2023.02.04
賃貸経営

「インターネット無料」で入居率改善!メリットと注意点まとめ

所有物件にインターネットを無料完備することで、入居率アップを目指したり、入居者の満足度を高めて退去を減らしたりしたいと考える賃貸オーナーが増えています。この記事では、インターネット導入のメリットや、導入できるインターネット回線の種類、費用相場、注意点などについて解説します。賃貸経営中の物件をインターネット無料にした場合の費用対効果を見極めて、導入後の収益改善に役立ててみてください。

【著者】水沢 ひろみ

 

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インターネット無料の物件は入居者からのニーズが高い

近年では、インターネットにつながりさえすれば、部屋にテレビは要らないという人が増えています。そのため、インターネット無料の物件は入居者からのニーズが非常に高くなっています。

実際に、全国賃貸住宅新聞が2022年に賃貸住宅における人気設備の調査を行い、「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」というランキングにおいて、単身者向け・ファミリー向け共に「インターネット無料」が7年連続で堂々の1位でした。

また、「2022年に入ってから部屋探しの顧客の希望が大幅に増えた設備」の1位が「インターネット無料」となっており、2位も「高速インターネット(1Gbps以上)」という結果でした。感染症の流行をきっかけとして急速に在宅勤務の必要性が高まったことで、インターネットに対する需要が増加していることが伺えます。

そのほか、「この設備がなければ入居が決まらない」ランキング(単身者部門)でも、「インターネット無料」は、室内洗濯機置き場、テレビモニター付きインターフォンに次いで3位にあがっています。

これらの結果から、特に単身者向けの賃貸物件においては、物件にインターネット無料を完備することは優先的に導入するべき設備のひとつといえるでしょう。

参考:全国賃貸住宅新聞 – ネット無料、安定の2冠【人気設備ランキング2022】

賃貸経営にインターネットを導入するメリット

賃貸経営にインターネットを導入するメリットとしては、一般的に以下の内容が考えられます。

入居率改善が期待できる

パソコンやスマートフォンを利用し、インターネットを使って音楽を聴いたり、動画を閲覧したり、ネットショッピングをしたりすることで、生活の幅は格段に広がります。今はスマートフォンがあれば、ほとんどの情報は検索できる時代です。公共施設やホテル、飲食店などでも、無料で利用できるWi-Fi設備を整えているところが一般的になっています。

このことからもわかるように、賃貸物件の部屋探しをする人がインターネット環境を重視するのは当然といえるかもしれません。

以下のグラフは、総務省がインターネット利用率の推移を調査した結果を表したものです。2021年時点のインターネット利用者の割合は 全体で82.9%となっており、13~59 歳の年齢層では9割を超えていました。

【インターネット利用率(個人)の推移】

参考:総務省 – 令和3年通信利用動向調査の結果

また、NTTドコモ モバイル社会研究所が2022年1月、全国の15歳~79歳の男女7050人を対象にWeb調査を行ったところ、スマートフォンの所有率は94%に達しているという結果になっています。
参考:モバイル社会研究所 – 第1章 携帯電話の所有・利用状況

さらに、Job総研が18~50代の社会人男女2,235人(1年以内~10年以上勤務)を対象に行った「2022年スマホ使用の実態調査」でも、スマートフォン所有率は99.1%という結果となっています。(2022年8月31日~9月5日にWeb調査)
参考:Job総研 – 2022年 スマホ使用の実態調査

これほど普及している状況を考慮すると、インターネット環境は今や電機・ガス・水道と同様に生活には欠かせないライフラインと考えてもよいかもしれません。もちろんスマートフォンはインターネット環境がなくても使用できますので、すべてのスマートフォン所有者がインターネットを必要としているとは限りません。

しかし、通信量によって料金が変わる場合などもあり、Wi-Fiに接続して利用するならば、スマートフォンを所有して使うことによるメリットは大きくなります。もし自分の所有する物件にインターネット環境を整えていないなら、インターネット無料を完備することで入居率の大幅な改善が期待できるかもしれません。

賃料アップが期待できる

賃貸経営にインターネットを導入することで、入居率の改善につながるだけでなく、賃料アップも期待できます。

先述のように、インターネットは生活に欠かせない設備となっています。そのため、もしもインターネット環境が整っていない部屋の賃料を、インターネット無料の部屋の賃料と比較するとなったら、入居者はインターネットの導入費用をプラスした価格で比べて判断する可能性があります。

ただし、オーナーが一律にインターネットを導入した場合の費用と比較すると、個人で導入する際の費用は割高になってしまいますので、同じ条件の物件であってもインターネット環境が整っていない部屋のほうが割高になってしまう可能性が高くなります。

これがもし「なくても差し支えない」という設備であれば、導入費用を考慮しない家賃のみで判断する人が多くなると考えられるので、家賃が安いほうが有利となるでしょう。しかし、インターネットは必須だと考える人にとっては、自分でインターネット回線を申し込む費用や手続きの煩雑さ、また入居後すぐに使えるという利便性を考えると、多少賃料が高くなってもインターネット無料の物件のほうに魅力を感じるはずです。

