2023.01.31
税金

贈与税の申告が必要な人|非課税になるケースなど基本を解説

親子間などにおいて多くの資金や財産を贈与するケースでは、贈与税が課せられます。贈与税の課税方法には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2種類があるため、両方の特徴を知り、適切な方法は何か把握しておくことが大切です。本記事では贈与税の仕組みや申告の方法、申告期限に遅れた場合のリスクについて解説します。

 

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贈与税とは?

贈与税は、贈与により財産を取得した個人に課せられる税金です。贈与とは、当事者一方が相手方に無償で自己の財産を与える意思表示をして、相手方がそれを受け入れる契約のことを意味します。

贈与税の課税方法には「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2種類があり、それぞれ計算方法が異なります。

◆土地の贈与税については、こちらの記事をご覧ください。
土地の贈与税とは|計算例や土地評価額の出し方、節税方法

暦年課税制度

暦年課税制度では、贈与した人(贈与者)との贈与を受けた人(受贈者)の関係によって、一般税率と特例税率のどちらかが適用されます。財産を取得した人が、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であり、直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与にあてはまる場合では特例税率が適用され、その他の場合は一般税率が適用されます。

贈与税の税率は、年間の合計贈与金額から基礎控除(110万円)を引いた額に対して10%~55%が適用されます。一般税率と特例税率の速算表は以下をご覧ください。

・一般税率

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1000万円以下 1500万円以下 3000万円以下 3000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

 
・特例税率

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1000万円以下 1500万円以下 3000万円以下 3000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

参考:国税庁 – No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

たとえば贈与財産が600万円という場合、基礎控除110万円を引き、490万円が課税価格となります。速算表にあてはめると、以下が一般税率の計算式です。

490万円×30%(税率)-65万円(控除額)=82万円

 
もしも特例税率の場合だと、計算式はこちらです。

490万円×30%(税率)-90万円(控除額)=57万円

 

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、遺産相続の税務上の負担を軽減することで、生前贈与を促進するために設けられた制度です。贈与する財産に対して贈与税を支払い、その後の相続時に生前の贈与財産を相続財産にくわえて相続税を計算し、生前贈与のときに支払った贈与税を相続税額から控除して精算します。

この制度を利用すると、贈与者1人に対して2,500万円までの財産にかかる贈与税を非課税にできるというメリットがあります。もしも贈与が2,500万円を超える場合には、その後一律20%の贈与税が課税されます。

一度この制度を利用すると、同じ贈与者からの贈与はすべて2,500万円の非課税枠の範囲で合計されるため、たとえ同じ贈与者からの贈与が110万円以下だとしても、その都度申告しなければなりません。そのため、事務手続きの負担が増えたり、申告忘れが起こりやすくなったりする点はデメリットと考えられます。

贈与税の申告が必要な人とは?

贈与税の申告が必要な人を、2つにケースに分けて解説します。

1年間に110万円を超す金額を受け取った場合

贈与税には110万円の基礎控除があります。したがって、贈与による財産の価格の合計額が110万円以下であれば贈与税は課税されず、申告の必要もありません。反対に、年間で110万円を超える贈与財産を取得した場合は、申告・納税の義務が発生します。

なお、基礎控除はその年の1月1日から12月31日までの間に個人から贈与を受けた価格の合計額から控除しますが、贈与者ではなく贈与を受けた人1人につき年間で110万円の基礎控除額があります。

相続時精算課税制度の適用を受ける人から財産を受け取った場合

相続時精算課税制度を利用する場合は、金額の多寡にかかわらず、贈与税の申告・納付が必要です。この制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与財産は申告した年以降すべてこの制度が適用されますので、暦年課税へと変更することはできません。

贈与税が非課税になるケースと特例制度について

贈与財産が「非課税財産」に該当する場合、贈与税は非課税になります。非課税財産には以下の4つが該当します。

➀法人からの贈与財産
法人からの贈与財産は、一時所得または給与所得として所得税・住民税が課税されますが、贈与税は課税されません。

②扶養義務者からの生活費、教育費
扶養義務者からの通常必要と認められる生活費や教育費には、贈与税は課税されません。

③社交上必要と認められる香典、贈答、見舞い、祝物など
個人からの香典、贈答などを受けた場合は、贈与されたものが社会通念上相当と認められる範囲内であれば、贈与税は課税されません。

④相続開始年の贈与
相続や遺贈によって財産を取得した場合、相続を開始した年に被相続人から贈与により取得した財産は相続税が課税されるため、贈与税は課税されません。

 
また、贈与税には以下に挙げるように特例制度が設けられています。

➀贈与税の配偶者控除
一定の要件のもとに配偶者から居住用不動産またはその購入資金を贈与された場合に、贈与税の課税価格から基礎控除にくわえ2,000万円を控除できる制度です。

