2020.7.6
不動産投資

不動産投資と減価償却費の関係を“わかりやすさ重視”で徹底解説

(画像=taa22/stock.adobe.com)
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減価償却費は、不動産投資の収支や所得税の節税に大きな影響を与えます。「減価償却費のことを深く知らずに不動産投資の成功はない」といっても過言ではないでしょう。ここでは、「減価償却費の基本」「具体的な計算方法」「売却時の税金との関係」の3テーマを“わかりやすさ重視”で解説していきます。
 

1.不動産投資における減価償却という仕組みとは


はじめに、「減価償却とはどのような考え方なのか」、「減価償却とは具体的にどんな仕組みなのか」などについて確認しましょう。

1-1.減価償却の基本的な考え方


通常、ビジネスのために支出した経費はその都度、経費化していきます。一方、長期間にわたって使用される固定資産(例えば、建物、自動車、大型設備など)は、時の経過とともに“減った分の価値”を毎年の確定申告や決算で少しずつ経費化してきます。このような経費のことを「減価償却費」、この対象になる資産のことを「減価償却資産」と呼びます。

1-2.躯体の構造による法定耐用年数の違い


減価償却資産は、種類によって減価償却費を計上できる期間が決まっています。この期間は「法定耐用年数(以下、耐用年数)」と言われ、国税庁が資産ごとの償却期間を決めています。この耐用年数に合わせて事業者は減価償却費を計上していくのが原則です。基本的に、その資産が長持ちするほど耐用年数が長くなるという考えで、建物の場合、躯体(建物本体)の構造別に次のように定められています。

 

【構造別】減価償却資産の耐用年数表

構造 耐用年数
木造・合成樹脂造のもの 22年
木骨モルタル造のもの 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート 47年
れんが造・石造・ブロック造のもの 38年
金属造のもの 19~34年

出所:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数」
※金属造は骨格材の肉厚によって耐用年数が異なる

上記の表をご覧になっておわかりいただけるように、同じ住宅用途の建物でも木造(耐用年数22年)と鉄筋コンクリート造(耐用年数47年)では耐用年数が倍以上も違います。

1-3.土地は減価償却の対象にならない


不動産の減価償却で注意したいのは、建物は減価償却の対象になりますが、土地は対象にならないという点です。なぜなら、土地は期間がいくら経過しても傷んで使えないということがないからです。そのため、マンションやアパートなどの不動産においては「建物と土地の価値はそれぞれこれくらい」と按分した上で建物分だけの減価償却費を計上していくのがルールです。詳しくは本稿の4.建物価格の割り出し方へを確認してください。

2.減価償却が節税になる理由とポイント


減価償却をさらに深掘りしていきましょう。次に抑えたいのは、「減価償却を上手く活用すると節税になる」と言われる理由についてです。合わせて、節税を実施するときのポイントも紹介します。

2-1.キャッシュアウトしていないのに経費計上できる


減価償却費は他の経費と同様、確定申告や決算で不動産所得を計算するときに控除できます。減価償却費が他の経費と違うのは、実際にはキャッシュアウトしていないのに経費計上できることです。そのため「黒字だけど減価償却費によって帳簿上は赤字(=不動産所得の所得税を払わなくて済む)」といったことも可能になります。

2−2.不動産所得の赤字は他の所得から差し引ける


減価償却費や他の経費の計上によって不動産所得が赤字になった場合、他の所得(事業所得や給与所得など)からこの赤字分を差し引けます。この不動産所得の赤字を他の所得から差し引ける仕組みを「損益通算」といいます。損益通算によってトータルの所得税節税も可能になるケースがあります。

2-3.建物と設備は分けたほうが早期償却できる


注意したいのは、建物の「躯体(本体)部分」とそれに付属する「設備」は別々に償却できるという点です。例えば鉄筋コンクリート造の場合、本体部分の減価償却期間47年に対し、設備の償却期間はそれよりも短いです(※下記の表参照)。別々に償却することで建物と付属設備を一緒に償却した時よりも、前倒しでより多くの経費を計上できるようになります。

【建物付属設備】減価償却資産の耐用年数表

構造・用途 細目 耐用年数
電気設備・照明設備 蓄電池電源設備その他のもの 6年15年
給排水・衛生設備、ガス設備   15年
アーケード・日よけ設備 主として金属製のものその他のもの 15年8年
店舗簡易装備   3年

