2021.06.21
賃貸管理

客付けは自分で行える?自主管理の大家さんが客付けする際の注意点

自主管理の大家さんにとって、大きな問題になるのが客付けする方法です。入居者の募集は不動産会社に依頼するのが一般的ですが、自分で客付けすることは可能なのでしょうか。また、自分で客付けする場合にどんな問題があるのかも気になるところです。この記事では、自主管理で客付けするメリット・デメリットと、客付けする際の注意点を紹介します。

自主管理で客付けする4つの方法

はじめに、賃貸住宅で自主管理しているオーナーはどの程度いるのでしょうか。国土交通省が行った「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」によると、所有している賃貸住宅の管理方法として、「業者に任せず、全て自ら管理している」と答えたオーナーが約19%で、全体の2割ほどにとどまっています。残り8割ほどのオーナーは、「入居者募集から契約、それ以降の管理も全て業者に委託している」または「入居者募集や契約、それ以外の管理業務の一部を業者に委託している」と答えています。

自主管理の大家さんにとって、一番難しいのが客付けではないでしょうか。アパート・マンションの収益のほとんどは家賃ですから、客付けが上手くいくかどうかで経営が左右されるといっても過言ではありません。自主管理で客付けする方法を考えてみましょう。以下4つの方法が主となりそうです。

1.物件自体を広告にする=「入居者募集」の貼り紙を行う

お金をかけずにできる入居者募集の方法が、物件自体を広告にする貼り紙です。インターネットや賃貸住宅情報誌の場合は、写真と物件のデータで判断されますが、貼り紙や立て看板は直接物件を見てもらえます。センスがよくきれいな建物であれば、興味を持った人が問い合わせてくることが期待できます。貼り紙はパソコンで自作できるので、一度フォーマットを作れば定期的に交換できます。

立て看板については、壁に取り付けるプレート状のものなら、通信販売を利用すると5,000円程度で購入できます。空き地でよくみかける「売土地」の野立て看板の場合は、2本の支柱で打ち込めるもので、格安業者に依頼すると3万円程度が相場です。

2.SNSやブログなどで宣伝する

いまはインターネットでいくらでも情報の発信が可能です。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログは原則として無料で利用できます。不動産情報サイトの物件情報では掲載スペースに限りがありますが、ブログを開設すれば物件をより詳しく紹介できます。

ブログへの掲載する情報は、間取り図や特長のほか、物件の写真をたくさん掲載することが重要です。部屋の様子や周囲の環境などがよくわかる写真を掲載しましょう。清潔な印象を与えるためにも明るめな写真を選ぶとよいでしょう。また、大家さんとしてのごあいさつ文と、住所、電話番号、メールアドレスなどを載せて、問い合わせを受けられるようにします。これにより、単なる物件情報に比べ、大家さんに親しみを持ってもらえるメリットがあります。

ブログは不動産会社が独自に制作しているものもありますが、Amebaなどの無料登録できるものであれば、コストをかけずに運営することが可能です。写真や間取り図のアップは慣れてしまえばそれほど難しいものではありません。

もう1つ、SNSに写真や物件に関する情報を掲載し、入居希望者と直接やりとりできる方法もあります。コミュニケーションツールとして利用者が多いSNSですが、代表的なものに「Facebook」「Twitter」「Instagram」「YouTube」「TikTok」などがあります。

SNSには、投稿に対してのコメント・返信機能があり、アカウントにダイレクトメッセージを送信することが可能です。大家さんが入居者募集に関するすべての業務を行わなければならないため手間がかかりますが、一定の反響は見込めるでしょう。

SNSの魅力は拡散力の強さです。よい投稿であれば気に入った読者が広めてくれる可能性があります。半面、読者の反感を買う内容だった場合は炎上するケースもあるため、ブログに比べるとリスクが高いかもしれません。

3.大家さんが直接掲載できる不動産情報サイトで情報発信する

大家さんが個人的に情報発信をしても、拡散力には限界があるでしょう。そんなときは、自分の物件情報を直接掲載できる大型の不動産情報サイトを利用する手があります。「ウチコミ」「家いちば」「e-物件情報」「ジモティー」などがよく知られています。

たとえば「ウチコミ」では、物件の写真や間取り図、物件データのほかに、「この部屋の大家さんからの一言」というブログ的な書き込みができるスペースがあります。大家さんの写真も掲載できるため、かなり親しみやすい雰囲気があるのがメリットです。ユーザーから問い合わせがあった場合は、不動産仲介会社が内見・契約を行います。成約した場合、大家さんは家賃1カ月分+税の仲介手数料を支払います。

