【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介
不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。
著者 石原博光
入居者を見つけてくるのは、基本的に管理を委託された不動産屋の仕事ですから、いかに不動産屋にやる気になってもらうかが重要です。
不動産屋は入居契約を取り付けると、大家から「広告費」をもらうのが通例です。これは家賃の1ヵ月分というケースが多いですが、一部札幌など供給過多なエリアでは3ヵ月というケースもあります。今まで1ヶ月だった地域でも、過剰競争で空室率の高いエリアでは2ヵ月のところも出てきています。僕が物件を所有している茨城や栃木はまだ1ヵ月で済んでいますが、先日、東京都下の国分寺の学生用マンションで広告費を2ヶ月取られるという話を聞いて、状況は厳しさをましているなと改めて感じました。
確かに広告費が2ヵ月となれば、会社としても力を入れてくれるでしょう。管理料は通常、家賃の5%ですが、入居者を決めれば一気にその40倍の収入になるわけですから。
しかし、実際に動いて入居者を連れてきてくれるのは、不動産屋の社員という一個人です。彼らにしてみれば、たとえ大家から支払われる広告費が2ヵ月に増えたとしても、儲かるのは会社であって、それで彼らの収入がそっくり増えるわけではありません。
ですから、広告費を増額するよりも、実際に動く彼らのやる気を報奨金(インセンティブ)の支払いによって高め、より一層努力してもらうほうが、僕は有効だと思います。
実際、報奨金なら3万円も支払えば、担当者はかなり一生懸命になってくれます。一方、広告費を増額となると、家賃がエリアや物件によって異なるものの、単身者向け物件で3万~5万円、ファミリー物件で5万~7万円というところでしょうか。これが広告費として2ヵ月分、3ヵ月分の出費となると収支がかなり圧迫してきます。それで効果は担当者への報奨金以上かといえば疑問ですから、広告費を増やすのはあまりお勧めできません。
もちろん、個人的に謝礼を支払うことに抵抗があるという人もいるでしょうし、倫理的にどうかという問題はあるかもしれません。しかし、少なくとも法律で禁止されている行為ではありませんから、僕はそれで部屋が決まるのなら、どんどんやればいいと思います。「ニッチで勝負!」とたびたび言っていますが、この手法もそんなに浸透しているわけではありません。いかに入居者を付けるか研究している大家さんは取り入れていますが、昔ながらの地主さんなどはそういうところに無頓着です。報奨金という差別化によって、空室率の多いエリアでも高い入居率を保っている大家さんを僕は何人も知っています。
ただし、報奨金という手法だけに頼っても部屋自体に魅力がなければ効果はありません。不動産屋も嫌がる入居者を無理に押し込むことはできませんから、入居者にとっての魅力も十分に高めたうえで使うようにしましょう。
また、不動産屋によっては報奨金を社内規定で禁止している会社もありますから、その場合は担当者にこっそり渡す必要があります。タイミングとしては、営業スタッフに説明を兼ねて物件の紹介をしたときに、「決めてくれたら別途でお礼をしますよ」と持ちかければいいでしょう。「今月中に満室にしてくれたら、さらにボーナスを差し上げますよ」「月に2件決めてくれたら1万円プラスします」などと約束をしておけば、さらにがんばってくれるのではないでしょうか。
なお、支払いは相手の個人口座へ直接振り込む場合と手渡しの2パターンがあり、前者は振り込みの記録が残るので明確な経費になります。後者でしかも領収書を貰えない場合は、出金伝票など賃貸事業との関連を証明できるような資料を作成しておきましょう。お金で動く人もいれば動かない人もいますが、比較的効果がある方法です。
立地がよくて物件にも魅力があり、決まりやすい物件であればわざわざ払う必要はありませんが、リフォームもきちんとして、家賃も適性で、それでも空室が続くようであれば検討してみてはいかがでしょうか。
入居を決めるには、物件を見に来る人の数を増やすことが大事です。それはすなわち、自分の物件を紹介してくれる人の数を増やすことでもあります。
僕は管理を頼んでいる不動産会社とは別のところに、自分で営業に行っています。その地域にある別の不動産屋に行って、前項で紹介した報奨金の話を持ちかけるわけです。管理会社を選ぶためにいろいろ不動産屋回りをしたときに、ほかに感触のよかった会社を訪ねて、「よろしかったらご飯でも食べながらいろいろ教えてください」とお願いして、そうして仲よくなっていくようにしています。
もちろん管理会社に了解を取ってからやるべきですが、よほど業者同士で仲が悪いわけでなければOKしてくれると思います。仲介者には入居者が決まれば「広告費」といった名目で、賃料の1ヵ月分が支払われることにすれば喜ばれますし(「広告費」という名目なのは、宅建業法では仲介手数料の上限は家賃の1ヵ月と決まっているため)、元付けになる管理会社もむしろ別の会社が熱心に動いてくれるなら助かるはずです。さらに考えれば、 「客付けが弱かったら、別の会社に管理を取られるかも」とプレッシャーになって、がんばってくれるかもしれません。
それ以外にも、僕はリフォームに来た電気屋さんやガス屋さんといった職人さんたちにも必ず、「入居者を連れてきてくれたら家賃の1ヵ月分をお支払いしますよ」と言っています。地元でネットワークを持っている人に頼めれば心強いですね。管理会社には、「僕自身がお客さんを連れてきても、広告費はお支払いします」と事前に相談をして、了承してもらっています。管理会社も募集に手間と経費をかけていますから、そこを保証することは大切なマナーと考えます。また入居者全員に「退去のときに次の人を連れてきてくれたら、引っ越し費用として家賃1ヵ月分を差し上げます」「空室が出たときに紹介してくれたらお礼させていただきます」とお伝えしています。ただし「入金は3ヵ月後ですけどいいですか?」と断っておけば、お礼目当てで偽の入居者を紹介されるようなことはないと思います。そうやって自分の「営業マン」が増えていけば、空室も怖くなくなると思いますよ。
転勤で退去する人であれば、後任者を紹介してもらうという手もあります。その会社の総務課に営業して「次も御社の社員が入ってきてくれるのでしたら、仲介手数料とクリーニング費用はサービスしますから」といった具合です。いろいろ可能性はありますよ。
自分の裁量を生かすのであれば、大手不動産会社の直営店よりは、地場の不動産屋のほうが融通は利きやすいかもしれません。
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<著者プロフィール>
石原博光(いしはら・ひろみつ)
1971年生まれ。95年に米国の大学を卒業後、96~97年に東京都の商社に勤務。98年に有限会社恵比寿トレーディングを設立し、化粧品や雑貨などの輸入販売を行う。資金なし、コネなし、まったくのゼロから起業する。2002年から不動産投資を始め、7棟72世帯の規模に拡大。その後4棟を売却し、現在は43室を所有。売却益を渡米後の事業資金に充て、カリフォルニア州で不動産投資事業を始める。現在は永住権を取得し、アメリカ在住。