アパートなどの集合住宅では、入居者同士の騒音トラブルが発生することは珍しいことではありません。とはいえ、生活するにあたって音を立てないということは不可能であり、オーナーにとっては解決が難しい問題のひとつといえます。この記事では、アパートなどの騒音トラブルに関する対処方法について解説します。
【著者】矢口 美加子
オーナーのための家賃保証
「家主ダイレクト」
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目次
生活音は人々が無意識に出す音だといえますが、人によってはそれが不快に感じる場合もあります。特に賃貸アパートなどの集合住宅は戸建てよりも騒音トラブルが起こりやすいため、アパートの騒音トラブルとしてよくあるケースと、騒音とされる基準値について簡単に解説します。
わざとではなく、普通に生活していて発生する生活音でも、人によってはそれが騒音(生活騒音)に感じられることがあります。一般的に生活騒音とは、居住環境(住宅内、および住戸まわり)において発生する騒音を指しています。
以下のグラフは、環境省が発表した調査結果をもとに、令和元年度に発生した苦情の原因が「家庭生活のもの」だけをまとめたものです。生活騒音の発生源は、駐車場などでのアイドリングや空ぶかし音といった車に関する騒音が19.7%、それに次いで人の声・足音・給排水音が15.8%となっています。このことから、人の声や足音など、生活するうえでやむを得ない生活音が苦情の上位を占めているのは注目すべき点でしょう。
【令和元年度に発生した苦情件数 ※原因が家庭生活によるもの】
発生源の種類 | 件数 | % |
---|---|---|
アイドリング空ぶかし音 | 278件 | 19.7% |
人の声足音給排水音 | 224件 | 15.8% |
ペット | 183件 | 12.9% |
電気機器 | 155件 | 11% |
楽器音響機器 | 121件 | 8.5% |
その他 | 448件 | 31.7% |
合計 | 1,409件 |
参考:環境省 水・大気環境局大気生活環境室 – 令和元年度 騒音規制法施行状況調査
戸建て住宅ならまだしも、アパートなどの集合住宅は多くの人々が同じ建物で居住しているため、時間帯によっては過敏に反応してしまうケースが少なくないといえます。
住宅においての騒音の目安は一般的に40~60デシベルと考えられています。夜間のほうが昼間よりも基準は低くなります。また、騒音トラブルは「受忍限度を超えているか」という点が判断基準として重要なポイントで、簡単にいえば「社会生活を営む上で我慢すべき限度なのか、それとも限度を超すのか」ということです。
この受忍限度を超えているか否かを明確にする指標として、音圧レベルや騒音値(db)を測定できる「騒音計」による計測があります。たとえば住宅の場合、昼間と夜間の戸建て住宅、夜間の高層住宅は40デシベル前後の音、昼間の高層住宅は50デシベルの音に匹敵するとされ、これらのデシベルを超えると騒音だと感じられてしまう可能性が高くなります。そのほかのデシベル数の目安はこちらをご覧ください。
出典:騒音調査小委員会 – 「騒音の目安」作成調査結果について – 騒音の目安(都心・近郊用)(28ページ)
賃貸物件の騒音トラブルが発生しても、オーナーは「住人同士のトラブルだから関係ない」と放置することはできません。なぜならば、民法601条には「賃貸人は賃料を受け取る権利はあるが、賃借人に建物を使用収益させる義務を負う」とあり、オーナーには賃貸物件の騒音トラブルを解決する義務があるからです。
賃貸人の「使用収益させる義務」とは、別のいい方をすれば「賃貸物を賃貸借契約の目的が達成できるように適切に使用させること」で、さらに簡単にいえば、賃貸人には入居者が平穏に日常生活を過ごせる環境を提供する義務があるということです。そのため、賃貸アパートとして賃貸借契約を締結した場合、オーナーには入居者がアパートの居室を住居として快適に利用できるように配慮することが求められるのです。
では、自主管理しているアパートなどの賃貸物件で、入居者からの騒音クレームが発生したらオーナーとしてどう対応すべきでしょうか。
入居者から騒音の相談を受けても、いきなりすべてを真に受けないようにしましょう。普通に暮らしていても多少の生活音は出てしまうため、オーナーは騒音のレベルが基準値を超えるようなものであるかを必ず調査するようにしてください。たとえば以下のようなことがあります。
仮に「上階から夜中に掃除機をかける音がする」というクレームを受けたら、実際に真上の部屋に住んでいる住人に確認していきます。ただし、確定しているわけではないので「あなたが原因ではないでしょうか?」と決めつけるような聞き方をしてはいけません。身に覚えがない場合もあるため、「このような音でお困りになっている方がいらっしゃるのですが」などと、やんわりとした表現で尋ねるようにします。
似たようなトラブルを発生させないために、ほかの入居者へ周知するのも重要です。掲示板に「注意文」を掲示する、回覧板を回すなど、入居者全員に注意を促すようにします。この段階で「もしかして自分が原因かもしれない」と気づく入居者がいるかもしれません。うまく行けばこの段階で解決へとつながり、今後は生活音にいっそう気を付けてくれることが期待できます。
