賃貸経営中の物件のリフォームなどを検討していて、建築資材の高騰からリフォーム費用が高額化していることを耳にしたオーナーもいるでしょう。この記事では建築資材の高騰に関しての現状と、今後の対策について解説します。不動産投資における収益性を高めるには、修繕やリフォーム費用はできるだけ抑えたいものです。ぜひ本記事を参考に、建築資材高騰に対する有効な対策をとっていきましょう。
【著者】水沢 ひろみ
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目次
以下のグラフは、2015年を100として、建築資材の総体的な物価の動向を指数化して表したものです。これによると、2021年以降、建築資材の価格が急激に上昇していることが分かります。
出典:一般財団法人 建設物価調査会 – 建設資材物価指数グラフ
建築資材の高騰は修繕費やリフォーム費用を押し上げることから、戸建ての建築のみならず、賃貸物件のリフォームが必要なケースにも大きな影響を与えます。結果として、キャッシュフローの悪化をもたらすリスクがあり、不動産投資を行う多くのオーナーに打撃を与えています。
次章では、これらについて解説していきます。
建築資材が高騰している原因としてどのようなことが考えられるのか、主な5つの理由を以下に解説します。
円安は、建築資材の高騰につながる大きな要因となっています。新型コロナウイルスによるパンデミックを抑えるための経済対策としてゼロ金利政策を導入した各国も、景気が回復し今度は物価の上昇を抑える必要が生じたことから、利上げに転じるようになりました。特に、インフレを抑えるために大幅に利上げを行ったアメリカに対して日本は低金利政策を続けたために、日本とアメリカの金利差が拡大し、急激に円安が進行することになりました。
金利が高いほうの通貨で運用したほうが有利になることから、投資家は円を売ってドルを購入するようになります。すると、円の価値は相対的に下がって円安になる仕組みです。円安は輸出の際には有利ですが、輸入の際には不利になります。たとえば、今までは1ドルと交換するのに120円でよかったのが、140円、150円と交換比率が上がっていくためです。
このように円安になると輸入品の価格が上昇していくため、輸入に頼る建築資材が高騰することになっていくのです。
ウッドショックとは、木材価格の高騰を表現する言葉です。建築業界では、現在、新型コロナウイルスを原因とする木材価格の高騰の影響を受けています。アメリカでは、新型コロナウイルスの流行により生活様式が変化して自宅で過ごす人が増えたことに加え、住宅ローン金利の低下や株価の高騰などから、郊外での住宅建築の需要が高まりました。
一方で、木材の流通量は元々減少傾向にあったことや、木材の輸出に必要となるコンテナが新型コロナウイルスの影響もあり世界的に不足したことなどから、木材の供給が追いつかない状況が生じていました。このように、需要と供給のバランスが崩れたことで木材価格が高騰していることも、建築資材が高騰している一因となっています。
木材価格と並び、2021年以降は鉄筋や鉄骨などの鋼材価格も同様に高騰しており、この現象はアイアンショックと呼ばれています。鋼材は建築資材として住宅建築におけるさまざまな用途に必要とされるものですので、鋼材価格の高騰は住宅建築コストの上昇に関わる大きな問題となります。
一時は鋼材の需要が減少していたものの、新型コロナウイルスのパンデミックが収束し、経済活動が正常化するにしたがって増加していきました。すると今度は供給不足となり、世界的に鋼材価格の急激な上昇を招くようになりました。日本では鋼材のほとんどを輸入に頼っていますので、世界的規模の鋼材価格の高騰は日本の建築業界に対しても大きな影響を与えています。
建築資材の価格には、ガソリンや電気料金などの高騰も影響を与えています。ガソリン代の高騰は資材の運送費コストの上昇につながり、電気代の高騰は建築資材の製造コストの引き上げにつながります。ガソリン代の高騰の原因は、原料となる原油価格が上昇していることにあります。
などによって、原油価格が上昇しています。
また、電気料金は原油価格と天然ガスの価格による影響を受けますが、ウクライナ侵攻によってロシアからの天然ガスの輸入が制限された影響で、天然ガスの価格も高騰し、電気料金を押し上げる原因となっています。
現在は上記以外にもさまざまな資材の価格が高騰していますが、その背景にはロシア・ウクライナ問題が大きく影響していると考えられています。
