2021.02.12
賃貸管理

賃貸借契約とは?2つの種類とオーナーが負う義務を解説

不動産の賃貸借契約には「普通」と「定期」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。また、オーナーはどのような義務を負うのか、ポイントをチェックしてみましょう。

賃貸借契約とは何か、その種類は?

賃貸借契約とは、当事者の一方である借主が、相手方である貸主からある物(賃貸不動産など)を有償で借り受けて賃料を支払い、その物(賃貸不動産など)自体を使用(入居など)、または借り受けた物を活用して収益を得たあとに返還する契約のことです。

賃貸借契約には、「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。それぞれの違いは以下のとおりです。

「普通借家契約」

契約期間は2年間が多いようですが、1年以上で自由に設定できます。期間が1年未満の場合は、借主保護の観点から借地借家法により、期間の定めがない建物の賃貸借と見なされます。

中途解約については、賃借人(入居者)から申し出る場合、中途解約の特約があれば解約できます。特約がない場合でも、賃貸人と双方で合意すれば解約できるなど、比較的柔軟です。一方賃貸人から申し出る場合は、双方が合意したケースを除き、賃借人が居住継続を望む限り賃貸借契約を解約することはできません。

契約の更新については、当事者が期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に、契約更新をしない旨の通知をしない限り、同じ条件で契約更新したものと見なされます。

家賃の増減額請求については、値下げを請求する権利を排除することは、賃借人に不利になるため認められません。一方値上げをしない特約は、賃借人の不利にならないため認められます。

「定期借家契約」

契約期間は、特に制限はなく当事者間で決めることができます。1年未満の契約でも有効です。

中途解約は、一部のやむを得ない事情がある場合を除き、原則的にできません。特約を結ぶことで中途解約が可能になる場合もありますが、「予告期間をもって中途解約できる」「残期間の賃料に相当する金額を違約金として支払う」などの条件が設定されます。

契約の更新については、期間満了によって確定的に終了するため、更新はありません。継続を希望する場合は更新ではなく、双方合意の上で再契約することになります。
定期借家契約の場合は書面による契約が義務付けられています。あらかじめ、借主に対して書面で契約の更新がないこと、期間の満了で契約が終了することを説明する必要があります。

家賃の増減額請求については、普通借家契約と同じように認められます。

◆賃貸借契約の電子契約については、こちらの記事を参考にしてみてください。
賃貸借契約の電子契約は今後どうなる?早めに確認しておこう

オーナーが負う義務とは?

賃貸借契約において、オーナーはどのような主に以下の2つの義務を負います。

使用収益させる義務

民法601条に、「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」とあります。建物の賃貸借でいえば、賃貸人は賃借人に建物を使用収益させる義務を負っていることになります。

よくある義務違反の例としては、他の賃借人が起こした騒音や悪臭を放置して、受容限度を超えてしまうケースです。これではまともに使用収益させることができないため、賃貸人の義務に違反したことになります。

修繕する義務

民法606条1項に、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」とあります。修繕の義務もトラブルの多い要件ですが、修繕の義務をどの範囲まで負うかが問題です。賃貸人に修繕の義務があるかどうかを判断する基準は、「修繕しなければ賃借人が、契約の目的に従った使用収益ができない状態であるかどうか」です。

たとえば、雨漏りや漏水が発生している場合は、通常の生活を送ることに支障があるため、修繕の義務が生じます。しかし、クロスにカビが生えている程度では、使用収益を達成できないとは言えないため、賃貸人に修繕の義務が生じる可能性は低いです。

ただし2020年4月に施行される民法改正で修繕義務の規定にも変化があり、「賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき」もしくは「急迫の事情があるとき」には、賃借人による修繕も可能になります。

また、賃借人の責任で何らかの修繕が必要となった場合は、賃貸人には修繕の義務が発生しないことが明文化されました。

賃貸借契約では賃借人の権利が優遇されていますが、オーナーは義務が生じる基準を正しく理解して、対応すべきケースとそうでないケースを分別するような、メリハリのある経営が求められます。

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