「ジモティー」も登録手数料無料で情報を掲載できます。写真、間取り図、物件データのほかに、コメントを多く書き込めるのが魅力です。データ欄に「投稿者にメールで問い合わせ」というボタンがあるので、ユーザーが直接連絡をくれるようになっています。取引が成立した場合も手数料はかかりません。

各不動産情報サイトをチェックして、自分の物件に合いそうなサイトを選ぶようにするとよいでしょう。

4.仲介会社、管理会社に客付けを依頼する

自分で客付けすることに限界を感じたら、地域の不動産仲介業者をまわり、所有する物件の客付けを依頼してみましょう。

なかには管理業務と合わせての依頼を要望する業者もあるかと思いますが、管理業務と客付けは別の業務ですので、それぞれに検討をし、交渉をするようにしましょう。

客付けの仲介を委託する場合は、契約が必要です。契約形態は「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類があります。「専属専任媒介」は、1つの不動産会社にしか依頼できません。自分で借主をみつけた場合でも、契約した不動産会社を通さなくてはなりません。自分でも客付けをしたい場合は、「専任媒介」か「一般媒介」のどちらかを選ぶ必要があります。「専任媒介」のほうが、仲介会社は積極的に客付けを行ってくれる可能性があります。

また、積極的に客付けをしてもらうためには、広告料(インセンティブ)を用意することも必要です。ここでいう広告料とは、通常の仲介業務を超えた業務に対して支払う費用をいいます。築浅物件のように早く決まりそうな物件に広告料をかける必要はありませんが、決りにくい物件は長期空室を避けるために、広告料を払っても空室を埋めたほうが結果的に得というケースがあります。1つの選択肢として検討するのもよいでしょう。

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空室対策に効く!賃貸経営における広告料(AD)の正しい使い方

自主管理で客付けするメリットとデメリット

では、自主管理で客付けすると、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

1.自主管理で客付けするメリット

自主管理で客付けするメリットは、入居者募集にかかる費用を節約できることです。不動産会社に依頼すると、広告料や仲介手数料が発生するのが一般的です。自主管理であればこれらの費用をカットできます。

次に、入居者を選別できるというメリットがあります。不動産会社任せだと、どのような入居者を紹介されるかわかりません。大家さん自らが探すことで信頼できる人と契約できる可能性が高くなります。

また、客付けまで自分で行うことにより、物件を管理する自由度が高まるため、自分の思いどおりに運営することができます。しかし、自由に運営できる分、次に紹介するようなデメリットが多いのも事実です。

2.自主管理で客付けするデメリット

自主管理で、不動産仲介業者を頼らずに客付けするデメリットは、不動産流通機構が運営しているコンピュータネットワークシステム「レインズ」に登録できないことです。不動産会社に委託する場合に比べ、入居者の決定は遅くなります。その分収益機会も逸することになります。コストダウンのつもりが、結局は利益を減らすことになりかねません。

また、自主管理で客付けした場合、入居者との契約や更新も自ら行わなければなりません。法律など専門的な知識が必要になる場合もあります。家賃の集金も自分で確認しなければならず、滞納があれば入居者への連絡が必要です。

地域的な事情としては、地方都市の場合、仲介と管理を同じ不動産会社が行っている場合があります。営業上、客付けするとき管理も委託してくれる物件を優先する可能性があります。管理を自分で行い、仲介のみを委託すると入居希望者の紹介で不利になるリスクがあります。

自主管理で大家さんが自ら客付けを行う場合の注意点

自主管理で大家さんが客付けを行う場合は、不動産会社を介さない分、注意すべき点があります。とくに契約の問題と、原状回復のトラブル回避には注意を払う必要があります。

1.賃貸契約書の作成は必ず行う

賃貸契約書の作成を行うことは、賃貸経営においては必須です。自主管理だからといって、賃貸契約書を作らずに口約束で行うことは極めて危険です。たとえ知人に貸し出す場合でも賃貸契約書をきちんと交わすことでお互いに安心できます。

賃貸契約書の書式は、国土交通省のホームページからダウンロードできます。ホームページでは「契約書本体」と「承諾書例」をWord形式またはPDF形式でダウンロードできるので、コストをかけずに作成することが可能です。

参考:国土交通省「『賃貸住宅標準契約書』について」

2.居室の現状を、必ず入居前に大家さんと入居者で行う

アパート・マンション経営でトラブルになりやすいのが、入居者が退去するときに行う原状回復です。国道交通省による原状回復の定義は、「原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」です。

