2021.06.16
不動産投資

【連載#3】物置は不動産?取引対象となる範囲を理解する

【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介

不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。

著者 畑中 学

不動産の範囲を理解して進める

「不動産とはどこからどこまでを指すのか」そのぐらいは理解をしてから売買を進めていくべきでしょう。

たとえば買主の場合、キッチンにある収納棚を見て「食器を収納できて便利だわ」と思ったら、不動産には含まれないので売主に撤去されて しまった、こんなことがよくあるからです。

不動産に関する知識があるに越したことはありませんので、この項目で不動産の定義と範囲を説明しておきます。

不動産はどこからどこまでか?

不動産の定義と範囲は、簡単に言うと「住むことができ、住むのに支障がない範囲まで」です。家でない不動産なら「住む」を「利用する」に置き換えてみれば意味が通じるはずです。

「住む」という言葉は人それぞれで解釈は異なりますが、一般的には「雨風を防いで安心して食事や就寝などの生活を営むこと」を指します。そのため、建物の屋根や壁、窓は不動産に入りますが、なくても我慢して住める冷暖房機やテレビアンテナは原則として不動産に含まれません。

不動産かどうかを判断する際は、この「住む」が基準となります。

ただ、この基準だけでは建物は判断できても、土地は判断できません。そこで、民法や建築基準法といった法律を細かく見ていきますと、法律では不動産の定義と範囲を一言で明確にしていませんので、さまざまな条文をつなぎ合わせて解釈することになりますが、つなぎ合わせてわかりやすく述べますと、不動産の定義と範囲は次のようになります。

「不動産は、土地とそこに建っている建物や工作物を指す。土地には容易に動かしがたい樹木や固定された物置なども含まれるが、動かせたとしても門や塀、垣根などは敷地境界の確認やプライバシー確保など利用面から必要であるのでこちらも土地に含まれる。
また、建物内では取り外すのが難しいキッチンや造作家具(収納など) は建物に含まれ、そうではない冷暖房機や照明器具などは建物外として 不動産には含まれない」

「取り外して動かせない」「利用する際に必要となる」のが不動産であり、範囲としているようです。

このように法律面では、土地に固定されている物置や塀、庭に生えている樹木も不動産となります。ただしプランターなど動かせるもので育てられている草花や、軽くて動かせるような物置は範囲外になります。

建物内では取り外せないキッチンなど各種設備や造作家具が不動産となります。一方で簡単に取り外せるエアコンや照明器具などは別ということです。

新築の一戸建てやマンションを購入し引き渡しを受けるときに、「あれっ、カーテンレールがない……」「照明がまったくないですね……」 となるのは、それはもともと不動産に含まれないからです。

▽不動産の定義と範囲はこうなっている

売買契約書と付帯設備表で再確認をする

ここまでは法律等で定義と範囲をまとめてきました。

出典を確認したければ、民法第 86 条1項「不動産及び動産」、民法 第242条「不動産の付合」、民法第 370 条「抵当権の効力の及ぶ範囲」、建築基準法第1章第2条第1号から導いていますのでご確認ください。

ただ、これはあくまでも法律上の話で、最終的には売買当事者の約束により不動産の取引範囲は変えられます。

その約束事は売買契約書と、引き渡す設備を一覧表とした「付帯設備表」と呼ばれる書類(別名・告知書)にまとめられますので、契約前には一度確認するようにしてください。

「あれっ! これが付いていない」というトラブルを避けられますので、契約前に目を通しておき、売買当事者間で確認しておくといいでしょう。

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<著者プロフィール>
畑中 学
1974年生まれ。不動産コンサルタント。宅地建物取引士のほか、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者の資格も保有している。東京農業大学大学院で造園を学び、設計事務所に就職。その後、大手不動産会社に転職し7年勤務。不動産の販売・企画・仲介業務に携わり、32歳で支店長となる。2008年に起業し、武蔵野不動産相談室株式会社を設立。代表取締役に就任。以来、不動産コンサルタントとして全国に活動範囲を広げるとともに、不動産ポータルサイトでアドバイザーを務めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

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