2024.04.30
賃貸管理

賃貸借契約書を自分で作るには?ひな型や必要項目を大家向けに紹介

賃貸経営を行う大家さんには、物件の管理を専門の管理会社に任せる人と、自主管理をして自分で物件の管理を行う人がいます。自主管理は管理会社に支払う管理費の負担がないためコストはかかりませんが、その代わりに賃貸経営に関するすべての業務を自分で行うことになります。

その中でもハードルが高い業務の1つが「賃貸借契約書の作成」です。法的な効力をもつ書類だけに押さえておくべき点は多く、「本当に自分で作ることはできるのだろうか?」と思う人もいるでしょう。本記事は、自主管理大家さんや、今後は自主管理にしようと検討している大家さんに向けて、賃貸借契約書を自分で作る方法を解説します。ぜひ参考にしてみてください。

 

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賃貸借契約書は自分で作ることができる

結論からいうと、賃貸借契約書を自分で作ることは可能です。ただし冒頭でもお伝えしたように、自主管理を行う大家さんが自分で作成するためには、そのための知識や方法について覚えておく必要があります。その点、管理会社を入れていれば賃貸借契約書の作成も管理業務の一環として任せることができます。当然その書面はプロにより作成されますから、大家さんが一方的に不利になるような内容にはなりません。

この賃貸借契約書を自分で作るとなれば、もっとも重要なのは「大家さんが不利にならない内容にする」ことです。賃貸借契約書は法的な効力をもつ書面ではありますが、私文書の一種です。私文書の場合、作成するのに特別な資格は不要ですから、もちろん大家さんが自分で作ってもかまいません。

とはいえ、そこに記載されている内容に問題があると、後になって大きな問題に発展する可能性があるため、記載内容はとても重要です。つまり、賃貸借契約書は誰が作るのかが問題ではなく、何が書かれているのかが問題なのです。

賃貸借契約書を自分で作るのに必要な項目

賃貸借契約書を自分で作る場合に必要な項目を見ていきましょう。多岐に渡るため、本章では8つの項目に分けてそれぞれ紹介します。

1つ目:物件情報

賃貸借契約書が対象とする不動産を特定します。具体的には、物件の名称・所在地・建て方(マンションの場合は「共同建」になります)・構造・該当物件の階数などです。これを特定することにより、賃貸借契約書の記載内容はその物件のみに適用されます。

2つ目:設備、残置物

物件にエアコンなどといった設備が付いている場合や、家具などの残置物がある場合に、それを賃貸借契約に適用するのであれば、このような設備や残置物について記載します。記載のない設備や残置物については契約の適用外になるため、記載しない場合は「入居者がどのように処分しても構わない」という扱いになります。

3つ目:契約期間、借家契約の種類

契約書には必ず契約期間が設けられるため、賃貸借契約書においても契約の有効期間を記載します。不動産の賃貸契約期間は一般的に2年であることが多いので、特に事情がなければ2年で設定されるのが通常です。

なお、賃貸借契約には普通借家と定期借家の2種類があります。先ほど「一般的に2年である」と述べたのは、前者の普通借家契約のことです。普通借家契約は2年の契約期間を定めることが多いですが、入居者と大家さんの双方から異論がなければ、ほとんどの場合で自動更新されるしくみになっています。

では大家さん側から契約の更新を拒否できるかというと、実際には難しく、入居者に大きな落ち度や問題がなければ契約を解除しにくいのが実情です。そのため、普通借家契約は大家さんにとって契約解除に関する自由裁量が与えられていない契約である、と考えておく必要があります。

それに対して後者の定期借家契約は、契約期間が厳格に定められており、「更新なし」という前提になっているため、契約期間が満了した時点で自動的に賃貸契約は終了します。

もちろん双方が契約の更新を望むのであれば、新たに賃貸借契約を結びなおすことで継続することはできるため、契約満了時に大家さんの意向を反映しやすい契約といえます。ただし一般的な賃貸物件の多くが普通借家であるため、定期借家の物件は入居希望者に敬遠されることがあり、借り手を見つけるために家賃を低く設定せざるを得ないケースも存在します。

普通借家契約にするか、それとも定期借家契約にするか、大家さんが賃貸借契約書を自分で作成する際にはどちらを選択するのか慎重に検討して書面に反映します。

◆定期借者契約については、こちらの記事をご覧ください。
定期借家契約のメリット・デメリットを大家さん向けに解説!

