2024.03.08
不動産投資

登記事項証明書の見方|土地・建物の読み方の違いと記載事項

不動産を調査するときに必要な資料の1つが「登記事項証明書」です。登記事項証明書には、不動産の所在や所有者、権利関係などが記載されています。この記事では登記事項証明書の記載事項や見方について詳しく解説しますので、これから不動産の購入を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

【著者】矢口 美加子

 

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不動産の登記事項証明書・登記簿謄本とは?

登記事項証明書とは、法務局が管理している不動産情報が記載されている証明書のことで、調べたい不動産の正確な情報を確認したいときに取得します。不動産の所有者の氏名や住所・所在地・面積・権利関係など、不動産についての詳細な情報が表示されています。法務局では誰でも登記事項証明書を請求できるため、他人が所有している物件であっても確認することができます。

なお、登記事項証明書と登記簿謄本は、名称が違うだけでどちらも証明する内容は同じです。磁気ディスクに記録されている情報を用紙に印刷したものが登記事項証明書で、登記用紙に記載された情報を複写したものが登記簿謄本です。

そもそも「不動産登記」とは

登記とは、権利関係などを明らかにするために設けられた制度のことです。法人や個人が持つ不動産・物権・債権などといった財産上の権利や義務を、公開された帳簿(登記簿)に記載することを指します。

不動産登記を行うと、法務局が管理する公の帳簿に所有者や所在地、抵当権などの情報が記録されます。不動産登記を申請する場面としては、以下があります。

・不動産の所有者が亡くなった
・住宅ローン等を完済した
・転勤等で引っ越した
・結婚で姓を変えた
・建物を取り壊した

 
相続や贈与などで不動産の所有者が変わったり、住宅ローンを完済して抵当権を抹消したりするときに申請します。

なお、相続登記の申請は令和6年4月1日から義務化され、住所・氏名変更の登記申請は令和8年4月までに義務化されることが決定しています。

登記事項証明書の概要、役割

登記事項証明書は、法令で登記することが定められている事項の全部、もしくは一部を証明する書類です。不動産の登記事項証明書には、以下の内容が記載されています。

・対象不動産の所在地、地番、地目
・所有者の氏名、住所
・抵当権など

 
不動産登記は、不動産の所在・面積・所有者の住所や氏名などを登記簿に記載し、一般公開することで、権利関係などを明確にするものです。手数料を支払えば誰もが不動産に関する詳細な情報を確認できます。正確な情報が広く公になることで、権利関係などの状況を誰にでも分かるようにし、安全かつ円滑な取引を図る役割を担っています。

登記事項証明書が必要になる場面

不動産取引をする際には、登記事項証明書で対象不動産の情報を確認することにより、安全な取引を行うことができる可能性が高まります。登記事項証明書が必要になる場面として、以下があります。

・購入を検討している不動産の情報を調べたいとき
・不動産を売却するとき
・住宅ローンを利用するとき
・確定申告で住宅ローン控除を申請するとき
・不動産を相続するとき

 
不動産を購入するときは、所有者や抵当権などの情報を確認してから行うのが一般的です。なぜなら、抵当権の付いている物件を購入すると差し押さえられる可能性があるからです。また、不動産を売却するにあたり、登記事項証明書を購入希望者に見せることがあり、不動産会社が代わりに取得するケースもあります。

住宅ローンを組む際は担保として不動産に抵当権を設定することから確認のために必要であり、金融機関が取得する場合もあります。そのほかにも、確定申告で住宅ローン控除を申請するときには必要書類として税務署に提出します。

不動産を相続するときの財産情報を調べる場合にも、登記事項証明書は必要です。登記事項証明書を確認することで、不動産の所有権や抵当権などの情報を、相続人が正確に把握することになるからです。

登記事項証明書の記載事項、見方

不動産の登記事項は一筆の土地または一個の建物ごとに作成するため、たとえば土地付き住宅の場合では、土地と建物は別々に記載されています。

登記事項証明書の構成は4部からなり、上から「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」「共同担保目録」という順番です。ここでは、各項目の内容について解説します。

表題部

表題部には、土地・建物に関する現在の登記状況が記載されています。土地と建物をそれぞれ解説します。

土地

下図は土地の全部事項証明書で、表題部には土地の物理的状況が記載されています。記載内容は以下の通りです。

・所有者の氏名・住所
・所在地番
・地目
・地積
・原因およびその日付

 
土地の大きさや用途の種類、所有者が誰であるかなどの情報を確認できます。


出典:法務省 – 全部事項証明書(土地)

建物

建物の表題部には、建物の物理的状況が記載されています。記載項目は以下の通りです。

・所有者の氏名・住所
・所在
・家屋番号
・種類
・構造
・床面積
・原因およびその日付

 

出典:法務省 – 全部事項証明書(建物)
 
土地と同様に所有者の氏名や住所などが記載されるため、誰が所有しているのかが明確に分かります。種類や構造も記載されており、どのような建物であるのかといった大体のイメージを掴むことができます。2階建ての場合、1階と2階の床面積は個別で表示されます。物置など、住宅とは別の建物がある場合、家屋とは別に記載されます。

なお、建物の表題部登記は、建物を新築した場合や、所在・地番・家屋番号・地目・地積・構造・床面積などが変更された場合は、1カ月以内に表題部に関する登記を申請することが必要です。

権利部(甲区)

権利部は「甲区」と「乙区」に分かれており、甲区には所有権に関する事項が記載されています。土地と建物のいずれも、登記の目的や所有権者の氏名が記載されています。表題登記をしないと、権利に関する登記である所有権保存登記はできません。