定義のなかにある「善管注意義務違反」とは、正式名称を「善良なる管理者の注意義務」といい、民法の条文にも記載されています。民法第400条では、「特定物の引渡し義務を負う者は、その引渡しが完了するまではその特定物を「善良なる管理者の注意義務」をもって保存しなければならない」と定めています。アパート・マンションの賃借人も入居している期間は、注意義務を果たす必要があります。

居室の現状については入居前に大家さんと入居者で確認することが必要です。自主管理では不動産会社が立ち会ってくれることはないので、立ち合い確認を慎重に行うことで、退去時のトラブルを防ぐ必要があります。

3.退去時の原状回復費用負担について契約時に確認する

退去時の原状回復の費用負担については、契約するときにきちんと確認することが大事です。貸す側と借りる側の認識の違いでトラブルになる可能性があるからです。以下に紹介する「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をもとに、負担割合一覧表を作成するなど、わかりやすい形で入居者に説明する必要があります。

▽賃貸物件における損耗・棄損の事例区分

A〔賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるもの〕
・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
・畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)
・テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
・壁に貼ったポスターや絵画の跡
・エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡
・クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)
・壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
・地震で破損したガラス
・網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)
・鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
・設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)
B〔賃借人の使い方次第で発生したりしなかったりするもの(明らかに通常の使用による結果とはいえないもの〕
・引越し作業で生じたひっかきキズ
・畳やフローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)
・落書き等の故意による毀損
・タバコ等のヤニ・臭い
・壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替が必要な程度のもの)
・クーラー(賃借人所有)から水漏れし、放置したため壁が腐食
・天井に直接つけた照明器具の跡
・落書き等の故意による毀損
・飼育ペットによる柱等のキズ・臭い
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
・鍵の紛失、破損による取替え
・戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草
A(+B)〔賃借人のその後の手入れ等管理が悪く発生、拡大したと考えらえるもの〕
・カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ
・冷蔵庫下のサビ跡
・台所の油汚れ
・結露を放置したことにより拡大したカビ、シミ
・クーラー(賃貸人所有)から水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食
・ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すす
・風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等
A(+G)〔次の入居者を確保するための化粧直し、グレードアップの要素があるもの〕
・畳の裏返し、表替え(特に破損等はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
・フローリングワックスがけ
・網戸の張替え(破損等はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
・全体のハウスクリーニング(専門業者による)
・エアコンの内部洗浄
・消毒(台所、トイレ)
・浴槽、風呂釜等の取替え(破損等はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)

引用:国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

Aは、賃借人が普通に住んでいても発生する損傷ですので、原状回復を要求することが難しいものです。
Bは、明らかに普通の使い方では発生しない損傷ですので、借主に負担を要求できるものです。
A(+B)は、賃借人の手入れが悪い結果起きた損傷ともいえるので、借主の負担とすることが可能なものです。
A(+G)は、次の入居者を確保するためのリフォームにあたるので、賃貸人が負担する費用です。

以上のガイドラインを参考に負担割合を決め、契約書に明記をすることで、入居者とのトラブルを防止することができるでしょう。

参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」(PDF)

まとめ:自主管理と委託管理を併用し、より多くの客付けを実現しよう

ここまで、アパート・マンション経営を安定させるために必要な客付けについてみてきました。大家さんが自分で客付けすることはコストダウンにつながります。その半面手間がかかり、トラブルにも対応しなければならないなどデメリットも多くあります。

とくに原状回復の問題は賃貸人と賃借人の認識の違いからトラブルに発展する場合があります。訴訟になると大家さんだけでは対応するのが難しいでしょう。

トラブルを避けたいのであれば、管理業務の一部を管理会社や家賃債務保証会社に委託するという方法もあります。清掃・ゴミ出しなど自分でできることは行って、客付けや家賃の集金・更新業務、トラブル対応など手間のかかる部分を管理会社に委託するという考え方です。

このとき、家賃債務保証会社を利用すれば、入居者の間口は広がります。高齢者や障害者など、通常賃貸住宅では契約が難しいユーザーにも入居してもらえます。弱い立場の人の役に立てることは社会貢献にもつながり、精神的な充実感も得られます。

自主管理と委託管理のどちらかに絞るのが難しいという大家さんは、併用を検討するのも1つの方法です。自主管理と委託管理を併用してより多くの客付けを実現し、社会的弱者の人でも安心して住める場所を提供できれば理想的といえるでしょう。

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