4つ目:金銭に関する取り決め

賃貸借契約書のなかでも非常に重要なのが、金銭に関する取り決めです。家賃・共益費・敷金(保証金)はいくらなのか、退去時に返還するのはいくらなのかといった金額を取り決め、契約書に記載します。

家賃については、「いつの分」を「いつまで」に支払うのかという、支払い期限に関する取り決めも必要です。それに加え、家賃の滞納が発生した場合のことも内容に含め、滞納が続いた場合は契約解除になるといった主旨の記載もあると、実際に滞納が発生したときの対応に役立ちます。

また、金銭に関する取り決めで重要なのが「連帯保証人」です。入居者本人が家賃の支払いを怠ったり支払い不能に陥ったりした場合、連帯保証人が本人に代わって家賃を負担することになります。家賃の未収を防ぐためには非常に重要な記載事項ですが、誰が保証人になるのかによって記載事項が異なります。

保証会社が連帯保証人となる場合は、「家賃債務保証業者」の欄に、業者の所在地・商号・電話番号・家賃債務保証業者登録番号を記載します。一方、個人が連帯保証人となる場合は、その人を特定するために、住所・氏名・電話番号・極度額を記載します。

この極度額というのは民法の改正によって盛り込まれたもので(2020年より施行)、連帯保証契約において連帯保証人が保証する金額の限度を定めることが義務づけられました。連帯保証人が無制限に保証を求められることによって負担が大きくなることを防ぐためのもので、連帯保証人欄に極度額の記載がなければ契約書そのものが無効になります。

◆民法改正については、こちらの記事をご覧ください。
民法改正で連帯保証人制度が変更!大家ができる対策とは?

5つ目:貸主と管理者の情報

貸主とは大家さんのことで、管理者とは、管理会社を入れている場合は管理会社に関する情報です。「誰の物件」で「誰が管理するのか」を記載し、賃貸借契約の当事者を特定します。

6つ目:入居者の情報

大家さん側の情報に続いて、入居者の情報も記載します。契約する入居者本人の情報に加えて、同居人がいる場合は同居人についての情報も記載します。もしも入居後に同居人が増えた場合は、入居者は大家さんに同意を得ることが基本です。大家さんに無断で契約者以外の同居人を住まわせることは契約違反ですから、きちんとその点を契約時に説明することが大切です。

7つ目:解約、違約金について

入居者が退去を希望する場合の通知方法と、通知する期限についての取り決めをします。加えて、大家さん側から契約を解除する場合の期限や方法についての取り決めも記載します。

一般的には入居者は1カ月前までに解約予告をするのが契約書の通例で、大家さん側からの契約解除についても6カ月前までに予告することが記載されている契約書が多いです。

また、違約金についても記載します。賃貸借契約の契約期間は一般的に2年間であることは先に述べました。もしも契約期間中に退去すると途中解約になるわけですが、違約金は発生するのでしょうか?実際にはそのような取り決めをする賃貸借契約書は少なく、「途中解約であっても予告期間までに通知したものであれば違約金は発生しない」のが普通とされます。

8つ目:ハウスクリーニング条項などの特約

一般的な取り決めに加えて、特約を設ける場合は特約事項も記載します。よくあるのはハウスクリーニング費用の負担などですが、それを含めて以下のような条項がよく見られます。

