【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介
不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。
著者 石原博光
少子高齢化による人口減少によって労働人口が足りなくなり、日本はこの先、移民に頼らなければ国力を保てなくなると言われています。現在、政府も「留学生30万人」と打ち出しており、特にネパール人のほか、ベトナム人、フィリピン人などの東南アジア(アセアン)系が増えていて、その動きが加速していきそうです。
彼らにも当然住む場所が必要です。ただ、偏見のせいか、実際にトラブルに見舞われた経験のある人が多いのか、彼らを受け入れる物件が十分にあるとはいえない状況のようです。
僕の物件でも今まで何人か外国人入居者がいましたが、特にトラブルはありませんでした。ただ、大家仲間や不動産屋に聞くと、やはり言葉が通じないことや生活習慣によるトラブルは大なり小なりあるようです。例えば中国系やブラジル系の人は油料理をよく作るので、キッチン周りがすごく汚れるとか、換気扇があまりの油汚れで退去時の原状回復がたいへんだったなどです。そのほかの国の方々でも、ゴミの分別やゴミ出し日を守らなかったり、油を排水口に流したりといった例は多いようです。
ただそれも、言葉が通じないことやカルチャーギャップからくるところが大きいので、管理会社がしっかり指導してくれればそう大きなトラブルにはならないと思います。とはいえ大家としても「じゃ担当者さんよろしく」ではダメです。あくまで提供している部屋は自分の財産なのですから、下手な使われ方をしてあとで泣くのは自分です。
最低限、守ってほしい注意書きを自分で作り、プリントアウトして部屋に貼り出しておくくらいのことはやっておきましょう。ポルトガル語でもスペイン語でもベトナム語でも、インターネットの翻訳サイトを使えば、比較的簡単にできるはずです。凝った文章である 必要はありませんから、なるべくシンプルな言葉で、箇条書きで構わないと思います。ラミネート加工もできればさらにいいですね。
それでも心配であれば、外国人専門の保証会社を通すという手があります。グローバルトラストネットワークス(GTN)という会社はその老舗で、外国人向けに賃貸不動産を紹介し、部屋を借りる際の「連帯保証人」業務も行っています。対応言語は英語、中国語、韓国語、ベトナム語、ネパール語。賃料の保証は最大48ヵ月で、保証料は最初に賃料の50%(最低保証料2万円)を払い、以降は毎年1万円の保証料が必要だそうです。
特筆すべきは、家賃保証のほか付帯サービスとして、生活トラブルなども入居者の言語を話せる担当者がフォローしてくれることです。GTNの後藤裕幸社長によれば、「ひとつひとつルールを設定し、彼らの言葉で言い諭して丁寧に対応すれば、大きなトラブルは今までにない」とのこと。日本人に貸す際にも家賃保証会社を付けますし、金額もそう大きくは変わりませんから、大家にとってこうした会社はかなり心強いですね。
また、夜逃げを心配する人もいると思いますが、僕の知り合いで群馬のブラジル人が多い地域の大家さんは、「入居者は外国人と日本人と半々。3年間で3件夜逃げされたが、全部が日本人だった」そうです。日本人入居者だから安心とは限らないわけです。それに、外国人のほうが彼らのコミュニティが密であるケースもあります。また、一時的なビザで滞在している外国人の場合、ルールや法律というのは優先順位の上にあると思います。
かつては、特にご年配の大家さんは「外国人お断り」でやってこられた方も多いと思います。しかし時代は確実に変わってきて、今後それではアパート経営が成り立たなくなる可能性も十二分にあります。その将来を見据え、いち早く外国人を積極的に受け入れることも、戦略として検討する価値はあるのではないでしょうか。
2015年11月、厚生労働省と国土交通省が「民泊」を来年4月にも全国で解禁する方針というニュースが飛び込んできました。個人が所有する空き部屋に旅行者を泊める「民泊」は、これまで旅館業法などにより、原則禁止されてきましたが、解禁に向かっているのは訪日客の急増で宿泊施設不足が深刻になっているという事情があるようです。
