のことを考えずにそのままにしておくと、相続時に相続税を支払うことができず、大切な家族が不動産を失い、アパートの収益がなくなり生活ができなくなったり、住む家までも失ったりすることもないとはいえません。
まずは相続人となる家族と不動産をどのように相続するのか、しっかり話し合っておきましょう。

執筆者
杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー)
みはまライフプランニング代表
■保有資格
CFP(R)、1級FP技能士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント
「働く人たちの夢をかたちにする」会社員とそのご家族等へのキャリアプラン(生活)とライフプラン(家計)の相談と講義、執筆を行っている。

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