リフォームを上手に活用すれば税金を低く抑えることができます。今回はリフォームを節税につなげるためのポイントをご紹介します。
リフォームを節税につなげるには、かかった費用を「修繕費」と「減価償却費」のどちらに計上するかが重要です。それぞれの特徴について見ていきましょう。
1つは不動産投資につきものの「修繕」です。共用部分の蛍光灯の交換や各貸室の給湯器などの設備は常に修理します。入居者の退去後には貸室の原状回復のため損傷部の修理、場合によってはリフォームが必要です。また、外壁塗装や屋根の防水工事といった大規模修繕もあります。修繕費は原則、直した年分の経費です。
減価償却費は事業用の資産の経年劣化や使用による価値の減少を費用としたものです。建物や設備・備品といった購入価額が高い固定資産について減価償却を行い、価値が減少した部分を費用として計上します。償却方法には毎年同額を費用計上する「定額法」と、初めの年ほど多く、年数が経つにつれて計上額が少なくなる「定率法」の2つがあります。計算式はそれぞれ次のようになっています。
▽定額法
「固定資産の取得価額」×「定額法の償却率」
▽定率法
「未償却残高(前年度の期末の固定資産残高)」×「定率法の償却率」
償却率は「これくらいの期間ならもつだろう」と法律で資産ごとに決められた年数(法定耐用年数)によります。定額法・定率法のどちらを用いてもよいのですが、1998年4月1日以降取得した建物、2016年4月1日以降取得した建物付属設備や構築物は定額法(または旧定額法)だけしか認められません。
結論から言うと、修繕費のほうが減価償却するよりも節税効果が高いのです。同じ30万円の支出でも全額を費用計上できれば30万円分の節税効果が期待できますが、いったん資産計上した後10%ずつ減価償却するとなるとたった3万円しか費用計上できません。
原則、現状維持や原状回復のための費用は修繕費として全額計上できます。ただし、使用可能期間が以前よりも長くなったり、資産価値が向上したりするリフォームだと、全額費用にはできません。資産計上することになります。
リフォームで節税するには修繕費として計上するのがベストです。そのためには次の4つのポイントを知っておく必要があります。
税務上の大原則として「取得価額が10万円未満または使用可能期間が1年未満の固定資産は、事業用として使い始めた年分の必要経費にしてよい」というものがあります。言い換えると「10万円以上あるいは1年以上使える固定資産はすべて資産計上」ということなのですが、実際には次のような特例があります。
多くの賃貸オーナーは青色申告の適用を受けているかと思います。備品や家具のリフォームを行うなら30万円未満のものを探すとよいでしょう。ただし、年間300万円が限度です。
なお、判定を消費税込みで行うか否かについては、帳簿付けを税込みで行っているなら「本体価格+消費税」で、税抜きで行っているなら「本体価格のみ」で判断することになります。ただし消費税の免税事業者ならばすべて税込みで判断しなくてはなりません。
壁や階段など1つの資産について定期的に修繕を行うときのチェックポイントです。その修繕のタイミングがおおよそ3年以内の期間を周期的として行われることが実績として証明できるのならば、内容に関係なく修繕費として計上できます。また、仮に3年以上の周期での修繕だとしても、1回当たりの設備の修繕が20万円以下なら修繕費としてかまいません。
すでに伝えた通りですが、修繕費か固定資産になるかは、次のように判断します。
この他、用途変更のための工事費も固定資産として計上することになります。修繕費とするならあくまでも現状維持の範囲内に収めたほうが得策です。
ただ、それでも修繕費か否かの判断がつきにくいことがあります。そのようなときは、次の指標で判断していくとよいでしょう。
上記いずれかに該当すれば、修繕費として一括費用計上することができます。もし、どちらにも該当しないのであれば原則資産計上することになります。
ただ、定期的な修繕で高額なものについては、「支出額×30%」または「前期末の取得価額×10%」のいずれか少ないほうを修繕費として計上し、残りを全額、資本的支出に計上しておけば、修繕費とすることができます。
以上がリフォームでの節税のポイントです。ただ、これは「賃貸事業を長く継続して現金を節約する」ためのものに過ぎません。賃貸物件をなるべく早く売りたいのならあえて資産計上するのも1つの方法です。
売却利益を圧縮すればその分節税になります。また、節税のために赤字を増やし過ぎてしまうと、融資の審査が通りにくくなるかもしれません。「賃貸事業をどうしたいか」を軸に、全体のバランスを考えて判断するとよいでしょう。
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