出所:国税庁「建物附属設備 減価償却資産の耐用年数」

どんな物が付属設備に含まれるかについては絶対的な定義はありませんが、全日本不動産協会の「付帯設備表」を参照にすると、以下のような物が該当する可能性があると考えられます。

建物付属設備の例

給湯関係
水回り関係(流し台、シャワー、洗面台、トイレなど)
空調関係(冷暖房機、床暖房設備など)
照明関係
収納関係(造付けの食器棚、吊り戸棚、下駄箱など)
建具関係(網戸、雨戸、扉、畳、ふすまなど)
その他(住宅用火災報知器、物置、カーポートなど)

※ただし、使用期間が1年未満のものや取得価格が10万円未満のものはその年度の経費に算入できます。

上記以外に、エレベーターなども付属設備に含まれると考えられます。ちなみに、「これは建物付属設備に含まれるの?」と判断に迷うような設備もあります。たとえば、エアコンは家庭用のものであれば建物付属設備ではないため一般的に6年となります。対して、ダクトが広範囲にあるような業務用のエアコンは建物付属設備となり、耐用年数は15年になると考えられます。

このように、建物本体に比べて建物付属設備の耐用年数はかなり細かい確認が必要です。一棟マンションやビルなどで付属設備の種類や数が膨大な場合は、「建物価格の×%」といった具合に見なして計算する場合もあるようです。

●2-4.建物は定額法で減価償却をしていく

減価償却費の計算方法については次の2通りがあります。建物はこのうち、定額法を用いて減価償却をするのがルールです。

・定額法:法定耐用年数の期間内で、毎年一定の金額を経費計上していく方法です。
・定率法:減価償却をした残りの金額に毎年一定の割合をかけて減価償却をしていく方法です。その資産が新しい時ほど価値が大きく減るという考え方に基づきます。

3.減価償却費の実際の計算方法


ここまでの内容で、減価償却の概要についてはご理解いただけたでしょう。さらに、減価償却費の実際の計算方法について見ていきましょう。

3-1.新築物件の減価償却費の計算方法


まずは、新築物件の減価償却費の求め方です。冒頭で解説した通り、建物は構造ごとに耐用年数が決まっています。この耐用年数ごとに国税庁が定めている償却率を建物価格に掛けることで、その年度の減価償却費が割り出せます。計算式は次の通りです。

【新築物件の減価償却費の計算式】
・建物の取得価格×償却率=減価償却費

上記の公式を使った計算例はこのようになります。

【建物の減価償却費の計算例】
・条件:
対象物件:鉄筋コンクリート造マンション(新築)
建物価格:1億円
定額法の償却率: 0.022%
・計算
1億円×0.022%=1年あたりの減価償却費220万円

なお、主な建物(住宅)の定額法の償却率は次の通りです。

構造 償却率
木造・合成樹脂造のもの 0.046%
木骨モルタル造のもの 0.050%
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート 0.022%
れんが造・石造・ブロック造のもの 0.027%
金属造のもの(骨格材の肉厚が 4mm 超の場合) 0.030%

3-2.期の途中で新築物件を購入したときの減価償却費


期の途中で物件を購入した時は月割計算を行います。鉄筋コンクリート造の新築マンション(建物価格1億円)を7月に購入したときの月割計算の例は次の通りです。

【期の途中で購入した新築物件の減価償却費】
・1億円×0.022%×6/12=初年度の減価償却費110万円

翌年からは、1年分の減価償却費となります。上記の例では220万円となります。

3-3.中古物件の減価償却費の計算方法


中古物件の減価償却費の割り出し方は新築に比べて少し複雑です。その中古物件が耐用年数以内の築年数であれば、下記の計算式に基づいて取得時の耐用年数を求め、これに基づいて計算します。

【耐用年数以内の場合】
・新築時の耐用年数-経過年数+経過年数×0.2=取得時の耐用年数

耐用年数を超えているときは、下記の計算式で取得時の耐用年数を求めます。

【耐用年数を超過している場合】
・新築時の耐用年数×0.2=取得時の耐用年数

4.建物価格の割り出し方


不動産投資の減価償却費は計算式を知っているだけでは割り出せません。実際には不動産のうち、建物価格がいくらかを割り出すことで計算ができます。

4-1.不動産は「土地+建物」の合算価格で売買されている


減価償却の対象になるのは「建物」であり、土地は対象になりません。一方、不動産は建物と土地を合計した金額で取引されています。例えば、マンションを購入するときに「建物価格と土地価格はそれぞれ何円」と捉えて購入を検討するケースはほとんどありません。建物価格と土地価格を合わせた物件価格で考えるのが普通です。そのため、減価償却費を割り出すためには、不動産のうちの建物価格を割り出す必要があります。その具体的な方法は次項の通りです。