・退去時のハウスクリーニング費用負担
・タバコ関連など禁止事項(室内禁煙、ベランダ禁煙など)
・その他ゴミ出しのルール順守、迷惑行為の禁止など

これらについても賃貸借契約書にもれなく記載しておくことで、入居者とのトラブルになっても、「契約書に書かれていないから」という抗弁を防ぐことができます。

\特約条項についての詳しい内容は、こちらの動画で詳しく解説しています!/

賃貸借契約書を自分で作るメリット

ここで改めて、賃貸借契約書を自分で作るメリットについて確認していきましょう。次章ではデメリットやリスクも紹介しますので、賃貸借契約書を自分で作ることを検討している大家さんは、この両方をよく理解して判断してみてください。

コストを節約できる

賃貸借契約書を自分で作る大家さんの場合、おそらく賃貸管理全体を自主管理にしているケースが多いでしょう。管理会社に支払う管理費は家賃の5〜10%程度が目安であるため、自主管理であればその分を節約できます。1戸あたり、1カ月あたりで節約できる分はそれほど大きくないかもしれませんが、管理する戸数が多くなり自主管理の期間が長くなると、節約効果はどんどん大きくなります。

契約内容についての理解が深まる

すでにプロによって作成された賃貸借契約書であれば、わざわざ内容をそこから細かく確認するという大家さんは少ないでしょう。しかし、契約書を一から自分で作るとなると話は別です。「記載内容を間違えてしまえば、自分が不利になるかもしれない」と思えば、内容についての関心はおのずと高くなるでしょう。「自分で作る」ことを通して、契約内容を深く理解できる点もメリットです。

大家さんとしての経験値の向上が期待できる

契約内容を理解することは、大家さんにとって有益です。契約違反があればすぐにそれを察知することができますし、大家さん自身が不利にならない立ち振る舞いを常にできるようになるからです。こうしたことは賃貸オーナーとしての経験値を高め、今後さらに管理戸数を増やして事業規模を拡大していくときに大いに役立つスキルとなります。

賃貸借契約書を自分で作るデメリットとリスク

続いて、契約書を自分で作ることのデメリットやリスクについて見ていきましょう。

手間がかかる

これまでの内容を読んで、中には「面倒くさそう」「難しくて作れなそう」などと感じている大家さんもいるかもしれません。賃貸借契約書を自分で作るとなると、どうしても手間がかかるのは避けられないデメリットです。

記載内容のミスにより不利になる可能性

法的な効力を持った書類だけに、記載内容にミスがあったり漏れがあったりすると、大家さんにとって不利な契約になってしまうリスクがあります。自主管理の大家さんの場合は、作成した契約書を精査してくれる専門家がいないため、ミスや漏れに気がつかないまま契約が成立してしまう恐れがあります。

漏れによるトラブルの可能性

契約書で明記しておくべきことが明記されていないまま契約が成立すると、何か問題が起きたときにその責任の所在や解決方法が記載されていないことになるため、交渉で解決するしかありません。契約書に記載があればそれを根拠とすることができますが、根拠がない交渉はトラブルに発展する可能性が高いといえます。これも契約書を自分で作ることによって考えられるリスクです。ミス・抜け・漏れがなく意図通りに作成できるかどうかが、賃貸借契約書を自分で作成する際のポイントといえます。

賃貸借契約書の作成はひな型やテンプレートの活用がおすすめ

テンプレートなどが何もない状態から一言一句、賃貸借契約書の内容を考えていくのはとても大変な作業です。ミスや漏れの原因になりますし、プロでなければ膨大な手間と時間を要することもあります。一般的な賃貸借契約書の書面は、どの賃貸借契約であってもそれほど大差はありません。そのため、ある程度出来上がっているひな型を利用することがおすすめです。

国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」を利用する

国土交通省が作成し、公開している賃貸借契約書のひな型として、「賃貸住宅標準契約書」があります。日本全国で取り交わされている賃貸借契約書の多くがこの標準契約書をもとに作成されており、もっとも信頼できる基準と見なすことができるでしょう。

この「賃貸住宅標準契約書」には、家賃債務保証業者型(保証会社が連帯保証をする場合)と、連帯保証人型(個人が連帯保証人になる場合)の2種類があります。用途に応じて国土交通省のホームページからダウンロードできるので、ぜひご活用ください。いずれも、お手本として使えるPDF版と、編集してそのまま契約書として使えるWord版の2種類があります。

