これから収益物件を取得しようと考えた場合、最初にすべきことが不動産登記を見ることです。以前は手書きしていた時代には、「不動産登記簿」と呼ばれていましたが、現在正式には「登記事項証明書」と呼ばれます。登記の手続きについては、不動産登記法やその他の法令で定められています。
以下にこれからオーナーになろうとしている方々が、不動産の履歴書ともいえる登記事項証明書のおさえるべき基本のキの部分を説明していきます。
目次
これから購入しようとする物件は、過去から今までどんな履歴が繰り広げられてきたのかが、登記事項証明書でわかります。
まず、登記事項証明書では、以下の3つの区分に分けられ、それぞれに役割があります。
(1)表題部:不動産の概要(利用方法、構造、大きさ、築年数など)がわかる
(2)甲区:権利関係(所有関係)が時系列に掲載されている
(3)乙区:財務力(該当不動産を担保に、金融機関からの借入金の事実、借入金利など)が明示されている
こちらは、土地の架空の登記事項証明書です。これとは別に建物の登記事項証明書もあります。これら3つの区分について、それぞれ見ていきましょう。
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まず表題部は、土地、建物の概略がわかります。「地番」とは、私達が普段住所として使っているものとは異なります。
法務局や役所で登記簿や固定資産証明書などを請求する時は地番で請求する必要があります。しかし、郵便が届く住居表示は知っていても地番を知らないという人が大部分でしょう。
地番は、明治時代に作成された公図を作った際に、1筆ごとの土地に番号をつけたものです。すべての土地に地番は必ずあり、現在駐車場や田畑にも地番はあるのです。ここでややこしいのは、土地を分けたり(分筆)したときに、枝番で分けます。逆に合筆した場合は、該当する地番が飛んだりします。これが分かるのが「公図」です。公図とは敷地の範囲を表す図面です。これを見ると、たしかに明治時代に作成されたものだと感じます。
一方、住所(住居表示)は、住居(建物)に対し与えられた番号です。ひとつの敷地に土地が何筆あっても、そこに建物が1つしか建っていなければ、住居表示はひとつです。逆に空き地や農地には住居表示がついていません。
住居表示は、御存知の通り、何丁目何番何号となっており、原則規則正しく並んでいるので、郵便や宅配に使われています。
「地目」は、地歴がわかります。現在宅地となっていても、過去には田となっていれば、地盤は柔らかい可能性があると考えます。
「地積」は、その土地の面積、原因及びその日付には、土地は分筆・合筆の時点を、建物は建築年が記されています。
建物の登記事項証明書の場合は、種類・構造があり、種類によって融資の期間が変わってきます。
ここで把握する必要があるのは、所有者が登記上の誰か、ということです。「権利者その他の事項」欄を確認しましょう。登記上の所有者の署名捺印がないと、不動産の売買や賃貸ができません。なお、表題部下段の「所有者」に記載の名前は、同不動産を最初に登記した人の名前です。必ずしも現権利者ではない場合がありますので、注意しましょう。
さらに、所有者以外にも決定権者がいないかも確認する必要があります。例えば、仮登記者、差押権者、抵当権者などで、もしそのような登記がなされていた場合、所有者以外のものが、所有者の権利を阻止できる立場だからです。
もし、そのような権利者がいた場合、所有者との関係、権利を外せるかどうかを確認する必要があります。
「受付年月日」に記載の変更年月日は、変更登記がされた年月日です。最下段が最新の情報となります。相続で土地建物を受け取った場合、今までは必ずしも移転登記をする必要がなかったので、そのままになっているケースも多く見られます。場合によっては、所有者が未だ祖父になっている登記も多いです。
ここは、物件の財務力を表すと箇所です。特に収益物件の場合、通常は金融機関からの借り入れがありますから、抵当に入れられています。「権利者その他の事項」欄を見れば、現所有者が購入した場合、いくらを何%に利息で借り入れたのかがわかります。すなわち、現所有者の家計状態などがある程度推測できますので、価格交渉に使える材料が眠っている箇所でもあります。
例えば、不動産の時価よりも多額の借り入れが登記されている場合は「売り急いでいるかも」と考えることもでき、逆に全く抵当権がついていない場合は「資金に余力があり、価格交渉は渋いかもしれない」と、考えることもできます。
ここまで記載した点は、登記事項証明書の見方のほんの表面部分だけです。実務上は、更に踏み込んでいろいろな調査をしています。売買の仲介に立つ不動産業者は、これらの権利事項をすべて読みこんだ上で重要事項説明書を作成し、重説を行います。したがって、物件購入の際には、本当に信頼できる業者を探すことがとても重要になるのです。
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