2021.06.07
賃貸経営

【連載#6】禁断の裏ワザ!? 初期費用全部ゼロプラン/大家自らがネットで入居募集する

【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介

不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。

著者 石原博光

禁断の裏ワザ 初期費用全部ゼロプラン

入居率の壊滅的な地域で、驚異的な入居決定率を誇る知人の不動産屋さんに聞いた秘策中の秘策が、「敷金礼金ゼロ」を超える初期費用全部ゼロの「ZERO入居」プランです。

これは、とにかく「入居時にかかる費用を徹底的に抑える」という作戦です。巷でよくある「敷金礼金ゼロ」プランであっても、当月家賃のほかに火災保険(1万~2万円)、家賃保証会社の保証料(月額賃料の50%)、仲介手数料(月額賃料1ヵ月)、契約事務手数料(1万円前後)、それとカギ交換費用(1万~2万円)や退去時のハウスクリーニング料金(2万~3万円)がかかります。もし家賃が4万円だとすると、合計18万円前後。この不況下では、それもバカにならない負担となるでしょう。

そこで、そのすべてを入居者の代わりに大家が負担しようというのが、この「ZERO 入居」プランです。入居者にとっては、家具を買い揃えるお金はなくても、最悪でも引っ越し費用と当面の生活費があれば引っ越して来ることができます。もしもその入居者が更新のタイミングを迎えていたら、更新料を支払うより引っ越ししたほうが安い可能性は十分にあります。今の部屋に不満があったとしたら、心が動くのではないでしょうか。

また、そうやって引っ越してきた人というのは、次に引っ越しをするときに、先に羅列した費用を惜しむ意識か?働くと思います。つまり、長く住み続けてくれることか?期待て?きます。そうすると退去に伴う原状回復リフォームか?不要となって、大家にとってはその費用を抑えることか?て?きます。

家賃4万円のときに大家の負担は当月家賃を除いて14万円前後かかりますが、それも交渉次第で圧縮可能です。僕の知人は契約事務手数料とカギ交換費用は管理会社に交渉して無料にしてもらったそうです。10万円くらいはリフォーム費用を節減して、初期費用を全部ゼロにするプランを導入したほうが費用対効果は大きいのかもしれません。

またこのプランを導入するときは、家賃をアップしてもそれほど入居付けに影響しません。もちろん安いに越したことはないですが、1割程度アップしても、4万円の家賃を払える人は、4万4000円だから払えないということはないと思います。この作戦を僕に教えてくれた知人は、「これまで引っ越さない人は、引っ越し費用などの初期費用が捻出できないから引っ越せなかったんだよ」と教えてくれました。まさに慧眼、目から鱗が落ちる思いでうかがいました。

もちろん家賃をアップする場合は、リフォームで部屋のクオリティをそれなりに上げておく必要はあるかと思いますが、4万円を4万4000円にできれば10万円くらいは2年で回収できますし、長く住み続けてもらえれば、十分にお釣りがくるでしょう。

定期借家に家賃保証……リスク解消の「保険」を用意する

このプランを実際に行う際の注意点は、まず半年以内の解約にはペナルティを設けるべきです。違約金として、代わりに負担した代金分を請求する契約にしておきます。これは特約事項として別紙に記載し、印鑑を押してもらいましょう。普通の契約書の中に埋もれていると、「読んでいないし、説明もなかった」とゴネられる危険がありますから。

そして2年間、安全策を取るなら「365日未満の定期借家契約」にすることもお勧めします。なぜかというと、これはシビアな見方をすれば「引っ越し費用を貯めることができない、計画性のあまりない人」を入居させるわけですから、必然的に滞納や夜逃げなどのリスクが高くなるからです。うまく定期借家契約のメリットを活用しましょう。

また、家賃保証会社を通すことも義務付けましょう。入居者層を考えると、取りはぐれたときの「保険」は複数かけておいたほうが安心です。その場合、1年ごとや2年ごとに発生する家賃保証会社の更新料については、「入居時の加入費用のみ大家負担だが、その後は入居者負担」と明文化し、これも特約事項として別紙で用意し印鑑を押してもらいましょう。

