2021.06.14
不動産投資

【連載#2】不動産のランクを見きわめて売買しよう

【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介

不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。

著者 畑中 学

不動産にも商品としてのランクがある

手続きの流れやスケジュールの把握、希望条件の整理ができたら次は不動産の商品としての見きわめです。

不動産も商品である以上、好条件で売れる、売れないといった資産性の面でランクがあります。わかりやすいように仮にS~Dの5ランク(次 ページ参照)とします。たとえば、Sランクなら売手市場で売りたい人が少なく買いたい人が多く現れるので売主にとって好条件で売りやすく、逆にDランクなら買手市場で売りたい人が多く、買いたい人が少ないので買主にとって好条件で取引ができます。

このように売買をするときには、その対象となる不動産のランクがどこにあるのかを見きわめておくと、売買の戦略を立てやすくなります。納得いく売買をするには、ランク付けは不可欠です。

▽プロの視点

*ランクによる売買の戦略とは

ランクが高ければ好条件で売れる機会が多いため、売主が主導権をもって進め、売るのを急がずいい条件を引き出すのに時間をかけ るべきですし、買主は他の好条件が出ないうちに早めに交渉をまとめるべきだと言えます。

ランクが低ければ、売主は多少妥協しても早目の売却を目指すべきですし、買主は主導権をもって条件が合わないなら慌てて買わずに、場合によっては撤退してもいいとなります。

▽不動産のランクの種別とそれぞれの特徴

ランクは需給関係と希少性で決まる

不動産のランクは複雑な条件で決まりますが、あえて言うなら「需要と供給の関係の中で希少性がどの程度あるか」で決まります。

他にも歴史や経済の文脈からの位置づけや他の不動産との関係、時間 効率、多様性など要素は複数ありますが、ある程度この言葉で説明がつきますので、この視点でランクを決めて間違いはありません。

多くの人が欲しい(需要が高い)と思うエリアや内容で、ほとんど出ない不動産(希少性が高い)であればランクは高くなります。

たとえば、過去に大型ショッピングモール(以下SC)に隣接する中古マンションを新築時の価格以上で売ったことがあります。

そのマンションは駅から近く、かつ雨に濡れずにSCで買い物を楽し めるため、中古でも欲しい人が多いのに対し、戸数が 100戸以下と数が限られていたのです。売却をかけると買いたい人が多く現れ、結果として、新築時よりも高い価格がつきました。

なお、需給関係が主で希少性は従の位置づけと言えます。

それは、需要がない無人島でいくら希少性のある不動産があっても買手がほぼいませんので価格がつかないのと同じことです。

具体的なランクの決め方

ランクの具体的な見きわめ方として、需給関係はそのエリアの「売出物件数と成約物件数の相対的割合と人口密度」を調べればおおよそわかると言われています。

たとえば、売出物件数が少ないのに、成約物件数が多ければ、それだけ不動産が売れるエリアと考えられ、需要が高いエリアだと判別できます。

売出物件数と成約物件数のデータは、①レインズ(不動産業者の物件ホームページ)、②土地総合情報システム(一般公開されている国土交通省のデータベース)、③不動産のポータルサイト(スーモ、ホームズ、アットホーム等。ただし、わかるのは売出物件数のみ)で確認することができます。

人口密度は各自治体のデータや、実際に現地を見ることで確認できます。不動産は人が集まるところほど価格が高くなる傾向がありますから、ランクの高低に影響が強い人口密度は把握しておきたいところです。

▽不動産の需給関係はこうして見きわめる

希少性のある物件とはデータを見て、あまり見当たらない物件のことですが、希少であれば何でもいいかというとそうではありません。買主が欲しがる希少性なのかをよく考えて判断していきましょう。

ここまで、不動産のランクを資産性という観点からお話ししてきました。ただ、不動産には資産性とは別に「生活満足度」という価値もあります。これは、住むことで得られる幸せのことです。

この生活満足度は主観的であり、人が違えば大きく変わります。ですから、人によって変わりづらい資産性とは別の価値と言えます。不動産の売買では資産性と比べて金額等に影響しません。混同せずに資産性のランクを見きわめて売買の戦略を立ててください。

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<著者プロフィール>
畑中 学
1974年生まれ。不動産コンサルタント。宅地建物取引士のほか、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者の資格も保有している。東京農業大学大学院で造園を学び、設計事務所に就職。その後、大手不動産会社に転職し7年勤務。不動産の販売・企画・仲介業務に携わり、32歳で支店長となる。2008年に起業し、武蔵野不動産相談室株式会社を設立。代表取締役に就任。以来、不動産コンサルタントとして全国に活動範囲を広げるとともに、不動産ポータルサイトでアドバイザーを務めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

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