調査の結果、騒音の原因となっている部屋が特定できた場合には、直接その部屋の住人と話をします。この時、あくまでも冷静に話し合うことが重要です。入居者によっては注意されることで怒り出す人もいるからです。たとえ相手が怒り出したとしても、オーナーはできるだけ冷静に「ほかの入居者が困っていること」と「具体的な対応策」を伝えるようにします。
騒音の発生主とのやり取りが終わったら、ひととおりの内容をクレーム元の入居者へ報告します。対処した内容だけでなく今後の改善策も具体的に伝えるようにしましょう。
なお、繰り返しとなりますが、どのような騒音であっても「発生させない」というのは不可能であるため、先述した受忍限度を超えないような場合はクレーム元の入居者に理解を求める場合もあります。受忍限度を超えているか、いないかは音の発生する時間帯や騒音の種類、頻度や継続時間などで判断されるため、お互いに対する配慮の姿勢は必要です。
明らかに受忍限度を超えているにもかかわらず、改善する気配のない騒音の発生主に対しては、最終手段として退去通知を検討します。賃貸人であるオーナーには、クレーム元の入居者を含むすべての賃借人から賃料を受け取る対価として、賃借人が建物を快適に利用できるようにするための義務があるからです。
民法616条には、「賃借人は契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなればならない」と入居者についても規定しています。入居者は「用法遵守」という義務から、規定されている使い方に従わなければなりません。このことから、いくら注意をしても騒音を出し続ける入居者はこの義務を放棄しているとみなされ、退去の対象となる可能性があるのです。
アパートなどの賃貸物件で、できるだけ騒音トラブルを発生させないようにするための方法はあるのでしょうか。
迷惑行為を繰り返すような入居者だと、以前住んでいた物件でも似たようなトラブルを起こしていた可能性があるかもしれません。そのため、そもそもトラブルメーカーになりそうな人を入居させないためには、入居前の審査で入居希望者の人柄や、過去にトラブルがなかったかという点を調査しておくことが大切なポイントです。
ただし、こういった入居希望者の調査は、自主管理オーナーの場合だと調べるにも限界があります。その点、後述する家賃保証会社に加入すれば、他社との共有データから入居希望者の過去のトラブルを調査し、よりトラブルが起こりにくい入居希望者に入居してもらえる可能性が高くなります。
基本的に木造アパートの場合は音漏れがしやすく、防音性が低い構造となっています。特に、築年数が古いアパートは壁や床に遮音材を入れていないこともあります。
ただし、遮音性に優れている鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションでも、完璧な防音であるとは限りません。鉄筋コンクリート造だとされていても、すべての壁がコンクリートになっておらず部分的に石膏ボードを使っている場合もあるため、隣の部屋同士で音が聞こえるケースも存在します。物件の防音性を高めるには、具体的に以下のような工事や工夫をすることがおすすめです。
テレワークの普及から在宅時間が増えている人は増加しているため、以前にも増して騒音トラブルは発生しやすい状況だといえます。騒音トラブルが発生した後の対応はもちろん大切ですが、特に自主管理オーナーの場合はほかの業務もあるため、騒音トラブルをできるだけ未然に防ぐことも意識する必要があるでしょう。そこでおすすめなのが、家賃保証会社の「家主ダイレクト」です。
家主ダイレクトは、自主管理オーナーが直接利用できる家賃保証サービスです。家賃保証を提供するサービスは数多くありますが、その中でも家主ダイレクトは家賃保証・集金代行・入居者募集・孤独死保険がワンパッケージになっている点に大きな特長があります。
今回のテーマであるアパートなどの騒音トラブルの場合、なかなか事態が改善せず、騒音の原因となっている入居者に退去を求めるとなると訴訟に発展することになりますが、家主ダイレクトはこういった訴訟費用をサポートしている点もメリットです。自主管理の物件で訴訟になると、弁護士相談や強制執行の申立てなどに専門的な知識や手続きが必要になり、費用が100万円以上かかることも珍しくありません。そうなるとオーナーの負担は大きなものになるため、いざというときに心強いといえるでしょう。
それに加え、物件の明け渡しにかかる法的手続き費用をサポートしているのもポイントです。サービスの利用料は入居者が支払うため、オーナーは費用負担ゼロでこういったサポートを受けることができます。
アパートなどの集合住宅だと、その構造上、騒音トラブルが発生することは珍しいことではありません。ただ、生活するうえで発生する音をすべて最小限に抑えるというのは非常に難しいといえるため、居住者同士で配慮する姿勢をもつことが求められるでしょう。もしもトラブルへと発展してしまった場合、オーナーはすぐに現状調査を行い、1日も早い解決を目指すようにしましょう。
宅地建物取引士、整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級の資格を保有。家族が所有する賃貸物件の契約や更新業務を担当。不動産ライターとしてハウスメーカー、不動産会社など上場企業の案件を中心に活動中。