そのことを踏まえると、インターネットを無料で提供するという付加価値の分、賃料を上乗せしても十分に需要はあると考えられます。

また、現在の入居率が悪いため、賃料の値下げを考えているという場合でも、インターネット無料を完備することで、賃料を下げる必要がなくなる可能性があります。これは、先述の全国賃貸住宅新聞の調査にあった「周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」というランキングで、インターネット無料が1位という結果からも分かるでしょう。

他物件との差別化につながる

不動産ポータルサイトでは、サイト閲覧者が物件の検索条件を絞り込むことができ、その条件のうちのひとつに「インターネット無料」があります。そこで、ポータルサイトのひとつであるSUUMO(スーモ)を使って、以下の条件で検索してみました(2022年11月10日時点)。

南阿佐ヶ谷駅
ワンルーム
徒歩20分以内

 
すると、該当する物件は2,610件という結果になります。同様の条件で「インターネット無料」と絞り込むと、505件となります。

この結果を見る限り、南阿佐ヶ谷駅でインターネット無料が完備されている物件は全体の5分の1ほどに留まっていることが分かります。「2022年に入ってから部屋探しの顧客の希望が大幅に増えた設備」の1位であるにもかかわらず、実態としてはまだまだ導入が追い付いていないのかもしれません。

単身者向けでは「この設備がなければ入居が決まらない」ランキングで3位に入るほど、需要がある設備ですから、単身者向けの物件のオーナーであれば「インターネット無料」は是非検討したい条件です。

そのうえ、「インターネット無料」とすることで、インターネット未導入の多くの競合物件に対して差別化を図ることにつながります。このことからも、賃貸経営にインターネットを導入するメリットは非常に大きいといえます。

賃貸物件で導入できるインターネット回線とは

賃貸物件で導入できるインターネット回線には、大きく分けると、光ファイバーなどを利用した有線回線と、Wi-Fiなどを利用した無線回線の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットについて以下に解説します。

有線回線(光ファイバーなど)

有線回線方式は、それぞれの部屋までインターネット回線を直接引いて利用する方法です。固定回線となり、必要に応じてWi-Fiを設置します。コンセントのそばの接続口(LANポート)にLANケーブルをつないで使用します。

有線回線方式には、光回線、ケーブルテレビ、ADSLの3種類があります。

有線回線のメリット

接続工事を行い、各部屋までインターネット回線を直接引いているため、高品質な通信環境が整えることができます。具体的なメリットとしては以下が挙げられます。

・通信速度が速い
・部屋の広さや建物の構造によって、電波が影響される心配がない
・回線が安定しているのでストレスなく利用できる

 

有線回線のデメリット

有線回線は上記のように通信速度が速く、回線が安定しているメリットはありますが、以下のようなデメリットもあるので、それぞれを勘案して選択するとよいでしょう。

・それぞれの部屋でインターネット回線を引き込むための工事が必要になるので、入居者がいる場合には日程などの調整が必要になる
・申し込みから工事完了まで1~3カ月程必要になる
・インターネットを使うためには、LANケーブル等の配線や設定作業が必要となる
・導入費用は、無線回線に比べると2~3割高くなる
・入居者がWi-Fiを利用するには、無線Wi-fiルーターを各自で用意しなくてはならない

 

無線回線(Wi-Fiなど)

無線回線方式は、アパートの共用部や外壁までインターネット回線を引き、そこにWi-Fi機器を設置して、各部屋で電波を受信して利用する方法です。

無線回線のメリット

無線回線のメリットは、以下のように手軽さや導入費用の安さにあるといえます。

・共用部のみの工事で済み、各部屋の工事が不要なので導入しやすい
・Wi-Fi機器が共用部にあるので、不具合が生じた時には速やかに対応できる
・初期費用・月額利用料等のランニングコストが安い
・工期が早く、最短で1日で導入可能
・各部屋では、IDやパスワードを入力するだけで簡単にインターネットが使用できる
・モデムやLANケーブ等の設備を入居者各自が用意する必要がない

 

無線回線のデメリット

無線回線は導入しやすいことがメリットですが、以下のようなデメリットもあります。

・有線回線に比べると通信速度が遅くなる
・回線が不安定で、建物の構造や広さによっては電波が弱くなる可能性がある
(※目安としては、木造2階建までのアパートで、40㎡程度の広さまで)
・情報流出や不正利用の可能性があるため、セキュリティ面では注意する必要がある

 
これらのデメリットが原因で入居者からのクレームが生じる可能性がありますので、無線回線はそれぞれの部屋に電波がきちんと届くのかを調べた上で導入することが大切です。各業者に説明を求め、確認することを忘れないようにしましょう。

「インターネット無料」と「Wi-Fi無料」は何が違う?

