【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介
不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。
著者 石原博光
物件によっては、生活保護を受けている方も積極的に入居の対象にしていく選択もあります。
生活保護は、生活に困窮している人が最低限度の生活の保障を受けられるようにする権利で、生活費や医療費、住居費などを支給するものです。僕の知人は、福祉事務所のケースワーカーから生活保護者の住居として斡旋してもらっているそうで、知人のアパートでは空室が出てもすぐに埋まってしまうそうです(残念なことですが、一般の大家さんには 生活保護を受ける方への不要な偏見があるのかもしれません……)。
生活保護の額は自治体によってさまざまで、例えば住居費が月5万円までと決められている場合、もしもその人が3万円の部屋に住んでいる場合でも、差額の2万円は入居者のものにはなりません。そうなると、人間はやはり少しでもいい部屋に住みたいですから、当然ながら彼らは上限額5万円ギリギリの部屋を探すわけです。
自治体の福祉課で確認をすれば、その地域の生活保護の住居費はわかりますから、その住居費に近い家賃の物件を持っている大家さんは、対象と考えてみるのもいいと思います。通常であれば役所は住居の斡旋はしないはずですが、入居者を紹介してもらっている知人の例もありますので、興味があれば個別にケースワーカーを当たってみるのもいいかもしれません。
滞納などを心配されるかもしれませんが、生活保護者でも、後述する家賃保証会社に加入させることは不可能ではありません。家賃保証に入るお金がなかったら、大家さんが払ってあげればいいでしょう。
僕も生活保護者の方を受け入れていますが、これまで滞納はないですよ。毎月きちんと 家賃をお支払いしてもらえますし、また支給された家賃を使い込んだことがバレると保護が打ち切られることもあるので、それが抑止力となっているのかもしれません。もし問題があったら、役所に相談してその人の住居費だけを窓口に預けておいてもらい、大家が受 け取るようにしてもらうという方法もあります。これだと家賃保証会社を通さなくても確実ですよね。本人から委任状をもらい、「家賃の分は大家が直接受け取ります」ということ で対応してくれる自治体もあります。
こんなご時世ですから、自治体から毎月支給があるというのは、へたな勤め人より確実 な入居者ともいえますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
家賃滞納は賃貸経営にとって絶対に避けたいリスクですが、その保険となるのが家賃保証会社です。滞納や夜逃げなどがあった場合の家賃の取りはぐれを肩代わりしてくれます。だいたいひと月の家賃の50%程度の掛け金で、年間の保証が受けられるのが相場です。
それが高いとみるか安いとみるかというのは人によると思いますが、僕は払う価値はあると思います。ただし家賃保証会社のほうも商売ですから、独自に審査して、危ないと思う入居希望者は断ってきます。
僕は原則的に、家賃保証を受けることができる人だけに入居してもらっています。以前、 保証会社を利用していなかった頃、3回も夜逃げ被害を経験しているのでもうこりごりです。僕の知人でも、家賃保証会社の審査を通らない入居希望者がいて「前金で家賃の6ヵ月分を現金で払うから」というので入れたところ、そのあと一度も家賃を受け取ることはなく、なんと1年近く居座られたそうです。ガスも電気も水道も全部止められても住み続けて、公園から水をポリタンクに汲んできて生活をしていたのだとか。一度契約をしたら入居者の権利が強いので、判例でも半年程度の滞納でないと追い出せません。裁判を起こして、強制執行なりの措置をとると、時間も手間もかかって精神的負担も大きいと思います。
ですから入居希望者を断るのは機会損失でありつらいところなのですが、将来のリスクを未然に防ぐという意味で、仕方ないと考えています。余談ですが、管理会社の人が「あの人は落ち着きがない」などどこかあやしく感じる入居希望者の場合、保証会社の審査を通しても落ちることが多いです。
ただ、なるべくどこかの保証会社には通してもらうようにお願いはしています。保証会社は一社だけではなくて、審査の厳しさにも差がありますから、ひとつの会社がダメでもほかのところに当たってもらうように管理会社に頼めばいいと思います。
ただし、保証会社を通さない例外もあります。「私の信用を疑うのですか?」と言ってくる入居希望者には、保証人次第で受け入れるよう柔軟に対応しています。とはいえ、いくら堅いところや大企業に勤めていてもクビになる人はいますし、精神的に病んで仕事に行かなくなる人もいますので、やはり家賃保証会社は通しておいたほうが安心ですね。
でも結局、いくら家賃保証会社を通していても夜逃げをする人はいます。この不景気で逃げは増えているのではないでしょうか。 どうせなら荷物も全部持っていってくれればいいのですが、残された荷物の中に位牌があって、その対処に困ったという大家さんもいます。また退去するとき嫌がらせに、排水口 にコンクリートを流して出ていかれた大家さんもいます。あまり督促をして追い込んでしまうと、そういう仕返しをして出ていく人もいるので、怖いですね。
基本的には頼りになる家賃保証会社なのですが、その家賃保証会社が倒産するなんてこともあります。
そうなると新たに別の家賃保証会社を探さ なければならなくなります。探すのは管理会社がやってくれると思いますが、また新たな 契約となると費用がかかってくる可能性もあります。
僕も一度、依頼していた家賃保証会社が倒産したことがありますが、そのときは管理会社の提携先だったこともあり、大家負担なしで新しい会社に移行することができました。心配ならば仮に保証会社が倒産した場合の措置も確認しておいたほうがいいでしょう。
ただ、家賃保証会社が倒産しているのは、滞納や夜逃げが多くて出費がかさんだということではないようです。そもそも保証会社というのはハウスメーカーやディベロッパー(マンション建設、都市開発)の一部門であったりして、その本体の事業の業績悪化やほかの事業に投資をして資金繰りが悪化したことによって倒産しているケースが多いそうです。初版時の2010年当時には、まだ家賃保証会社も勃興期でしたし、建築不況でハウスメーカーやディベロッパーの体力も弱っていましたが、今では潰れたという話はあまり聞きません。
クレジット会社も家賃保証会社に参入してきて、クレジットの利用履歴やバックグラウ ンドのチェックが簡単になり、滞納や夜逃げしそうな入居者を最初から受け入れないよう にしていることも、倒産が減っている理由かもしれません。だから保証料がこの先高騰したり、保証会社という仕組みそのものがなくなるということはないと思います。
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<著者プロフィール>
石原博光(いしはら・ひろみつ)
1971年生まれ。95年に米国の大学を卒業後、96~97年に東京都の商社に勤務。98年に有限会社恵比寿トレーディングを設立し、化粧品や雑貨などの輸入販売を行う。資金なし、コネなし、まったくのゼロから起業する。2002年から不動産投資を始め、7棟72世帯の規模に拡大。その後4棟を売却し、現在は43室を所有。売却益を渡米後の事業資金に充て、カリフォルニア州で不動産投資事業を始める。現在は永住権を取得し、アメリカ在住。