2021.02.10
不動産トピックス

賃貸経営にどのように影響する?2022年、生産緑地問題とは?

不動産業界で注目されている問題として、2022年に起こる「生産緑地問題」があります。これまで税金の優遇を受けていた農地が、宅地として一気に市場に流通するのではないかといわれています。具体的に「どのような問題なのか」「賃貸経営にどう影響するのか」について考えてみましょう。
 

「生産緑地」とは?

都市部の住宅街のなかに、「生産緑地」の看板が掲げられた農地を見たことがないでしょうか。それが生産緑地です。生産緑地とは、1992年に改正された「生産緑地法」に基づいて指定された、市街化区域中(都市部)の農地のことを指します。生産緑地の指定が行われると、所有者はそこを農地として維持管理し続けなければなりません。

その代わり、都市部であるにも関わらず固定資産税が宅地の数百分の1程度と極めて安くなります。また、その土地を相続した人も、農地として維持することを前提に相続税の課税が猶予されるのです。

2022年に都市部の生産緑地が宅地として放出される可能性

この生産緑地の指定が解除となり、都市部にある農地が宅地として市場に供給される懸念が広まっています。生産緑地が指定され始めたのは1992年でした。その期限は30年なので、2022年に次々と期限切れを迎えることになります。いわゆる「2022年問題」です。生産緑地として指定後30年が経過した場合には、その土地の買い取りを市町村長に申し出ることができます。

買い取りの申し出があった場合、市町村は原則的に断ることができません。しかし、実際には市町村に買い取るお金がないので、手続きを経て宅地化して売却されることになります。もし、期限切れ後に生産緑地の買い取りを申し出なければ、宅地並みの課税が行われるようになり、相続税の納税猶予もなくなってしまうので、買い取ってもらおうと考える農家が多いと予測されているのです。

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都内での生産緑地は世田谷、練馬などに多い(都下では八王子、町田など)

国土交通省の「平成28年都市計画現況調査」によれば、2016年3月末時点における全国の生産緑地は約1万3,187ヘクタールあります。そのうち約3,223ヘクタールが東京です。東京23区のなかでは練馬区、世田谷区、都下では八王子市、町田市などに多くの生産緑地があります。たとえば、練馬区にある生産緑地は187ヘクタール。1ヘクタール=1万平方メートルです。

戸建て住宅1つ分の面積を広めの200平方メートルと仮定すると、練馬区には戸建て住宅9,350戸分の広さの土地が、生産緑地として残されていることになります。これがすべて宅地に転換されるとなれば、大きなインパクトとなるのは間違いありません。

既存オーナーにとっての影響は?

土地が大量に供給されれば、地価が下がり、新たな家が次々と建つことになるでしょう。アパートやマンションなどの賃貸住宅も建つ可能性は十分あります。そうなれば供給が需要を大幅に上回り、家賃の下落が起こってもおかしくありません。生産緑地問題によって、賃貸経営をしている不動産オーナーが最も大きな影響を受けると考えられます。

しかし、なかには「生産緑地の大量供給はない」とする見方もあります。その理由として挙げられるのは、下記のような内容です。

・生産緑地制度が一部改正され、生産緑地の指定を10年延長できるようになった
・生産緑地を農地だけでなく、直売所や農家レストランとしても使えるようになった
・法改正により、これまでできなかった生産緑地の貸し借りができるようになった

これらの理由により農地としての活用が進むことで、宅地への転用は限定されるのではないかという考えです。東京都が生産緑地所有者に対して行ったアンケートでは、「すぐに買い取りを申し出たい」と回答した人は約8%で、その他は「農業を続ける」か「未定」でした。また、買い取りを申し出たいという人のなかでも半数は「一部の買い取りを申し出る」としています。

したがって、生産緑地の指定から30年が過ぎても宅地として売却される農地は一部に限られるのではないかと予想できます。しかしながら、事態がどう転ぶかは分かりません。生産緑地の多い地域に賃貸物件を持っている人は、今後の動向を注視しておく必要があるでしょう。

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