4-2.建物価格の確定方法


減価償却費を計算するときの建物価格の確定方法には決まりはありません。いくつかの選択肢がありますが、合理的な方法として、「不動産売買契約書で確定」と「固定資産税評価額で確定」の2通りが考えられます。

・不動産売買契約書で確定
最も簡単な建物価格を調べる方法は、不動産売買契約書の確認です。売買契約書に建物単独の価格が明記されていれば、これに基づいて減価償却費を計算できます。ただし、売買契約書に建物価格と土地価格を合算した金額しか記載されてない場合は、別の方法で建物価格を割り出す必要があります。

・固定資産税評価額で確定
固定資産税評価額は関係証明書(公課証明)で確認できます。ここに記載されている土地と建物の按分比率に取得価格をあてはめて計算することで、建物価格を確定することができます。

5.減価償却費と売却時の税金の関係


減価償却費と売却時の税金の関係はかなり複雑です。ここでは必要な部分だけに絞り、できる限りわかりやすく解説していきます。

5-1.減価償却は利益の繰り延べである


一般的に、減価償却を活用することで所得税の節税になると紹介されることが多いです。しかし、実際には売却時にこれまで計上した減価償却費の調整が行われるため、厳密には「節税ではなく、利益の繰り延べ(利益の調整)」とも考えられます。

5-2.減価償却費を計上するほど売却益が出やすくなる


物件を売却したときには、譲渡所得税を払わなくてはなりませんが、この税金と減価償却費は大きく関わっています。その仕組みを見ていきます。まず、譲渡所得税の税率(所得税+住民税)は所有期間によって次のように変わってきます。

・短期譲渡所得税:税率39%(所得税30%+住民税9%)
・長期譲渡所得税:税率20%(所得税15%+住民税5%)
※短期譲渡:譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下/長期譲渡:同、所有期間が5年超

当然ながら、この譲渡所得税は売却益が出るほど多くなりますが、売却益は次のような計算式で計算されます。

【不動産売却益の計算式】
・売却益=物件売却価格−物件の簿価

上記の「物件の簿価」とは、帳簿上の価格のことです。この簿価は物件の取得費から毎期計上している減価償却費を引くことで算出します。つまり、減価償却費を計上するたび、物件簿価が減っていくわけです。そして、最終的に売却益は「物件売却価格−物件の簿価」で計算するため、減価償却費を計上するほど売却益が出やすくなる(=所得税が増えやすくなる)のです。

6.まとめ

ここでは不動産投資の重要な要素である「減価償却費」について解説してきました。その内容を振り返ってみましょう。

【減価償却の基本】
・長期間使用される固定資産は、時の経過で価値が減った分を毎年経費化していく。この経費が「減価償却費」である。
・減価償却費を計上できる期間は「耐用年数」で決められていて、長く使える資産ほど耐用年数が長い。
・減価償却の対象になるのは建物だけ。土地は対象にならない。

【減価償却費と所得税の節税】
・減価償却費はキャッシュアウトしていないのに経費計上できる。これにより、不動産所得の圧縮も可能。
・不動産所得の赤字分は給与所得や他の事業所得から差し引ける。
・建物と設備を分けたほうが早期償却できる。

【減価償却費の計算方法】
・新築物件と中古物件は計算式が違う。
・建物価格を割り出すことで減価償却費は計算できる。

【減価償却費と売却時の税金の関係】
・減価償却費は利益の繰り延べである。
・減価償却費を計上するほど売却益が出やすくなる(所得税が発生する)。

最後の「減価償却費は利益の繰り延べである」という部分はとくに覚えておきたいポイントです。不動産投資の減価償却は運用している間、所得税節税になる面もありますが、最終的に譲渡所得税で調整されます。そのため不動産投資においては、所得税節税ばかりにフォーカスするのではなく、運用益や相続税節税なども含めてメリットを考えていくことが大切です。

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