これは大家にとって、空室対策のひとつになるばかりか、通常の賃料より何倍も売り上げが上がる可能性もあり、歓迎すべき流れだと思います。
この民泊を扱う大手サイトが、「 (エアビーアンドビー)」で、大家と宿泊者のマッチングサービスを提供します。大家がサイトに空室を登録し、宿泊者はサイトで泊まれる部屋を探します。登録料は必要なく、宿泊があると「Airbnb」が決済を代行し、手数料として宿泊料金の3%(宿泊者からも別途6~12%)を徴収する仕組みです。「Airbnb」の本体はサンフランシスコにあって、日本にもリネンサービスや鍵の受け渡し、清掃などを請け負う代行会社がいくつかあります。その中の一社によると、東京都内の某駅そばにあるマンションの一室(月額14万円ほど)を民泊に出したところ月に40万円ほどの売り上げになったそうです。稼働率は100%に近いそうですが、お客さんにはあまり期待を持たせないように、「50%くらいの稼働率ですよ」と言っているのだとか。
基本料金が1泊につき2 人で8000~1万円程度として、オプションの料金がひとり加わるごとに5000円ずつ上がるといった具合のようです。前述の代行会社は売り上げの2割で請け負うそうですが、ほかには35%を取る会社もあれば5%プラス清掃費を別途という所もあり、業界が新しいために様子見しながらやっている状態だとか。立地がよくて売り上げの多いところは安く契約できたりするのではないでしょうか。
法整備が進む中、今後始めるには国家戦略特区に限られるでしょう。都道府県知事の認定が必要になり、また宿泊施設にするわけですから、寝具、カーテン、ハンガー、テレビ、 冷蔵庫、洗濯機、机、レンジ、電気ケトル、コーヒーメーカー、グラスやコップなど最低限の家具・家電とアメニティグッズ、それにWi-Fiを用意する必要があります。また、外国人客がメインになりますから、注意書きを各国の言語で作って室内に掲示しておく必要もあるでしょう。
実際の運営には、トラブルも心配されます。分譲マンションなどの場合、外国の方が入れ代わり立ち代わりうろうろされるのは嫌だということで、ほかの住人からクレームが入ったりするそうです。マンションの管理規約に抵触するかもしれません。戸建てや一棟物件を持っている大家さんならば、参入してもおもしろいと思います。
ただし、参入するには立地がかなり重要です。僕の聞いた話では、某地方都市の空室に悩む大家さんが、「民泊」に提供しようと家具家電付きのきれいな部屋に仕上げて、業者さんと打ち合わせしたら「この立地じゃ無理です」ということで断念したそうです。都心部や地方でも観光客の多いところの駅近物件でないと、現実には難しいのではないでしょうか。
新しい試みとして、これから競争が激しくなることが予想されますが、それでも通常の家賃の3倍や4倍の収入が狙えるならいいですよね。たとえ管理費を丸投げしても、通常に貸すよりもキャッシュが手元に残りますから。
また、ゲストによる物件や設備の破損を心配す人もいるかもしれませんが、「Airbnb」には、全予約に「ホスト保証」「ホスト補償保険」が適用されます。「ホスト保証」では1億円まで、「ホスト補償保険」では100万ドルまでの財物補償が受けられます。好立地に物件がある人は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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<著者プロフィール>
石原博光(いしはら・ひろみつ)
1971年生まれ。95年に米国の大学を卒業後、96~97年に東京都の商社に勤務。98年に有限会社恵比寿トレーディングを設立し、化粧品や雑貨などの輸入販売を行う。資金なし、コネなし、まったくのゼロから起業する。2002年から不動産投資を始め、7棟72世帯の規模に拡大。その後4棟を売却し、現在は43室を所有。売却益を渡米後の事業資金に充て、カリフォルニア州で不動産投資事業を始める。現在は永住権を取得し、アメリカ在住。