さらに火災保険の入り方にもコツがあります。通常は入居者自身が入るものですから、契約者も被保険者も入居者となるわけですが、これを「契約者を大家、被保険者を入居者」 という契約にしてもらいます。そして2年目以降は、通常の契約に戻して保険金も入居者に負担させます。入居者にもその旨きっちり説明し、これも特約事項として別紙で印鑑をもらったほうがいいでしょう。あくまで「入居時初期費用全部ゼロ」というサービスですから、更新時は入居者負担ということでも詐欺にはなりません。

以上が「ZERO入居」プランの全貌と、導入の際の注意点です。これにフリーレントはもちろん、レオパレス並みの家具付き物件にしてしまえば、どんなに空室の多い地域 でも勝てると僕は思います。

ただし、これを僕に教えてくれた不動産屋さんは、「絶対に満室にはするけど、管理はやらないという約束で実行した」と言っていました。やはり入居者の質が下がるのは否めなくて、実際に踏み倒して夜逃げされたりもしているそうです。だからいわば禁断の裏ワザではあるのですが、家賃保証会社や定期借家契約でリスクヘッジして、満室で家賃も1割アップで運営できるのであれば、夜逃げされたマイナスは吸収できると思います。本当に夜逃げに踏み切れる人なんてそう多くないと思いますし、どうしても空室に悩んでいる人は、座して待つよりは実行してみる価値はあるのではないでしょうか。

大家自らがネットで入居者募集する

インターネットはここ数年でさらにサービスが増えより便利になっています。賃貸市場 にも、物件探し以外に大家自らが入居者募集をできるサービスが登場しています。

それが「ウチコミ 」(https://uchicomi.com  )というサービスで、簡単に言えば部屋探しサイトに、大家が直接自分の物件を掲載することができるようになりました。

掲載数の上限はなく、空いている部屋を何室でも、自分で部屋のキャッチコピー(惹句)を考えて入居希望者に見てもらえます。写真もたくさん載せられるので、外観や内観だけでなく、こだわりのポイントや周辺環境までしっかりアピールできるのもいいところです。

入居者募集について大家が感じがちな不満には、管理会社の物件への理解度があると思います。大家にとっては自分の大事な物件ですから、「この長所をしっかりアピールしてほ しい」と思っても、たくさんの物件を抱えている管理会社とはどうしても温度差が出てきます。また、「やっぱり部屋の広さより充実した設備をアピールしたい」とひらめいたとし ても、すぐに対応してくれるとは限りませんし、細かくお願いするのも気が引けますよね。

その作業を大家自身がすることで、物件への思いを一層細かくダイレクトに反映させることができますし、管理会社にとっても募集広告の参考にしてもらえると思います。登録料や掲載料、広告費も不要というのも大家にとってうれしいところで、入居者からも仲介手数料を取りません。2016年1月現在は東京、神奈川、千葉、埼玉のみのサービスですが、これから地域が拡大していくことに期待したいです。ただ、このサービスを利用するに当たっては、管理会社の事前調整が必要だと思います。

大家が勝手に募集して、入居者を決めてきて、「自分で連れてきたから仲介手数料も広告費も払いません」ということでは、関係がこじれかねません。管理会社としても図面や案内広告を作ったり、掲載料を払って物件紹介サイトに載せたりするなどしていますから、そこをゼロでというのも厳しい話です。例えば自分で連れてきた時は、広告費の支払いだけにするなど事前に決めておきましょう。

実際、自分で用意する手間を考えたら、写真や図面は管理会社からもらったものを載せたほうが手っ取り早いですし、敷金や礼金といった募集条件、申込書の形式や保証会社を通すかといった取り決めも、管理会社のルールに従う必要があるでしょう。

管理会社にとっても、仲介手数料は減っても、入居者が決まれば月々の管理費が入りますから、悪い話ではないはずです。まだ新しいサービスではありますが、今後の展開がとても楽しみです。

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<著者プロフィール>
石原博光(いしはら・ひろみつ)
1971年生まれ。95年に米国の大学を卒業後、96~97年に東京都の商社に勤務。98年に有限会社恵比寿トレーディングを設立し、化粧品や雑貨などの輸入販売を行う。資金なし、コネなし、まったくのゼロから起業する。2002年から不動産投資を始め、7棟72世帯の規模に拡大。その後4棟を売却し、現在は43室を所有。売却益を渡米後の事業資金に充て、カリフォルニア州で不動産投資事業を始める。現在は永住権を取得し、アメリカ在住。

 

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