▽国土交通省の公開する賃貸住宅標準契約書

【出典】国土交通省『賃貸住宅標準契約書』について

インターネット上で手に入るひな型を利用する

国土交通省の賃貸住宅標準契約書以外にも、インターネット上で賃貸借契約書のひな型を見つけることができます。以下に挙げておきますので、ひな型のデータをダウンロードし、必要箇所を編集して賃貸借契約書として利用してみてください。

「賃貸契約書・賃貸借契約書」の書式テンプレート(bizocean)
建物賃貸借契約書(一般社団法人日本民事紛争等和解仲介機構)
賃貸借契約書テンプレート(経費削減実行委員会)

これらのほかにも多くのテンプレートが配布されていますが、基本的にどの契約書も国土交通省の標準契約書に準拠した内容になっているため、確実性を高めるのであれば国土交通省のひな型を利用するのが望ましいでしょう。

賃貸借契約書を自分で作る場合のポイント

賃貸借契約書を自分で作る場合のポイントとして、3つの点を紹介していきます。

賃貸借契約書は3部用意する

賃貸借契約書を自分で作る場合、契約書自体は3部用意しましょう。貸主(大家さん)、借主(入居者)、保証人がそれぞれ保有するからです。書面に効力を持たせるため、3部すべてに署名と捺印、割印をします。

ひな型を利用する場合でも内容は熟読する

当記事では契約書作成の確実性のため、ひな型の利用をおすすめしていますが、だからといってひな型を読まずに内容の把握をしていないのは問題です。契約書は双方の合意事項を書面化したものですので、自分が一言一句すべてを作ったわけではないひな型による契約書であっても、そこに署名と捺印をした時点ですべての内容に合意したことになります

あとから「知らない」「読んでいない」と抗弁をしてもそれは通用しないので、ひな型を編集して賃貸借契約書を作る場合であっても内容は熟読しておき、そのうえで契約を締結するようにしてください。

紛失に備えてスキャンデータやコピーを取っておく

取り交わした契約書は大家さんも1部保有することになりますが、その契約書はコピーを取るか、スキャンデータとして保存するなど、バックアップをとっておきましょう。

賃貸借契約は長期にわたるため、契約書を紛失したり汚損したりする可能性は少なからずあります。契約書自体がなくなってしまう事態に備えて、そこに何が書かれていたのかをいつでも読み返せるようにしておくと安心です。契約書がなくても、契約内容を把握していればトラブルが発生しても対応できますから、できれば紙だけでなくスキャンデータなどデジタルデータとしても保管しておくのが望ましいです。

参考:賃貸借契約は電子契約でも可能?

賃貸借契約は電子契約で締結しても有効となります。電子契約であれば、紙の印刷や郵送も必要なく、手間や費用が節約できます。

さらに、自主管理大家さん向けの賃貸管理サービス「Owner WEB」なら、賃貸借契約書をフォーム入力で簡単に作成し、そのまま電子契約で契約を行うことが可能です。保証契約とまとめて締結することができ、入居後も安心して賃貸経営を行うことができます。登録・利用は無料ですのでぜひ、ご利用をご検討ください。

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賃貸借契約書を自分で作るなら正確な内容理解を心がけよう

自主管理大家さんにとって大きなハードルとなる、賃貸借契約書を自分で作る方法について解説しました。ひな型を使った方法であれば、比較的容易に大家さん自身で賃貸借契約書を作ることは可能でしょう。とはいえ、そこに何が書かれているのか知らない状態だと問題ですので、内容を熟読しておくようにしましょう。

それに加えて、入居者にもその内容を十分に説明しましょう。管理会社が入っていれば説明も管理会社の仕事ですが、自主管理の場合は大家さん自らが説明することになります。契約を締結する際には、金銭に関わる内容・契約期間・契約解除・特記事項など、特に重要な部分は口頭での説明も加えて万全を期して臨みましょう。

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