なお、登記には順位番号が振られており、たとえば甲区1番の人から所有権を譲り受けた人は、2番として所有権を登記することになります。2番の欄に所有権移転と記載されている場合は、2番に記載されている人が現在の所有権者です。このように順を追っていくと、現在の所有者を確認できます。

なお、権利部の登記は保存登記といい、自分の権利を登記するもので義務ではありませんが、令和6年4月1日より相続登記の申請が義務化されます。

権利部(乙区)

権利部(乙区)には、所有権以外の権利に関する事項が記載されています。たとえば、抵当権・根抵当権・地上権・地役権・賃借権などの権利です。乙区は、不動産を担保にしたり他人が利用したりする場合、その権利を設定するために登記するものであるため、必要がなければ乙区は設定されません。

住宅ローンを借りたときは不動産を担保として抵当権が設定されるため、抵当権者に関する情報(抵当権者名や債権額など)が記載されます。

共同担保目録

共同担保目録とは、1つの債権の担保として複数の不動産に対して設定された抵当権(共同担保)を、一括して記載した登記事項のことです。不動産投資をする際は、購入物件自体の担保評価が足りないときに、ほかの不動産で不足分を補う目的で設定されます。つまり、ほかの不動産も担保の1つとして債権者に差し出す行為を指します。

マンションなどの登記事項証明書の見方

マンションなどの区分所有建物の全部事項証明書は、下図をご覧ください。

出典:法務省 – 全部事項証明書(区分所有建物)

区分所有建物の登記事項証明書は、表題部の「一棟の建物の表示」と「専有部分の建物の表示」、権利部(甲区)、権利部(乙区)の4部に分かれます。ここでは、区分所有建物(マンションなど)に関する登記事項証明書の見方について解説します。

表題部(一棟の建物の表示)

表題部(一棟の建物の表示)には、マンション全体の物理的状況が記載されています。専有部分の家屋番号には、マンション一棟の専有部分の一覧が表示されているため、どの程度の規模の建物なのかを確認できます。

建物の名称にはマンション名、所在には敷地の地番、構造にはマンション一棟全体の構造や階数、床面積には階数別の大きさがそれぞれ表示されています。

なお、床面積に記載されているのは一棟全体の床面積です。専有部分に含まれない廊下など共用部分の床面積も含まれているため、専有面積の合計額よりも大きくなります。また、敷地権の目的である土地の表示には、マンション敷地の面積などが記載されています。

表題部(専有部分の建物の表示)

表題部(専有部分の建物の表示)には、分譲マンションなどの一住戸ごとの情報が記載されています。専有部分はそれぞれ独立した建物であるため、家屋番号は各住戸に記載されています。通常の建物と違うのは、町名から家屋番号が表示されて部屋番号へと続く点です。通常、建物の名称には部屋番号が記載されています。

構造の階数表示は専有部分が何階建てなのかを示すものですが、通常のマンションはフラットですから、たとえ3階部分にあるとしても「1階建」と記載されます。敷地権の割合には専有部分が占める敷地権の割合が記載されており、各専有部分の床面積をすべての専有部分の床面積の合計で割って算出した数字となります。

所有者の欄に記載されているのは、マンション分譲会社の名称です。専有部分の表題登記は建物完成時に事業主が一括で行うため、マンション分譲会社が申請者として登記します。

登記事項証明書の取得方法

登記事項証明書の原本を請求する場合は、窓口・郵送での申請とオンライン申請があります。それぞれの方法について解説します。

窓口・郵送での請求

窓口で請求する場合は、取得したい不動産を管轄する法務局に出向いて取得します。窓口に備え付けの請求書に必要事項を記入して係の人に提出すると、数十分程度で受け取れます。登記事項証明書は1通につき600円の手数料が必要です。窓口の業務時間は、平日の午前8時30分から午後5時15分までです。
 
郵送で請求する場合は、管轄法務局に封書で「申請書」「登記印紙(手数料)」「返信用の封筒・切手」を同封して郵送すると、後ほど証明書を返送してくれます。

オンラインでの請求

オンラインで登記事項証明書を取得することも可能です。窓口での請求よりも手数料が割安で、郵送での返送ならば500円、最寄りの法務局や法務局証明サービスセンターで受け取る場合は480円で取得できます。手数料はインターネットバンキングで電子納付できるので、収入印紙を用意する必要はありません。平日の午前8時30分から午後9時まで請求可能です。

不動産売却を検討しているなら抵当権抹消を

不動産に抵当権がある場合は、売却するときに抹消してから売るのが一般的です。抵当権が付いていても売買は可能ですが、購入しても差押えられる可能性があるため、買主を見つけるのは難しいといえます。抵当権抹消を検討したい場合として、以下が挙げられます。

・住宅ローンを完済した場合
・住宅ローン返済中に売却する場合

住宅ローンを完済すれば金融機関は債権者ではなくなるため、抵当権は消滅します。しかし、抵当権抹消の手続きは金融機関が行うわけではなく所有者自身が行うものですので、住宅ローンを完済したら早めに抹消手続きをしましょう。

住宅ローンの返済中に売却する場合は、抵当権者である金融機関に相談し、同意を得たら抹消手続きを行います。不動産の決済・引渡し日に売主が受け取った代金でローンの残債を返済し、抵当権抹消手続きと同時に所有権を買主に移転します。

◆所有権移転登記について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
所有権移転登記|費用と必要書類、自分で行う流れを解説!

登記事項証明書の見方を知って不動産の正確な情報を把握しよう

登記事項証明書は不動産の種類・構造・所有者・抵当権などの権利関係を確認できる証明書です。不動産の情報を広く公に公開することで、安全かつ円滑な不動産取引を実現できます。不動産を購入するときは登記事項証明書を確認して、所有者や権利関係をしっかり調べましょう。

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