これまでは、新型コロナウイルスによってもたらされた経済的な混乱から回復し、増加した需要に供給が追いつかないことや、世界的規模の災害などが影響して、さまざまなモノの価格が上昇していました。そこにロシア・ウクライナ問題が発生し、ロシアへの経済制裁がはじまったことで、資材の価格の高騰に拍車がかかったといえるのです。
特に多くの資源を輸入に頼っている日本では、ロシア・ウクライナ問題による資源の高騰は、円安などの影響とも重なり大きな余波となっています。
このような建築資材の高騰問題は、今後どのようになっていくのでしょうか?建築資材の高騰は、不動産投資を行うオーナーにとってリフォームや修繕の費用を押し上げて収益率の低下をもたらすため、その動向を無視することはできません。
この問題には世界的な要因が絡まり合っているため、簡単に解決されることはないでしょう。ただし上記に解説した要因の中で、円安問題については日本の低金利政策の転換によっては解消していく可能性があります。
現実に、2023年11月には一時151円を超えていた米ドルは、翌月の12月に入って141円台まで下落しています。今後アメリカでは利下げがはじまり、日本の金利が上昇するなど、日米の金利差が縮小していけば円安は落ち着いていくことが考えられます。とはいえ、長期化するウクライナ情勢や人手不足による人件費の上昇など、建築資材が高騰している現状はまだまだ続くとみられています。
このように建築資材が高騰している現状で、建設費用やリフォーム費用を抑える方法はあるのでしょうか?ここでは、以下3つの方法について紹介していきます。
建築資材が高騰している環境下で建設費用やリフォーム費用を抑えるためには、信頼性の高い建築業者を選ぶことが大切です。
今後も価格高騰の傾向が続くとみられている現状では、建築業者としては建築資材の値上がり分を上乗せしなくては利益が圧迫されてしまいます。そのため、オーナーはある程度の値上がりは受け入れる必要がありますが、それでも提示された価格が適正かどうかは複数の見積もりを取って比較することが大切です。
当然ながら、建物は長期間安全に使用できる品質を維持することが重要です。質を落として耐用年数が短くなったり、故障が増えてメンテナンス費用が増えたりするような工事内容は避けなくてはなりませんので、費用の安さだけにつられて建築業者を選ぶことはおすすめできません。
見積もりの内訳が納得できる内容であるかどうか、資材価格の高騰の影響を加味しながら判断することが大切です。今までの実績や評判なども参考にして、これまで以上に慎重な建築業者選びが求められるでしょう。
建築資材の価格が急激に上昇している局面では、判断を先延ばしにしている間に価格が変動するリスクがあります。建物の建設やリフォームが必要だと判断したのであれば、早期に注文を行うことも費用を抑えることにつながる可能性があります。
同じ内容の工事であれば、建築資材高騰の影響を受けることで、以前よりも費用が高くなることは避けられません。ですから、必要な設備や工事内容を見極めて取捨選択することも大切です。
ただし、不要なものはできるだけ省く必要がありますが、必要な設備まで省いてしまうことによって入居率が低下し、かえって収益率の低下につながるリスクがあります。物件の立地や部屋の間取りなどから想定した入居者のコンセプトに合わせて、必要だと判断される設備についてはコストをかけて備えることも、結果として高いコストパフォーマンスにつながります。
賃貸物件の魅力を落とさずに、無駄を見つけてコストを抑える方法を探る努力が求められるでしょう。
建築資材高騰の影響や原因、今後の対策について解説しました。不動産投資では、賃貸物件を購入した後も、賃借人の入退去時の原状回復費用やリフォーム費用など、継続的にかかる費用があります。これらは物件の価値を維持するために必要な費用ですので、必要以上に省いてしまうと入居率の低下を招いたり、物件の耐用年数を短くしてしまったりと、トータルでみたときにキャッシュフローを悪化させることになりかねません。
建築資材が高騰する中であっても、少しでも不動産投資の収益率を維持できるように、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
かつて銀行や不動産会社に勤務し、資産運用に携わった経験を活かし、現在は主に金融や不動産関連の記事を執筆中。宅地建物取引主任、証券外務員一種、生命保険募集人、変額保険販売資格など保険関係の資格や、日商簿記1級など、多数の資格を保有し、専門的知識に基づいた記事の執筆とアドバイスを行う。