「インターネット無料」と「Wi-Fi無料」、どちらも同じではないかと考える人がいるかもしれませんが、厳密には違いがあります。

「インターネット無料」物件では、物件のオーナーがインターネット回線の費用を負担し、入居者は無料でインターネット回線を利用できるシステムになっています。しかし、インターネット回線だけではスマートフォンやタブレットでインターネットを使うことはできません。スマートフォンなどで使う場合には別途Wi-Fiが必要だからです。

「Wi-fi無料」物件は、各部屋にWi-fiルーターが備え付けられているため、入居者がWi-fiを用意する手間やコストがかかりません。スマートフォンやタブレット端末を使うことが多い入居者にとっては、インターネット無料よりもWi-Fi無料のほうが魅力的な場合が多いかもしれません。

インターネット導入の費用相場

インターネット導入にかかる費用は、回線が有線か無線かだけでなく、アパートの戸数や構造などの規模によっても大きく開きがあります。また、インターネット回線をアパートに引くための工事費用や、Wi-fi設置工事の費用などの初期費用のほか、保守費用などの月々の費用も発生しますが、こちらもケースによって異なります。

おおよその目安としては、初期工事費用が10~40万円程度、月額のランニングコストが1万円~2万円程度となりますが、インターネット業者やプランによっても大きく違いがありますので、実際に導入する場合には複数の会社に見積もりを依頼して比較してから判断することをおすすめします。

アパートの戸数:10戸
月額ランニングコスト:1万円
初期費用:10万円

 
上記のケースでは、1戸当たりの月額ランニングコストは1,000円です。つまり、2,000円を家賃に上乗せできるのであれば、毎月のキャッシュフローは1万円のプラスとなります。

(2,000円-1,000円)×10戸=1万円

初期費用10万円は、この1万円のプラスにより10カ月で回収可能となり、その後は毎月のキャッシュフローが1万円ずつ増えていく計算になります。そのほかの条件にもよりますが、インターネットを導入することで、長期的にはキャッシュフローが改善する可能性も期待できるといえます。

インターネット導入にあたり注意すべき点

最後に、インターネット導入にあたり注意すべきポイントをお伝えします。インターネットの導入にはそれなりのコストがかかりますし、導入の方法も複数ありますので、後悔しないように慎重に進めてみてください。

費用対効果を考える必要がある

インターネットの導入には初期費用やランニングコストが発生しますので、ターゲット層に需要はあるのか、賃料アップは見込めるのかを見極めてから導入する必要があります。

物件の立地条件や間取りなどによって、ターゲットとなる入居者には特徴があるはずです。たとえば、比較的高齢者が多いのか、大学生などの若者が多いのか、サラリーマンが多いのか、といった具合です。

高齢者が多い場合には、インターネット導入の効果はあまり期待できないかもしれません。また、サラリーマンの場合は会社でインターネットを利用できれば十分というケースもあり、そこまでインターネット環境を必要としていないケースもあるでしょう。

所有している物件の入居者の特徴などからターゲット層のニーズを見極めて、インターネット導入の費用対効果を考えることをおすすめします。

解約時に違約金が発生する場合がある

「入居率改善を期待してインターネットを導入してはみたものの、期待したような効果は得られなかった」という場合、そのままインターネット回線の契約を続けてもランニングコストがかかるために、契約解除を検討することになるでしょう。

しかし、インターネット契約に利用期限が設けられている場合には、解約時に違約金が発生するケースもあるので注意が必要です。契約の際には、初期費用やランニングコストの安さだけではなく、このように解約時に発生する違約金がないかどうかも含めて判断することが大切です。

通信速度が遅いとクレームの元になる

アパートにインターネットを導入した後、ひとつの回線を複数の人が同時に利用する場合、通信速度が遅くなって利用に支障がでる可能性があります。

全国賃貸住宅新聞によると、近年は在宅勤務の広がりやオンライン授業などの浸透で日中のインターネット利用者が増加していることから、通信速度に関するクレームが増加している現状にあるようです。インターネットへの需要が増えたことで、単に「使えれば良い」というだけでなく、「通信速度が安定した環境で問題なく使いたい」というインターネット環境へのニーズが高まっていると考えられます。

このような状況の下では、通信速度が遅いとクレームの元になる可能性が生じます。インターネットの導入の際には、通信速度や安定性なども比較して判断することが重要となるでしょう。

導入方法によっては大きな工事が必要になる

鉄筋コンクリート造など、構造によっては無線回線方式では各部屋まで電波が届かないケースもあり、アパートの規模や構造などによって導入可能な方法は異なります。導入方法によっては大きな工事が必要となりますので、そのための費用や手間といったコストも見積もる必要があります。

「インターネット無料」で入居率を改善し収益アップにつなげよう

リモートワークやオンライン授業、オンライン会議など、インターネットの重要性が高まっている近年では、インターネット無料を入居条件に含める人が増えています。一方で、インターネット導入にはコストがかかったり、導入の仕方によってはクレームにつながったりするリスクもあることから、慎重に判断することも重要です。

導入による費用対効果を事前にしっかりシミュレーションしてから、インターネットを導入するのか否か、どのような形態にするのかを判断することをおすすめします。「インターネット無料」で入居率を改善し、収益アップにつなげていきましょう。

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