②教育資金の一括贈与に係わる贈与税の非課税措置
直系尊属(父母や祖父母など)から、30歳未満のひ孫・孫・子へ教育資金を贈与した場合、受贈者1人につき1,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。

③結婚・子育て資金の一括贈与に係わる贈与税の非課税措置
直系尊属から、18歳以上50歳未満の子や孫などへ結婚・子育て資金を贈与した場合、受贈者1人につき1,000万円までの贈与税が非課税となる制度です。

④直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度
直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築などに充てるための資金を取得した場合において、一定の要件を満たすときは贈与税が非課税となる制度です。

 

財産の価格は「取得時の時価」で計算される

不動産など金銭以外の財産を贈与する場合、財産の価格は「取得時の時価」で計算されることが相続税法で定められています。時価の評価方法は法律による取り決めがないため、国税庁が定めた「財産評価基本通達」にしたがって行われるのが一般的です。

贈与税の申告について

贈与税を申告する場合の具体的な手続きについて解説します。

贈与税を申告する流れ

贈与税の申告は、暦年課税、相続時精算課税制度のいずれも、贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日までが原則です。申告の際は、受贈者の住所を管轄する税務署へ贈与税申告書を持参、または郵便で送付します。

贈与税は物納制度がなく、金銭で一時に納付するのが原則ですが、一定の要件のもとに延納という方法で分割納付が認められており、延納期間は5年以内です。適用要件は以下の通りです。

・贈与税額が10万円を超えていること
・金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること
・「延納申請書」および「担保提供関係書類」を期限までに提出すること
・担保を提供すること(延納税額が50万円未満、かつ延納期間が3年以下ならば不要)

贈与税の申告方法

申告書は、受贈者の住所を管轄する税務署へ持参または郵便で送付します。国税庁ホームページで申告書を作成した場合は、申告書をe-tax(電子申告)により送信して申告することもできます。

贈与税申告の必要書類

贈与税の申告時は、➀贈与税申告書②本人確認書類(マイナンバーカードの写しなど)の2点が必要です。そのほかにも、状況に応じていくつかの添付書類が必要です。

暦年課税制度において一般税率を適用する場合は特に必要になる書類はありませんが、特例税率を適用する場合は贈与を受ける人の戸籍謄本を添付する必要があります。

また、相続時精算課税制度を利用する場合は、以下の書類を添付する必要があります。

・相続時精算課税選択届出書(以下「選択届出書」)
・受贈者の戸籍謄本(抄本)※受贈者が贈与者の孫ならば子の戸籍謄本(抄本)
・受贈者の戸籍の附票の写し
・贈与者の住民票の写し

贈与税の申告期限

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与を受けた人の住所地の所轄税務署へ申告書を提出します。贈与者でなく受贈者の住所地であることと、提出期間が所得税とは異なることには注意が必要です。

贈与税の申告期限に遅れる場合

贈与税を期間内に申告しなかった場合、加算税や延滞税が課せられる可能性があります。申告に遅れるケースとして多いのが、うっかり申告し忘れていたというケースです。この場合は5~20%の無申告加算税が課せられます。無申告加算税は、自主的に申告した場合は5%、税務署の指摘を受け税務調査前に申告した場合は10~15%、税務調査後に申告した場合は15~20%の税率で課せられます。

申告したものの納税額が少なかった場合は、0~15%の過少申告加算税が課せられますが、このケースは税務調査で指摘された場合のみです。

もしも故意に申告をしなかった場合だと、35~50%の重加算税が課せられます。脱税とみなされ刑事罰の対象にもなりかねないので、決して行わないようにしましょう。そのうえ、納付が一日でも遅れると、遅れた日数分の延滞税が贈与税(本税)に加わります。延滞税の税率は納付が遅れた期間に応じて決まり、また年度によって税率は異なるため、国税庁のホームページで確認するようにしてください。

参考:国税庁 – No.9205 延滞税について

贈与税申告についての不明点は税務署や税理士へ相談を

贈与税の申告は、金額がさほど多くないケースだと個人で対応することも十分可能です。しかし、金額が大きい場合や特例を利用する場合では、必要書類を複数添付しなければならず手続きが複雑になるため、個人では難しいケースもあるでしょう。もし書類に不備などがあると手続きが遅れてしまう可能性もあるので、心配な人は事前に税務署や税理士へ相談することをおすすめします。

贈与税の申告は速やかに実施しよう

贈与税の仕組みは一見難しいようですが、暦年課税と相続時精算課税制度の2つの特徴を理解すれば、大体の計算はできるでしょう。実際に申告をする場合、金額によっては複数の書類が必要になるケースがあります。不安な人は税理士へ相談することがおすすめです。なお、申告期限を過ぎてしまうと、ペナルティを課せられる可能性があります。特に金額が大きい場合は速やかに手続きすることを心掛けましょう。

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